お金のプロに聞く「適正な食費の目安」かさむ人の特徴とは

小麦粉や食用油をはじめ、食品の値上げが相次いでいます。帝国データバンクの調査によると、食品主要メーカー105社において2022年に価格改定を実施または予定している品目は累計6,000を超えるといいます。

食品の値上げは家計をじわじわ圧迫。食費がかさみ頭を悩ませている家庭も多いのではないでしょうか。

コネヒトが実施した調査によると、年収1,000万円未満の家庭では半数以上が食費を5万円未満でやりくりしているという結果になりました。世帯年収や世帯人数、子供の年齢によっても大きく異なる食費。毎月いくらを目安にしてやりくりしたらいいのでしょうか。お金のプロに聞きました。


年収1000万円を境に金額が異なる食費

家計の中で大きな割合を占める「食費」。生活する上で必ずかかる出費なので、大きく減らすのが難しい費目です。

子育てアプリ「ママリ」を運営するコネヒトが、全国の20~30代を中心とした1万1,128名を対象に「2021年 家族に関する全国調査」を実施。世帯収入別に毎月食費にかける金額を聞いたところ、年収1000万円未満の世帯では半数以上が食費を5万円未満に抑えているという結果になりました。一方、年収1,000万円以上の世帯では、半数以上が毎月5万円以上食費にかかっていることがわかります。

世帯年収だけではなく、家族の人数や年齢、居住地などによっても食費にかかる金額は変わってきますが、そもそも食費がかかりすぎているのかどうか、どうやって判断したらいいのでしょうか。

食費の目安は「エンゲル係数」で確認

「食費は『エンゲル係数』を参考にするといいと思います」。そう教えてくれたのは、Next Solutionのファイナンシャルプランナー・高杉宏幸さん。エンゲル係数は、消費支出に占める食費の割合のこと。消費支出とは、収入から税金、住宅ローン、保険、貯蓄などを除いた、いわゆる「生活費」を指します。「エンゲル係数は、消費支出の25%が基本とされていますが、20%以内に抑えられるといいでしょう」。

例えば、年収700万円の人の場合、手取りは600万円弱。住宅ローンや貯蓄などを除くと、消費支出が400万円ほどになる人が多いようです。その20%なので、食費は年間80万円、月にすると6.6万円に抑えられると適正といえます。

子供の成長に伴う食費の増加にはどう対応する?

とはいえ、子供が生まれて家族が増えたり、子供の年齢が上がれば、食費はかさんでいきます。加えて、相次ぐ食品の値上げなどもあり、食費の上昇は避けては通れない問題です。「食費が上昇するのはやむを得ないこと。基本的には、年齢を重ねると所得も増えるはずなので食費の適正額も上がっていきますが、上昇率は対前年比2%を上回らないようにしたほうがいいでしょう」。

昇進や転職などで給与が大幅にアップすると、つい気が大きくなって食費に割くお金が増えてしまうことも。ただ、先のことは予測できません。会社の業績が悪くなったり、残業が減ったりして給与が下がる可能性もあります。また、一度上げた食費を下げるのは簡単なことではありません。万一の場合に備えて、上昇率は抑えておく必要があるといいます。

「子供が増えればその分、学費もかかります。子供が増えたから、大きくなってきたからといって、食費に割く金額を大きくすると教育資金が貯めにくくなります。子供の人数や年齢というよりも、エンゲル係数を20%以内に抑えて、かつ上昇率を対前年比2%以内で維持していくことが大切です」。

食費膨張の理由は「買い物回数」

高杉さんによると、食費が毎月かさむ人にはある特徴があるといいます。「買い物の回数が多い方は、食費が高くなる傾向があります」。特に共働きで忙しかったりすると、お惣菜を買う頻度が高くなるなど、行き当たりばったりの買い物をしてしまいがちだといいます。

「買い物は週1~2回、1週間分の献立を立てて買うものを決めてから行くのがおすすめです。とはいえ、極端に回数を減らすと、足りなくなるかもと余分に買い込んでしまうことも。それでは逆効果なので、必要な分だけ、使い切れる分だけ買うことが何より大切です」。

逆に、「食費を上手にコントロールできている人は、毎月の予算を決めています」。予算を設定すると、その金額内でやりくりしなければならないため、自ずと支出管理をするように。今月あといくら使えるのかを常に意識するようになれば、買う度に本当に必要な出費なのかどうか判断する機会が増えるので、無駄な出費を減らすことにつながります。

また、「コスト意識が高い人は、ふるさと納税をしっかり活用して鮮度のいいものを安く手に入れていますね」。

無理な削減は禁物!長続きさせるコツ

予算を立てるときに、いまの食費から大きく金額を下げるのはおすすめできないといいます。

「毎月食費に6万円かかっている人が、来月から4万5,000円に下げるのは、1ヵ月は続くかもしれないけれど長くは続かないでしょう。長続きさせたいなら、まず10%削減を目標に。毎月6万円なら、5万4000円を目指しましょう。予算内に収まるようになったら、さらに10%削減を目指します。10%が難しそうなら5%ずつ。少しずつ段階を踏んで計画的に減らしていくことが大切です」。

たとえば、10%の削減ならマイボトルの活用が効果的。「毎日家族それぞれがペットボトルを購入している家庭であれば、それをマイボトルに変えるだけでも、10%近くの削減効果がありますよ」。取り入れやすく習慣化できる節約方法を選ぶのが、長続きさせる秘訣のようです。

食費を抑えるために外食を我慢する、一日二食にする、毎日カップラーメンを食べるなどの極端な節約は禁物です。長続きしないだけでなく、ストレスも溜まり、健康に影響することも。せっかく食費を抑えても、医療費がかかったら本末転倒です。「寿命が短くなったら何のために貯蓄をしているのか。働けないと収入を得ることもできなくなります。食費を大きく減らすことよりも、適正に使うことのほうが大事です」。


おいしいものを食べるのが生きがいだったり、食べるものにこだわっていたり、食に対しての価値観は人それぞれ。食費にかける金額に正解はないかもしれませんが、見直したいと思ったら、まずエンゲル係数を出して家庭の立ち位置を知るところから始めてみてはいかがでしょうか。

【取材協力】Next Solution ファイナンシャルプランナー高杉宏幸さん
Next Solutionでは、担当のファイナンシャルプランナーが相談者一人一人に合ったライフプランを一緒に考え、専門的な立場から最適なアドバイスを行っています。金融や税制、不動産に住宅ローン、生命保険、更には年金制度といった幅広い知識をもったFPが、お金の悩みについてサポートします。

(土屋舞)