「日本人の旅行離れ」を海外メディアが報じる、なんと35%が「二度と旅行しない」と回答して圧倒的に他国を上回る

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを受けて世界的に旅行する人々の数は急減しましたが、その後の規制緩和に伴って旅行需要は拡大しつつあります。ところが、世界15カ国に住む1万6000人を対象にしたアンケートで、「

日本人の旅行離れ」が浮き彫りになったことを海外メディアのCNBCが報じています。 Don’t want to travel? Many in Japan say they’ll 'never travel’ againhttps://www.cnbc.com/2022/12/19/dont-want-to-travel-many-in-japan-say-theyll-never-travel-again.html データインテリジェンス企業のモーニング・コンサルトは2022年8月、「旅行とホスピタリティの現状」という旅行業界についての調査結果をまとめた(PDFファイル)レポートを発表しました。この中でモーニング・コンサルトは、世界15カ国に住む1万6000人の成人を対象に「今後レジャー旅行をするつもりがあるか」を尋ねた結果を公表しています。 2022年7月に行われたアンケートで「二度と旅行しない」と回答した人々の割合を国別にまとめたグラフが以下。1位は「Japan(日本)」の35%であり、2位「South Korea(韓国)」の15%や3位「China(中国)」の14%と比較して突出しています。全体的に東アジア諸国で旅行離れが進んでいるようで、中国と同率3位の「United States(アメリカ)」が14%、5位の「Mexico(メキシコ)」と「Russia(ロシア)」が11%となっており、最も割合が低い「Italy(イタリア)」と「Spain(スペイン)」はわずか4%でした。

「日本人の旅行離れ」を海外メディアが報じる、なんと35%が「二度と旅行しない」と回答して圧倒的に他国を上回る

「日本人の旅行離れ」を海外メディアが報じる、なんと35%が「二度と旅行しない」と回答して圧倒的に他国を上回る© GIGAZINE 提供アンケートは出張などではなく「レジャー旅行」について尋ねてたもので、国内旅行と海外旅行については区別しなかったと、モーニング・コンサルトの旅行およびホスピタリティアナリストであるLindsey Roeschke氏は述べています。 調査は2022年4月と7月の2回行われ、日本人は4月から7月にかけて「今後3カ月以内に旅行する予定である」と回答した割合が7パーセントポイント増、「12カ月以内に旅行する予定である」と回答した割合が4パーセントポイント増となりましたが、「二度と旅行しない」と回答した人の割合は変わらなかったとのこと。なお、「来年は旅行する予定である」と回答した割合は日本人で約45%であり、やはり中国の65%や韓国の66%を大幅に下回っていました。 旅行代理店・Japan Localizedの創業者である宮本大氏は5月にCNBCが行ったインタビューで、多くの日本人は海外旅行ではなく国内旅行を選択していると指摘。日本政府観光局の統計によると、2022年8月に海外旅行をした日本人は約38万6000人であり、2019年8月の約210万人とはかけ離れています。 観光行動について研究する東洋大学の古屋秀樹教授は、日本の「リスク回避を好む」という文化がこの傾向に影響しているとしています。古屋教授によると、日本ではCOVID-19に感染するリスクが高い状況において、周囲からの圧力を受けて家の近くにとどまる可能性が高いとのこと。 一方で、食に絡めたツアーを提供する旅盛株式会社(Tabimori,Inc.)の代表取締役を務める花田哲也氏は、日本を取り巻く経済的な状況が旅行に歯止めをかけていると考えています。花田氏は、「パンデミックによって海外旅行に行く日本人が減ったとも言えますが、それ以上に円安の影響が大きいと思います」と述べ、2022年に進んだ円安傾向のせいで海外旅行をためらう人が多いと指摘しました。

CNBCは、そもそも日本人はパンデミック以前から海外旅行をしたがらない傾向があることも述べています。日本のパスポートはビザなしで渡航できる国が多く非常に強力であることが知られていますが、Nikkei Asiaによると2019年にパスポートを所持していた日本人は23%にとどまり、G7諸国の中で最も低い数値だったとのこと。 日本政府観光局の統計では、1970年代~1980年代に海外旅行者が急増したものの、1990年代半ば以降は海外旅行者数が停滞していることが示されています。2000年と2017年ではほぼ同数の約1800万人が海外旅行をしましたが、同じ期間中にその他の国々では驚異的な海外旅行者数の増加がみられたとCNBCは指摘しています。 古屋教授は、「海外旅行には言葉の壁があることや、連休が少ないことが国内旅行が好まれる理由です」と述べ、有給休暇を取りにくい労働環境も海外旅行をためらう要因の1つだとしています。また、そもそも日本国内には自然や歴史、文化的な魅力がある観光地が多いことも、わざわざ海外旅行しない要因になっているとのこと。 花田氏は、日本人が多数派に振り回されやすい傾向があり、5年も経てば日本人が海外旅行を再開する可能性が高いと予想しています。また、古屋教授も「欧米人がどれほどアクティブに旅行しているのかを見聞きして、2020年以前の海外旅行需要に戻るのは意外に早いでしょう」と述べています。

by Toshiyuki IMAI モーニング・コンサルトのアンケート結果からは「日本人の旅行離れ」が浮き彫りとなりましたが、旅行をためらうのは日本人に限った話ではありません。イギリス人アーティストのMiles Takes氏はCNBCに対し、「次に海外旅行をするのはしばらく先になりそうです」と語っています。 Takes氏はもともと旅行好きであり、2022年の初めにもシンガポールとポーランドに旅行したとのこと。ところが、COVID-19の不安や旅行における混乱、パートナーが健康上の問題を抱えているといった点から、旅行から遠ざかることにしたと述べています。 ビジネスシーンでも、働き方の変化から旅行を敬遠する動きが出てきました。シンガポール人のDaniel Chua氏は、2022年6月の出張でフライトの遅延や空港スタッフ不足による混乱に見舞われたそうで、オンライン会議の方が時間を節約できると主張しています。また、持続可能性の観点からも環境負荷が大きい海外旅行を避けるようにしているそうです。Chua氏は、自身の周囲に海外旅行をする人々が多いため、旅行しない個人的な理由についてあえて語りはしないようにしています。 Chua氏は、自分と同じような考えで海外旅行を控えている人はもっと大勢いると信じていますが、それらの人々は仲間からの圧力やFOMO(fear of missing out/取り残されることへの恐れ)のために旅行しているのだろうとCNBCに語っています。「私はこれまでにたくさん旅行しました。私が今、本当に行かなければならない国はありません」と、Chua氏は述べました。