物価高に苦しむ中小企業に政府からの援助は皆無 「あきらめ型倒産」加速か

 加速する物価高の影響で中小企業を中心に倒産が増加している。帝国データバンクの調べによると、「物価高倒産」は調査を開始した2018年1月から2022年7月までで累計558件。2022年上期(1~7月)は116件と、例年を上回るハイペースで8月にも年間最多件数を更新しようとしている。

物価高への政府の対応に苦言も出ている(岸田文雄・首相。写真/JMPA)© マネーポストWEB 提供

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 中小企業の物価高倒産が相次ぐ背景を、経済ジャーナリストの荻原博子氏はこう分析する。

「大企業は内部留保が潤沢だから、物価高でも倒産まではしませんが、中小零細企業は財務内容が悪く価格転嫁も難しいため、円安と資源高で倒産せざるを得ない状況に陥っている。

 たとえば、大手自動車会社には子会社、孫会社、ひ孫会社などが紐付いていますが、ひ孫会社が高騰した原材料費を製品価格に反映して請求できるかというと、仕事を切られるからできないんです。高騰した原価を自社でかぶることになる。運輸業も同じで、『ガソリンが高騰しているから明日から配送料を上げます』とは言えません」

 こうした窮状に政府は何らかの対応をとっているのか。コロナ対策では巨額の税金が注ぎ込まれ、手厚い融資や補助金を用意していた。

 一方、物価高への政府の対応については、荻原氏はこう語る。

「物価高で苦しんでいる中小企業に対して手を差し伸べるということはやっていないに等しい。中小企業庁は、原油価格・物価高騰等緊急対策枠で、従業員規模に応じて、最大4000万円まで融資していますが、結局は借金です。中小企業はすでにコロナで無担保無保証の補助金を上限まで借りていて、さらにそれ以上借りても利益が出ないから返せません」

 帝国データバンク情報統括部情報取材課の佐古真昼が指摘する。

「『ゼロゼロ融資』(保証人なし・担保なしのコロナ関連融資)である程度抑えられていた倒産の減少は、底を打ったとみています。これからは、新しく事業領域を拡大できない局面で物価高となり、経営体力の弱まった中小・零細企業の『あきらめ型倒産』が増えていくと考えられます」

 倒産が増えれば、取引先の倒産で売掛金が焦げついて連鎖倒産するケースも出てくる。中小企業には、数は少ないとはいえ社員がいてその生活もある。荻原氏が言う。

「秋にはさらに値上げがあるため、物価高倒産は一層増えるでしょう。国は石油元売りに補助金を出し、輸入小麦の売り渡し価格を据え置くといった場当たり的な措置しかしていません。雇用調整助成金をバラまいたけど、結局は税金で回収しようとしている。倒産は自己責任という話になりつつあるが、企業が倒産すれば、失業者はどんどん増えることになります。そうなると物価高ではやっていけなくなります」

 負のスパイラルが広がろうとしている。

※週刊ポスト2022年9月9日号