観光魚市場、活気・豊富な魚介で誘客 下関

東日本大震災の被災地で、漁業と水産関連業を橋渡しする産地市場の再建が進む。三陸漁場の豊富な魚種を水揚げし、仲買人らの活気あふれる魚市場は、それだけで消費者を引きつける観光拠点になり得るのではないか。こうした発想を先取りした観光魚市場を本州最西端の水産都市・山口県下関市に訪ねた。
<1万人が来場>
 普段は仲買人らが日本海や瀬戸内海の魚介を売り買いする下関市の地方卸売市場「唐戸市場」だが、週末と祝日の朝は、その表情が一変する。
 「活きいき馬関街(ばかんがい)」が始まると同時に、市場内は大勢の観光客でごった返した。市場内に店舗を構える仲卸業者や鮮魚店約20店が、すしや海鮮丼で観光客をもてなすのだ。
 「特価で豊富な魚介を味わえる」と評判が広がり、季節を問わず約1万人が訪れるという。駐車場には広島、岡山、福岡など他県ナンバーの車も数多い。
<全面的に開放>
 同じ下関市にあってフグの取扱量日本一で名高い「南風泊(はえどまり)市場」との差別化を図るため、唐戸市場は、魚種の多様さと一般客への全面開放に着目した。
 唐戸市場業者連合協同組合の原田光朗理事長は「入店する仲卸や小売業者は休日返上になってしまうが、それに見合う売り上げを計上している」と胸を張る。
 周辺に立地する観光施設との連携も唐戸市場の特徴だ。
 下関市は1989~2000年、ウオーターフロント開発事業を進め、関門海峡を望む唐戸エリアを整備。市立水族館の建設に合わせて01年、約77億円を投じて唐戸市場を移転新築した。
<モールも完成>
 翌年には、地元の水産関連企業など民間出資で、飲食店や土産品店が入るショッピングモールも完成。各施設が一体となって観光PRに取り組んでいる。
 下関市市場流通課の木村英世課長は「市場の建設費を償還するには残り10年弱を要するが、地域全体にもたらす経済効果を考えると市場の存在価値は大きい」と強調する。
 観光魚市場は、米国サンフランシスコのフィッシャーマンズワーフが世界的に有名。震災以前には、三陸の豊かな漁場を抱える石巻市の石巻魚市場が魚種の多様さで全国一、二を争っていた。
 石巻魚市場の須能邦雄社長は「消費者が新鮮な魚介を直接購入できる観光魚市場は、被災地に活気をもたらす観光の目玉になり得る」と期待を込めつつ「水産関連企業と行政が協力しなければ実現は難しい」と指摘している。
◎河北新報社提言
 【安全安心のまちづくり】
(1)高台移住の促進・定着
(2)地域の医療を担う人材育成
(3)新たな「共助」の仕組みづくり
 【新しい産業システムの創生】
(4)世界に誇る三陸の水産業振興
(5)仙台平野の先進的な農業再生
(6)地域に密着した再生可能エネルギー戦略
(7)世界に先駆けた減災産業の集積
(8)地域再生ビジターズ産業の創出
 【東北の連帯】
(9)自立的復興へ東北再生共同体を創設
(10)東北共同復興債による資金調達
(11)交通・物流ネットワークの強化

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Posted by takahashi