被災免れた貞山運河の松並木保存へ 宮城県が復旧工法見直し

 東日本大震災で被災した貞山運河の災害復旧工事を進める宮城県が、岩沼市の流域3.5キロに残った松並木を可能な限り保存できるよう、施工方法を見直す方針を決めた。地元住民や研究者らの要望を受け、貴重な歴史的景観の維持に努める。
 震災の津波で、太平洋岸近くにある貞山運河沿いの松は、多くが壊滅的被害を受けた。ただ、岩沼市南部の阿武隈川河口付近は比較的被害が少なく、運河沿いには数百本の松が残った。
 県は昨年度、貞山運河の災害復旧計画を策定。津波に備えて治水効果を高めるため運河を拡幅するとともに、のり面を削って石やコンクリートで固める施工方法を決めた。工事に伴い、流域に残った松も伐採しなければならなくなった。
 これに対し、地元関係者から異論が上がった。周辺の貞山運河はかつて木曳掘といわれた。貞山運河の中で最も古い1597~1601年に造られた土木遺産で、松並木と共に美しい景観を形成している。
 歴史的価値を維持するためにも、津波に耐えた松はできるだけ保存すべきだとの声が強まった。
 作家司馬遼太郎さんも現地を訪れ、著書「街道をゆく」の中で「これほどの美しさでいまなお保たれていることに、この県への畏敬を持った」と称賛した。
 保存を望む声を受け、県は本年度に入って計画見直しに着手。最も多く松が残った3.5キロの区間については、今後も生育可能が見込める松に、なるべく手を加えないよう方針を転換した。
 松が生えるのり面は削らずに治水機能を発揮できるような工事を検討しており、夏までに具体的な工法を決めるという。
 県は昨年5月に策定した貞山運河再生・復興ビジョンで「人と自然、歴史が調和した復興」を基本方針の一つに掲げる。
 県河川課は「貞山運河に誇りと愛着を持つ住民の思いがあらためて分かった。松並木も運河の一部ととらえ、可能な限り景観を変えないよう配慮する」と話している。

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Posted by takahashi