電気料金抑制、課題山積 小売り700社、仕組み複雑に 経済対策

政府は総合経済対策の目玉となる電気料金の負担軽減策について、制度設計の検討を本格化させた。  電力小売会社に値下げの原資を支給し、家計・企業を支援する案が軸となる。ただ、小売会社は全国で700社超に上り、一律に料金を抑制するには複雑な仕組みが必要となりそうで、実現には課題が山積している。  岸田文雄首相は12日、首相官邸で電力業界のトップと会談し、支援策の仕組みづくりへの協力を要請。「国からの巨額の支援金が電力会社への補助金ではなく、全て国民の負担軽減に充てられる仕組みとしなければならない」と強調した。  電気料金は今年5月までの1年間で家庭用は約2割、企業用は約3割上昇。さらに来春以降に一段の値上げが見込まれるため、家計・企業への直接的な支援に乗り出す。国内の電力販売額は年間約14兆円で、政府が1割を補填(ほてん)する場合は1.4兆円もの財政支出が必要だ。  現在、小売会社が運用する料金請求システムを通じ、電気を利用する全国約9000万もの契約者を支援する方向で検討が進む。ただ、電力自由化後の「新電力」の相次ぐ参入で、小売会社は700社を超え、各社の料金プランもさまざまだ。支給した値下げ原資がきちんと各社の電気料金抑制につながるような制度設計に向け、経済産業省幹部は「七転八倒している」と述べる。  政府内ではこのほか、負担軽減策として、電気料金に上乗せされている「再生可能エネルギー賦課金」の一時停止案も検討していた。同賦課金は再エネの固定価格買い取りに使われ、標準的な家庭で月900円程度を負担している。ただ、実現には法改正が必要なことなどから同案は見送られる方向だ。