働く人が自ら出資、運営にも携わる「協同労働」 東北でも組合設立の動き広がる

労働者協同組合(労協)法が10月1日に施行される。法がうたうのは働く人が自ら出資し、運営にも携わる「協同労働」。多様な就労の機会をつくり、やりがいを引き出す新しい働き方を実現しようと、東北でも組合の設立を目指す動きが出ている。(生活文化部・柏葉竜)

 福島市の畠中正一さん(63)は現在、同法に基づく労協の設立を模索する。事業内容は農業の6次産業化。取れたて野菜や加工品の販売、農家レストラン運営などを構想する。

 住民活動の支援に取り組む相馬市のNPO法人の代表理事を務める畠中さん。労協設立を目指す背景には、若い世代を中心とした非正規雇用増加への懸念がある。「不安定な働き方ではやりがいや夢を持てないのでは」と心配し「協同労働であれば自立した働き方が実現できる」と期待する。

 労協法は、協同労働に取り組む企業組合などでつくる日本労働者協同組合連合会(東京)の働きかけもあって整備され、「出資・労働・意見反映」を3原則とする労協について規定する。労協は企業などに雇用されるのではなく、働く人が自ら仕事をつくる。運営方針も出資額や役職に関係なく平等に意見を交わして決める。

 法の理念を先取りし、連合会に加盟する労協センター事業団(東京)は全国で協同労働を実践している。企業組合やNPOといった形態で事業を展開する。

 事業団を母体とする企業組合「ともに はま道」(宮城県亘理町)は、障害者の就労支援事業所として、弁当や総菜の製造・販売、地場野菜の移動販売に取り組む。男女30~60代の職員8人と利用者20人近くが共に働く。数年内に労協に移行する予定だ。

 運営方針は月2回の会議で決める。「秋に焼き芋を売りたい」「それだったら有機栽培の芋がいいね」。会議では職員全員が活発に意見を出し合う。

 障害があったり子育て中だったりする職員もおり、就業時間や仕事の割り振りは柔軟に対応する。多様な人材が主体的に活躍できるのも協同労働の強みだ。

 新型コロナウイルス感染拡大前は、高齢者らを対象とした昼食付きのカラオケ交流会を開いていた。大久保千絵美所長(41)は「利益だけでなく、地域にとって良い仕事は何かを常に考えている」と力を込める。

 事業団には労協設立などの相談が寄せられており、東北からも10件程度の問い合わせがあるという。南東北事業本部(仙台市)の佐々木洋志本部長(45)は「福祉や子育て、まちづくりといった地域課題は行政の支援制度だけでは解決できない部分もある。柔軟に事業展開できる協同労働だからこそ補える可能性がある」と強調した。

[労働者協同組合法]臨時国会で2020年12月に全会一致で成立した。労働者協同組合は行政庁の許認可を必要とせず、要件を満たし登記すれば法人格が与えられる。人材派遣業を除く全ての事業を手がけられる。設立には3人以上の発起人が必要。出資配当は認められない。都道府県知事の監督を受ける。