「国に帰ればいい」 日系ブラジル人の生活保護拒否、誤情報伝える

愛知県安城市役所の職員が、生活保護を申請しようとした日系ブラジル人の女性(41)に、「外国人に生活保護費は出ない」と虚偽の説明をしていたことが、関係者への取材で判明した。職員は「国に帰ればいい」と暴言も浴びせたという。支援者らの働きかけで受給が決まったが、女性は「ほかの外国人も同じような目に遭っていないか心配だ」と話している。

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 関係者によると、女性は約10年前に来日した。夫(42)は県内の自動車部品工場などで働いていたが、新型コロナウイルス禍で失職。以降はアルバイトをしていたが、無免許運転などで逮捕されて収入が途絶えた。

 小学生の長男と1歳の次男を抱えて生活に困窮した女性は11月1日、知人と市役所を訪れ、生活保護の申請をしようとした。

 ところが、窓口で応対した職員は「外国人には生活保護費は出ない」「夫が逮捕されたら入国ビザが取り消しになる」などと誤った情報を伝え、申請を拒否。さらに「手助けできることはない」「国に帰ればいい」などと言い、出入国在留管理庁や領事館に相談するよう促したという。

 弁護士ら周囲の支援で11月末に申請できたが、担当職員はその後も、生活保護費を滞納している県営住宅の家賃支払いや、新型コロナ対策の貸付金返済に充てるよう求めたという。

 生活保護法は、保護の対象を「生活に困窮する国民」と規定しているが、定住、永住資格などを持つ外国人にも適用される。女性はブラジル国籍だが、在留カードを所持している。

 女性はこの間、知人らからもらった食料やミルクで2人の息子を養ってきた。「ミルクはいつもより倍くらいに薄めて飲ませるしかなく、最後は水のようだった。それが一番つらかった」と涙ながらに話した。

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 22日に生活保護費を受け取り、担当課長から謝罪された。「精神的に追い詰められ、市役所に行くのが怖くなった。外国人も一人の人間として見てほしい」。ブラジルでもクリスマスを盛大に祝うが、「とてもそんな気分にはなれない」と頰を紅潮させた。

 安城市は取材に「個人情報に関わることであり、何も答えられない」と話している。【藤顕一郎】