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デジタル音痴の古参社員でも生産性は上げられる…AI分析でわかった営業成績に直結する「意外な要素」

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AI技術の普及は、私たちの働き方をどのように変えるのか。経営コンサルタントの神田昌典さんは「AIは人間の仕事を奪うと言われるが、そうとは限らない。むしろ、AIのデータ分析によって、自分らしく働いていれば自然に結果が出せるようになる」という――。

※本稿は、神田昌典『未来実現マーケティング』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

■働かなくていい現実がすぐそこまできている

私が予想する未来では、これから働かなくてもいい社会が始まる。

「そんなユートピアがくるはずがない」と、まだ想像しにくい方も多いだろうが、「働かなくてもいい社会」をつくるのが、第4次産業革命だ。

この革命に向かう過程では、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)技術が普及し、人間がやるよりも機械がやるほうが圧倒的に安全で信頼できるという状況が増えていく。

その結果、人間がやるべき仕事は、確実に減ってくる。だから、嫌な仕事を我慢して続けるよりも、好きな仕事をしながら気ままに暮らそうという人は、本能的に正しい判断をしていると思う。

実際、働かなくていい現実は、すぐそこだ。

タクシーの未来を見てみよう。

まず2030年には、完全に人が関与しない自動運転レベル5が実現すると予想されている。つまり、それから先は、運転手がいないロボタクシーが急速に増えていくから、運転手は働かなくてもよくなってくる。

だが、本当のインパクトは、その後だ。

■人間よりも遥かに精度の高い需要予測が可能に

そのタクシー会社の本社で、来年度、発注する車両を何台にするかという事業計画をつくっているマネージャーがいたとする。今までなら、人口増減、車両数、運転手の人数などの需給を決定する要素を、優秀な人間があれこれと分析しながら判断していた。

しかしこれからは、どんなに優秀でも、人間の頭による分析だけではどうにもならない。

というのは、ライバル会社の車両数、天候や気温、車両の故障率、高齢者の増加率、イベント開催数などといった需要に直接関連する要素に加えて、一見、関係ないように見える要素――たとえば、飲食店レビューの数、特定のキーワードの検索数、ライバル会社が活用する配車システムなど、多岐にわたる膨大な情報(ビッグデータ)を分析することで、遥かに精度の高い需要予測ができるようになっているからだ。

こうした作業は、データさえあれば、もう一瞬。

魔法のランプをこするかのように、「目標数値を最大化するための、モデルを教えて」と指示すれば、AIが最適解を導く方程式(アルゴリズム)をつくってくれるようになった。マネージャーの仕事は、AIからの提案を最終確認して、発注ボタンをポチッと押すぐらいだ。

■経営者がいなくてもAIで会社は動いていく

「こうなると、仕事が残るのは、経営者ぐらいですか?」と考える人もいるだろうが、もはや経営者さえ、いらない。

なぜなら、ある日、経営者がポックリ亡くなったとしても、AIは何も気にせず、いつもどおりに車両を自動発注し続け、無人で車両は周回し続けるからだ。

そうして月日が経ち、その会社には誰も働く人間がいなくなった時、

・果たして、その会社のオーナーは誰なのか……?
・誰が納税申告をすべきなのか?
・そして税務調査が入った時には、誰が対応するのか?
・ロボット運転手には給与を払うべきか、それとも減価償却費で対応すべきか?

笑い話のようであるが、そんな問題も真剣に考えなければならない時代が、もうそこまできている。

第4次産業革命の世の中では、IoTによってモノ同士がつながり、AIによってオペレーションが自動化される結果、もはや人間の判断を超えた成長が始まる時代になる。

ビッグデータ分析に取り組む人工知能のイメージ図

写真=iStock.com/Golden Sikorka

※写真はイメージです – 写真=iStock.com/Golden Sikorka

■AI分析が見出した、生産性の本質

これだけ聞くと、よくある「AIが人間の仕事を奪う」という話に聞こえるだろう。しかし、実際にはAIは、人間をもっと「人間らしく働くことができる」という世界にいざなってくれるのだ。

仕事の中でも、特に営業職はプレッシャーの高い仕事だろうが、これからはAIの力で、もっと気楽に結果を出せるようになる。今までは、売るためには説得しなければならなかったが、これからは、会いにいくだけで売上が上がるようになるからだ。

このことに気づいたのは、私が顧問を務めるコンサルティング会社で、自社のコンサルティング営業スタッフの成約率を引き上げる要因について、AI分析を行った時だった。

まず先入観なしに、社内外からデータを大量に集めることから始めた。たとえば、既存の顧客企業データ、コンサルタントごとの営業実績、資質プロファイルデータ、対象となる顧客の企業情報、財務データなど、思いつく限りのデータを収集・整理して、どさっとデータベースに投げ込む。そして売上に最も影響する要因はなんなのかという問いを、AIに投げるのである。

あなたは、何が、営業成績に大きな影響を与えると思うだろうか?

