にぎわい 30年前と比べてみたら…「駅前」右肩上がり、「定禅寺通」伸び悩む

仙台市中心部のにぎわいは30年前から、どのように変わったのか。JR仙台駅周辺から青葉区の一番町、定禅寺通に至るエリアを、オフィスビル需要や歩行者通行量といった指標で比較した。利便性の高い「駅近」はおおむね増加傾向を示す一方、定禅寺通に近いエリアは伸び悩んでいる状況が浮かび上がった。(報道部・布施谷吉一)

<オフィスビル>駅周辺に向かう流れ止まらず

 市中心部のオフィスビル需要は、仙台駅周辺に向かう流れが止まらない。

 オフィスビル仲介の三鬼商事仙台支店(青葉区)の市況調査によると、1992年と2022年の地区別の貸室面積はグラフ(1)の通り。

 30年間で4地区とも増えたが、近年は傾向に差がある。仙台駅を挟む「駅前」「駅東」は増加が続くが「一番町周辺」は12年をピークに減少傾向。定禅寺通より北側の「県庁・市役所周辺」は14年から大きな変化が見られない。

 貸室面積はビルの新築や建て替えで増える。県庁・市役所周辺は14年9月を最後に8年半、新築物件がない。対照的に他の3地区は23年4月~24年1月に計8棟のビルが完成する見通し。

 三鬼商事が公表している95~22年の地区別平均賃料の推移はグラフ(2)の通り。比較的新しい物件が多い駅前、駅東の両地区は1990年代のバブル崩壊や2008年のリーマン・ショック後に値下がりしたが、現在はやや持ち直している。一方、一番町や定禅寺通近辺は賃料が下がり続けている。

 賃料が安くなっても空き室が減るとは限らない。23年3月の空き室率調査で、賃料が下落している県庁・市役所周辺は5・14%と、仙台駅前の4・92%、一番町周辺の4・48%を上回る。

 三鬼商事仙台支店は「仙台駅周辺は1フロア当たりの床面積が広く、求人数の多い需要に対応しやすい。定禅寺通より北側は新築物件がなく、テナントの動きも比較的少ない」と分析。ビル新築などに伴い、地区別の空き室率や賃料が変動する可能性があるという。

<通行量>「番ブラ」今や遠く…一番町までの回遊見えにくく

 まちの活気を示す歩行者の通行量も「駅近」で数値が伸びている。

 仙台商工会議所と仙台市が市中心部8地点を対象に行っている通行量調査で、各地点(日曜)の1992年と2022年の結果は地図の通り。「仙台駅・東西自由通路」と定禅寺通に近い「ナカガワ前(一番町4丁目)」に注目すると、増減の傾向は対照的だ。

 仙台駅周辺は、駅東に本拠地が近いプロ野球東北楽天の参入や駅西口の商業施設整備などが相まって、通行量は右肩上がり。一方、一番町4丁目は1997年をピークに減少局面に入り、2001年に初めて仙台駅・東西自由通路を下回った。その後、通行量の差は拡大した。

 19年に仙台駅・東西自由通路は6万9000人に達したが、一番町4丁目は半数以下の3万3000人にとどまった。新型コロナウイルス禍で2地点の通行量はともに大きく落ち込んだが、差は縮まらなかった。

 大手資本の商業施設が集積する駅周辺に人が流れ、商店や飲食店の連なる一番町周辺まで回遊する傾向の見えにくい状況がうかがえる。かつて「番ブラ」と呼ばれ、にぎわいの象徴だった一番町は定禅寺通に向かう4丁目をはじめ、状況は厳しさを増す。

 仙台商議所の担当者は「調査結果を見ると、駅周辺と一番町の傾向の違いがはっきり分かる。新型コロナの影響で通行量が減った都心部全体のにぎわいをどう取り戻すか、いかに回遊性を持たせるかが課題になる」と説明する。