米スタバ苦い顔「マックの味が上」…エスプレッソマシン裏目?

 【ワシントン=渡辺浩生】米コーヒーチェーン大手のスターバックスの急成長に黄信号が点っている。効率性を追求するあまり、店の雰囲気やエスプレッソの風味に表れたスタバ独特の魅力が失われつつあるのではないか、という危機感をハワード・シュルツ会長が投げかけ、波紋を広げているのだ。株価も低迷する中、創業の地シアトルで21日開かれる株主総会で、シュルツ会長がどのようなメッセージを示すか、注目されている。

 「成長と発展と規模を達成するため過去10年間してきた一連の決断が、スタバで顧客が体験する感動を希薄にし、商品価値を減退させている」

 1枚のメモが先月、インターネットを通じて暴露され反響を呼んだ。1982年にシアトルのコーヒー店に入社し、本場イタリアのエスプレッソ文化を注入、世界で最も認知されたブランドに築き上げたシュルツ会長が経営幹部にあてた約800語の警告だった。

 東京に進出した96年当時は約1000カ所だった店舗数は、現在39カ国1万3000店超。店舗拡大が売り上げを順調に伸ばし、2006年10~12月期の純利益は2億500万ドルで、前年同期比18%増となった。しかし、シュルツ会長はその陰で「アロマ(芳香)が失われた」と嘆く。

 「バリスタ(店員)」が挽(ひ)きたての豆で、ベースになるエスプレッソをショットグラスに抽出。客も眺められるこの光景が、ローストの香りとともに独特の雰囲気を醸し出す。バリスタは常連客の好みも記憶した。それがスタバの伝統だった。

 変化のひとつのきっかけは「サービスの速度と効率性」(シュルツ会長)を上げるため約5年前に導入した自動エスプレッソマシン。現在は数千店に普及した。

 一方で、サンドイッチなど食べ物のメニューは増え、ドライブスルー店も登場。「ファストフードチェーンがスタバの手法をまねる一方で、スタバのファストフード化が進む」(米紙ウォールストリート・ジャーナル)というわけだ。

 スターバックス・インターナショナルは「利便性のために風味を犠牲にしていない。自動エスプレッソマシンは、変わらずによりよい1杯を出している」(メイ・クルソール広報部長)と話すが、先月の米国内の消費者報告書では「マクドナルドのコーヒーがスタバの味を上回った」という指摘さえ出された。

 米ナスダック市場に上場する株価は昨年11月に一時40ドルを突破した後、ジリジリと低下。会長のメモ内容が先月報じられたのを契機に下げ幅は拡大し、今月20日の終値は31・38ドルと4カ月で22%も下落した。

 スタバは年内に2400店舗増やし、最終的に世界4万店を目指す計画だ。しかし、成長が持続可能かどうかに投資家が疑問を抱き始めたことを、株価の低迷は暗示する。原点回帰と拡大路線をいかに両立させるか-。エスプレッソの伝統は、いま大きな曲がり角を迎えている。

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Posted by takahashi