■営業成績に唯一影響するのは「年齢と社歴」

このAI分析をするまで、私たちは、「成約率を高めるためには、コンサルタントの論理力や分析力、構造化力、プレゼンテーション力が重要だ」と考えていた。

ところがAI分析結果によれば――どのスキルについても営業成績との間には、特に強い相関関係は見出せなかった。ただ意外なことに、一つだけ有意な関係性が見出せたデータがあった。それがなんだったかといえば――「年齢と社歴」だ。

分析を担当したデータサイエンティストは、一瞬、訳がわからなかったという。しかし、少し考えてみれば、納得できる結果だった。デジタルに強い若手社員に、社歴の長い成熟企業を開拓させても相手にされないし、逆にアナログに強いベテランスタッフに、社歴の短いベンチャー企業を開拓させても商談が噛みあわない。

つまり「若いやつには若い会社、ベテランには古い会社をあてれば、成約率は高くなるよ」というのが、AIからの回答だった。

うーむ。これは、コロンブスの卵だ。

今の世の中、デジタルに強くないと生き残れないといわれているが、AIからのアドバイスは、デジタルに弱い人材を閑職へと追いやるのではなく、「今いる人材を得意な場所にアサインすれば、活躍できるようになりますよ」ということだった。

AIは、人よりも人に優しかったのだ。

■AIを活用する組織に生まれ変わるための突破口

このように、今まで人間だけでは気づかなかった、異なるデータ同士の「つながり」が、AIによりスピーディに見出せるようになると、誰もが自分らしく働いていれば、自然に結果が出せるようになっていく。

しかし、ここで重要になってくるのが、「あなたが働く組織は、AIが活用できる準備ができているか?」ということである。準備が整っていれば、社員はさほど努力を要せず、新しい価値を創出できる時代に入ることができるが、整っていなければ、どんなに時間をかけて努力しても、何も生み出せない。

そこで、AIを活用する組織に生まれ変わるための、突破口を開くツールをお教えしよう。それが、ダッシュボードだ。

■データを整理するだけで利益率が最大21%アップ

ダッシュボードとは、あらゆるデータを一覧し、分析するためのBI(ビジネスインテリジェンス)ツールのことである。今までバラバラに管理していた、事業の鍵となる数値をまとめて表示することができる。

神田昌典『未来実現マーケティング』(PHPビジネス新書)

神田昌典『未来実現マーケティング』(PHPビジネス新書)

イメージとしては、飛行機の操縦盤のようなものだ。必要な数値が一望できるので、目標に向かって、遠回りすることなく、近づいていけるわけだ。

実際にある調査によれば、ダッシュボードを使って、データをまとめて整理して、いつでも見られるようにしただけで、最大で21%、平均で8%以上のROA(総資本利益率)の改善がされたという。

ちなみに、「グーグルデータポータル」という無料ツールを使えば、ダッシュボードが簡単につくれる。表示できるデータソースの種類は、広告配信ツールやアナリティクスツール、キーワードツール、SNSなど多岐にわたる。

見られるデータは、グーグル関連にとどまらない。データポータル上には「コネクター」が用意されている。コネクターとは、ありとあらゆるデータベースと繋いでしまう接続ソケットのようなものだ。これを最大活用すれば、究極のところ、全世界からありとあらゆるデータを、自社のダッシュボードで表示できるようになる。

このようにデータが自社に流れ込んできて、一元管理ができるようになると、仕事の効率化はもちろんだが、「誰がどんな働き方をするのが最適なのか」もまた、見えてくる。AIがもたらすのは実は、より人間らしく働くことのできる社会なのだ。

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神田 昌典(かんだ・まさのり)
経営コンサルタント・作家
上智大学外国語学部卒。ニューヨーク大学経済学修士(MBA)、ペンシルバニア大学ウォートンスクール経営学修士(MBA)取得。大学3年次に外交官試験合格、4年次より外務省経済部に勤務。その後、米国家電メーカー日本代表を経て経営コンサルタントとして独立。ビジネス分野のみならず、教育界でも精力的な活動を行っている。著書に『2022―これから10年、活躍できる人の条件』(PHPビジネス新書)、『ストーリー思考』(ダイヤモンド社)、『成功者の告白』(講談社)、『非常識な成功法則』(フォレスト出版)、『未来実現マーケティング』(PHPビジネス新書)など。

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(経営コンサルタント・作家 神田 昌典)