復興の足かせ わが家 まだかなわず 需給バランス崩れる

東日本大震災からの復興を、工事費高騰が妨げている。建設工事の急増で人材や資材が不足し、災害公営住宅など自治体発注工事の入札不調が相次ぐ。一戸建て住宅の建設費も上昇。被災者の住まい確保に暗雲が漂い、復興の足かせになりつつある。(釜石支局・玉応雅史、宮古支局・山並太郎、報道部・片桐大介)
<工法変え対応>
 岩手県釜石市の天神町災害公営住宅建設工事。入札は昨年7~12月に3度行われ、いずれも落札業者が決まらない不調や不成立に終わった。
 指名競争から条件付き一般競争に切り替えた3度目は1社のみが参加。入札価格は予定価格を5億円も上回り、市の担当者を驚かせた。
 「市民は一日も早い入居を待っている。鉄筋コンクリートでの施工はもはや困難だ」
 市は、コストを抑えられる鉄骨構造に変え、設計と施工をセット発注する方式に変更。2月にやっと業者が決まった。同市唐丹町の小白浜住宅も同様の対応を迫られた。
 両住宅は、建築家伊東豊雄さんらが設計を審査した「かまいし未来のまちプロジェクト」の一環。孤立防止機能やデザインが注目されたが、コスト上昇に阻まれた。「特に労務費の高騰が大きい」と市は分析する。
 日本建設大工工事業協会によると、2008年のリーマン・ショック後、職人の賃金が暴落し離職が相次いだ。コンクリート打設に欠かせない型枠工は12年までの4年間、全国で約30%減った。
 震災後は建設工事が一気に増え、不足感は強まる。岩手、宮城、福島3県は、公共工事の設計労務単価=表=を上げたが「実際の相場に追い付いていない」(釜石市幹部)という。
<価格差1000万円>
 工事価格の上昇は、一戸建て住宅にも及ぶ。岩手県宮古市の建設会社社長によると、市内の住宅建築費の相場は坪単価50万円程度だが、80万円に引き上げる大手業者もいる。40坪の住宅なら価格差は1000万円を超える。
 社長は「工期も3カ月から半年遅れている。早くわが家で暮らしたいという被災者に応えたいのだが」と悩む。
 4月の消費税増税を前に全国で住宅の駆け込み需要が発生、人や資材が被災地に集まらない状況が続く。14~15年度には高台移転など宅地造成がピークを迎え、住宅建設ラッシュが始まる。
 仙台市に拠点を置く大手住宅メーカー関係者は「需給バランスは既に崩れ、業界の供給可能量は限界に来ている。相場の急騰はあり得る」と予測する。
 2020年の東京五輪が迫り、関連工事で一層の人手不足が懸念される。時が過ぎるほど被災者には厳しい現実が待ち受ける。

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Posted by takahashi