広島土砂災害 福島のコメで炊き出し 震災支援のお礼に物資も届く

 熱い湯気を立てる炊きたてのご飯でできたおにぎりが並んだ。広島市の土砂災害で被災した人たちを励まそうと、広島市安佐南区沼田町伴の地域自立支援施設「you-縁(ゆうえん)」で25日、炊き出しが行われた。それは東日本大震災を経験した福島県いわき市から届いた震災支援のお礼のコメだった。広島と福島を結ぶ絆(きずな)。人と人との確かなつながりがある。
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 炊き出しをしたのは、同施設代表の大上正城(おおうえ・まさくに)さん(55)をはじめ、ボランティア仲間や炊き出しを知って応援にかけつけた人たち。男性はコメを運び、女性は熱いご飯を手のひらに乗せてにぎった。女子大生や料亭の女将、板前も加わった。午前9時からの炊き出しが始まった後も、次々に仲間はかけつけてきた。
 平成23年の東日本大震災で支援物資を集めて届ける活動をしたのをきっかけに、福島県の人たちと交流を続けている大上さん。広島市が土砂災害に見舞われた今回、福島から安否を気遣う連絡が次々に入った。大上さんの施設が安佐南区にあると知っていたからだ。
 いわき市四倉町商工会の青年部長、佐藤真一さん(31)からは「大丈夫ですか」と電話があった。大上さん自身は被災しなかったが、「震災支援の時に物資を集めてくれた人たちも被害を受けている」と報告した。
 広島の事情を聴いた佐藤さんは今、何に一番困っていて何が必要なのかをたずねた。大上さんはさっそく被災現場の情報を集め、スコップや土を運ぶ手押し車などが足りないと伝えた。佐藤さんは福島県内で多くの人に声をかけそれらを集めた。「今回は私たちが支援する番ですよ」。
 スコップ20本、手押し車5台、土嚢(どのう)袋500枚、コメ150キロ、缶詰などの食糧が24日、「you-縁」に届いた。大上さんはコメを炊いて、おにぎりを作ることを決めた。「避難所やボランティアの人に配ろう」。
 できあがったおにぎりはこの日、安佐南区ボランティアセンターにまず約300個を運び込み、復旧への力になった。
 ◆口コミで支援の輪
 大上さんといわき市のかかわりは震災の直後から始まる。当時、ニュースで物資が足りないと知り、もどかしさが募った。「何か自分にできないか」。身近な数人に声をかけ「水などを送ろう」と活動を開始した。すると、口コミであっと言う間に支援の輪が広がり、水やインスタントラーメンなどが大量に寄せられた。
 「運ぶのに必要だろう」と、トラックを提供してくれた人までいた。自分たちの手でそれらを福島に運んだ。荷物は2トントラックと3トントラックの2台で運びきれず、広島と福島の間を2往復した。
 ところが、実は大上さんは福島に知人がいなかった。現地で事情を話したところ、物資を受け入れたのが、いわき市の四倉町商工会だった。同商工会では広島からの支援に感謝し、当時の事務局長が退任する際には、広島との連絡を欠かさないよう後任者に引き継いだ。その後も復興状況を写真で送るなど、大上さんときめ細かい交流が続いている。
 ◆活動団体を設立
 大上さんの本業は設計製作会社の経営。ものづくりに携わっている。本格的なボランティア活動は震災時が初めて。個人でするつもりがいつの間にか多くの人が周りに集まった。「自分の名前だけ出すのもおかしい」と、「you-縁」という団体名をつけた。
 震災支援が一段落し、ものづくりを通じて人のためになることができればと、自立支援施設「you-縁」を設立。現在は活動の中心をそこに移している。最近、アンテナショップを広島市中区本川町に開設した。ここにも、土砂災害への支援相談が数件寄せられているという。
 ◆効率よく役立てて
 スコップや手押し車など食糧以外の支援物資は大上さんから、支援仲間の広島安佐商工会佐東支所(安佐南区緑井)の青年部長、竹本浩さん(38)と副部長の野村晋作さん(39)に託された。
 竹本さんは「情報の共有が大切」として、ボランティアセンターや関係組織などと相談しながら、福島からの物資を被災者やボランティアに効率よく役立ててもらいたいと思っている。(山本尚美)

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Posted by takahashi