空き家、仙台でもじわり 高齢化進み増え治安悪化懸念

仙台市内の古い住宅団地で、放置されている空き家が増えている。治安の悪化が懸念されることに加え、庭の枝木は生い茂り、街の美観も損ねる。人口減少社会の到来で団地の空き家はさらに増える可能性もあり、市は部局を超えた対策に乗り出し始めた。
 青葉区のとある住宅団地。家屋が整然と並ぶ一角に、3年ほど前から空き家になった一軒家がある。手入れされていない庭の草木は伸び放題で、高さ約10メートルのカエデは枝を大きく広げ、一部は敷地外に張り出している。
 隣に住む主婦(70)によると、この家には高齢の女性が一人住まいをしていたが、数年前に死亡。子ども夫婦が住み着いたものの、間もなく姿が見えなくなった。主婦は「落ち葉が雨どいを詰まらせる。伐採したいが、持ち主の所在が分からないので何もできない」と不満を打ち明ける。
 総務省の調査によると、市内で1998年に9100戸だった一軒家の空き家は、この10年で1万1990戸まで増えた。背景にあるのは団地の高齢化だ。持ち主が死亡したり、別の地域に暮らす子ども夫婦の元に移ったりする例が多い。郊外型の団地で殊に目立っており、市には適正管理を求める苦情が相次いで寄せられている。
 青葉区北部の川平学区連合町内会(3571戸)でも最近、空き家が少しずつ目立つようになってきた。町内会が9月、初めて空き家の実態調査を実施したところ、持ち主が長期間不在の家屋が約60戸に上ることが分かった。
 島田福男会長は「空き家は不審火が起きたり、ごみの不法投棄場所になったりする。行政はずさんな管理を改善するよう所有者に徹底して指導してほしい」と注文する。
 青葉区は約10年前から空き家の写真を撮り、家屋の所有者に郵送しているが、「大半は連絡も取れず、個人情報の保護が壁になって持ち主の所在が分からないケースもある」と担当者は語る。
 仙台市の人口(約103万7000人)は数年後に減少局面に入り、35年には94万9000人に落ち込むと予想される。市は都市計画道路の整備見直しなどで集約型の街づくりを進めており、郊外ではさらに空き家が増える可能性もある。
 市は6月に市民局や都市整備局などでつくる庁内連絡会議を設立し、総合対策の検討に入った。市市民生活課の佐藤尚之課長は「空き家は防犯や生活衛生、建物の保安などの問題が複雑に絡み合っている。各部局の連携で、解決を図りたい」と話している。

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Posted by takahashi