コロナ後にらみ高級ホテル開業ラッシュ、「ブルガリ」も初進出…訪日客誘致が成長の柱

コロナ3年 正常化への道<4>

 東京駅近くの高層ビル「東京ミッドタウン八重洲」の39~45階に4月、伊高級宝飾品ブランド系列の「ブルガリホテル東京」が国内初進出する。宿泊費は日本で最高水準になる見通しで、国内外の富裕層獲得を狙う。 【図】ポストコロナの経済成長、出遅れ目立つ日本

 ビルを運営する三井不動産はホテル事業の収入がコロナ禍前の9割程度まで回復した。菰田(こもだ)正信社長は「欧米からの旅行需要がすごい。ビジネス出張の減少を補って余りある」と手応えを語る。

全国の観光地が訪日客らでにぎわい始めている(昨年12月26日、神奈川県箱根町の大涌谷で)

 国内は、コロナ後を見据えた高級ホテルの開業ラッシュだ。オリックスグループは2023年冬、全客室に露天風呂を備える高級旅館「佳(か)ら久(く)」を静岡県熱海市に開く。神奈川県箱根町にある同ブランドの旅館は、宿泊料は繁忙期には10万円を超えるが、宿泊者の2割を訪日客が占め好調だ。藤井育郎(なるお)総支配人は「日本流のぜいたくを体験したいという外国人客が増えている」と話す。

 訪日観光客は19年に3188万人に達し、消費額は約4・8兆円と国内総生産(GDP)の約1%に上った。コロナ禍に伴う入国制限でこれがほぼ消えた。観光産業は宿泊、運輸、小売りなどと裾野が広く関連産業の従事者は500万人にのぼるとされ、幅広く打撃を受けた。

 国際通貨基金(IMF)によると、各国の経済成長率はコロナ感染が拡大した20年に大きく落ち込んだが、米国やユーロ圏は翌21年に5%以上伸びる急反発をみせた。日本は1%台の成長にとどまり、回復過程で大きく出遅れた。

 大和総研の神田慶司シニアエコノミストは「日本はワクチンの接種が遅れ、その後の経済正常化の判断も遅かった」と指摘する。日本は厳しい水際対策を先進7か国(G7)で最も遅くまで続け、経済界からは「鎖国状態」(経団連の十倉雅和会長)とやゆされた。

 22年からようやく水際対策の緩和が段階的に進み、訪日客数は22年11月に93万人と、3年前の4割程度まで回復した。日本経済の復調へも貢献が期待される。23年の日本の成長率は1・6%と、物価高騰に苦しむ欧米を上回る見込みだ。

 この半年ほどで急速に進んだ円安はエネルギーや食料の多くを輸入する日本の国富流出につながった。訪日客の消費は、円安で日本のモノやサービスの価格が割安になったことを生かして外貨獲得を見込める数少ない方策といえる。

 政府は訪日客誘致を成長戦略の柱に据え、30年の訪日客を6000万人に増やす目標を掲げる。消費単価の引き上げや地方への誘客を進め、訪日客観光を持続可能で変化に強い産業に変えていけるかが、日本経済のカギを握る。