「断熱材足りない」東北 エコポイント効果 着工急増

木造住宅の建築現場で断熱材不足が深刻化している。住宅版エコポイントや住宅ローン「フラット35S」など住宅関連の優遇制度=?=で省エネ対応の基準を満たすため、高性能の断熱材需要が急増したのが要因だ。メーカーの生産は注文に追い付かず、東北の工事現場からも「引き渡しが遅れかねない」と悲鳴が上がっている。
 断熱材の中でも特に不足しているのは「グラスウール」だ。ガラス繊維を使った素材で、単価が比較的安い上、施工も容易なのが特徴。使用量を通常の2倍程度に増やすなど優遇制度の基準を、それほどコストを掛けずに満たせる利点がある。
 東北各県に営業拠点を持つ大手資材販売会社は「東北では8月ごろから不足が顕著になった」という。理由として、優遇制度を受けた住宅着工の急激な回復を挙げる。
 国土交通省のまとめによると、東北6県の10月の新規着工数は前年同月比5.8%増の3507戸と、4カ月連続で前年を上回った。全国も6.4%増の7万1390戸と回復基調が鮮明になっている。
 2009年の年間着工数は全国で80万戸を下回り、45年ぶりの低水準だった。生産を縮小したメーカーも多く、急激な需要増への対応が遅れたとみられる。
 仙台市に支店があるグラスウール大手のマグ・イゾベール(東京)は「需要増を見込んでいたが、予想をはるかに超えた。8月中旬以降は止めていたラインを整備し、24時間体制のフル操業に戻した」と説明する。
 グラスウール特需は代替品にも波及している。鉱石を使った「ロックウール」なども品薄で「業界全体が混乱状態。いったん受注の受け付けを見合わせ、(買い占めがないかどうかなど)注文内容を精査している企業もある」とメーカー関係者は指摘する。
 資材販売会社の関係者は「断熱材不足は政府の政策のしわ寄せ。年度末にかけて学校や保育園など木造公共施設の建設や改築向け需要も見込まれ、さらに逼迫(ひっぱく)する恐れもある」と懸念する。
<住宅関連の優遇制度> 住宅版エコポイントは新築やリフォームに対する国の制度で、1戸当たり最大30万ポイント(1ポイント1円)が発行される。フラット35Sは住宅金融支援機構が民間の金融機関と連携して提供する長期固定金利型住宅ローンの一つ。政府の経済対策で、金利の引き下げ幅が0.3%から1.0%に拡大されている。いずれも断熱性能を高める省エネ対応などの基準を満たすことが条件。
◎「工事進まぬ」頭抱える業者
 仙台市内のある住宅建築現場。地元の業者が手掛ける建物は、2階の天井の一角がすっぽり開いたままになっている。
 天井の枠に断熱材を入れ、最後に天板でふさぐのが通常の工法だが、「断熱材がないのでそれができない」と現場の担当者。工期の遅れを少しでも回避するため、天板の設置を先行させた。入荷し次第、開いた一角から屋根裏に入って断熱材を取り付けるという。壁への設置もできずにいる。
 この業者は現在、15棟の注文住宅を建築中で、いずれも似たような状況という。「11月前半になって著しい不足を実感した」と担当者。12月半ばに必要となる分を注文したところ「納期を確定できない」と回答された。
 担当者は「複数の資材会社に発注し、入ってきた順に使うようにしているが、いかんせん必要量が確保できない」と頭を抱える。
 大手住宅メーカーは年間契約で資材を調達しているため、影響はそれほどでもないが、中小の工務店は深刻だ。
 「昨年までとは大違い。1カ月前に予約しないと無理」と仙台市内の工務店。別の業者も「3カ月の余裕を持って発注しないと、住宅の引き渡しが間に合わなくなる可能性もある」と話している。

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Posted by takahashi