仙台厚生病院構想の医学部 東北福祉大が新設決定

 東北福祉大(仙台市青葉区)は3日、東京都内で理事会を開き、財団法人厚生会仙台厚生病院(同区)からの連携要請に応じ、学内に医学部の新設を目指すことを正式決定した。
 理事会は港区の曹洞宗宗務庁で行われ、出席理事14人全員の了承を得た。理事会終了後、大学で萩野浩基学長が会見し「東北の住民に尽くす医者を育てるため、全力で取り組む」と意気込みを語った。
 3月半ばに教職員10人前後で構成する医学部新設のための準備委員会を設置し、医学部の制度設計に入る。
 仙台厚生病院も月内に準備組織を発足させ、連携を目指す他病院との交渉などを進める予定。
 医学部構想は1月、仙台厚生病院が発表した。東北の深刻な医師不足の解消が狙い。看護系学部が充実している福祉大を連携先に選んだ。
 国は、1979年を最後に医学部の新設を凍結している。全国的な医師不足を受けて昨年12月、凍結解除も視野に専門家による検討会を設置。今夏までに中間報告を出す方向で議論している。
◎渡辺信英学長補佐に聞く/医師不足解消に貢献
 医学部新設に向けて動きだす東北福祉大。今後の取り組みや課題について、これまで仙台厚生病院と交渉を進めてきた同大の渡辺信英学長補佐に聞いた。
 ―理事会で医学部新設の方針が決まりました。
 「介護、福祉、医療が一体となった福祉サービスが求められる中で、東北は特に医療分野の人材が不足していた。東北の福祉を支えてきた大学として、医師の育成は願ってもないチャンスだ。連携先に選んでもらった仙台厚生病院にあらためて感謝したい」
 ―今後の準備は。
 「月内に医学部新設のための準備委員会を設け早速、カリキュラムや選抜方式の設計にとりかかる。校舎は既存施設を使い、足りなければ新設する」
 「大学は看護系学部を持ち、病院『せんだんホスピタル』(144床)を運営するなど、国が示す医学部新設の条件が整っている。(約200億円とされる)新設資金は仙台厚生病院と協力して工面する」
 ―目指す医学部像は。
 「東北の医師不足の解消に貢献したい。『東北枠』を設け、自治体の奨学金を受ける地元学生を積極的に受け入れる。自治医大(栃木県)の取り組みが参考になる」
 「医学生には、大学が運営する福祉施設で高齢者福祉も勉強してもらう。大学が掲げるノーマライゼーションの理念に基づいた医師の育成は、高齢化社会で求められる医師像とも合致する」
 ―医学部教員の確保に伴い、地域の医師不足に拍車が掛かるとの指摘もあります。
 「医学分野の教員は既に約20人いる。(病院を定年退職した後に)大学で座学指導をしてもらう方法も考えていく。地域の患者や病院に迷惑は掛けない」
 ―医学部新設を凍結してきた文部科学省は今夏にも、新設容認の是非について判断を示す見通しです。
 「地域医療の再生には若い医師を増やすことが大事だ。医療関係者には仙台厚生病院の真摯(しんし)な思いを理解してほしい。このまま手を打たなければ、東北に『医師ゼロ』の地域が増える。文科省に東北の住民や自治体の思いが伝わることを願っている」
<わたなべ・のぶひで>1941年北海道生まれ。東洋大大学院法学研究科博士課程単位取得満期退学。東北福祉大総合福祉学部長などの後、06年から現職を務め、同学部長も兼務。08年4月から総合マネジメント学部長にも就任。専門は家族法。69歳。

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Posted by takahashi