マドンナというお店

 6月の月末、会社宛に一通の請求書が届いた。それは、マドンナという名前の飲み屋からであった。会社への飲み代の請求書はすべて社長がチェックすることになっており、この請求書も当然社長のもとへ届く。経理部長が請求書の束を携えて社長室に入って行った。
 そして経理部長はほどなくして社長室からでてきた。それから10分はたったであろうか。社長はものすごい形相で大声を張り上げて社長室からでてきた。
  「だれだ!!、マドンナで飲んだやつ!!。お前、マドンナってしってるか?。」
 社長はそこにいた社員を捕まえて、恐ろしい顔付きでどなり散らした。
  「だれが使ってる店か、知らないか!!」。
 そこにいた人達は全員
  「分かりません」。
と、応え、皆、顔をを見合わせ苦笑していた。そして、社長はまた社長室に戻って行った。
 
 その後、30分ほどたったであろうか。社長けまた、大声を張り上げて社長室からでてきた。
 「公家だ。あいつに間違いない。あいつはマドンナって店つかってたよな。」
  公家さんは昨年11月に突然退社した人で、そのときは会社のいじめに会いノイロ-ゼ同然で辞めた人であった。社長はこの人に間違いないと確信した様子で、さらに皆に同意を求めているようであった。実際、本人が聞いたら怒るであろう。ウラも取られずに犯人に仕立てあげられてしまうのだから。そして社長はこう言いながら経理部長の部屋に向かった。
  「あいつ、ぶっ殺してやるからな。」
 しばらくして夕方になり、外周りの営業の人達も帰ってきた。そして社長がまた、大声を出して叫んでいた。
  「マドンナって店、知っているやつ、いるか!!。」
 僕は思った。社員に聞くよりも直接お店に電話をかけて、どんな人が飲んでいたかを尋ねる方が早いのではないかと・・・。
 しばらくして、森副部長が社長室に呼ばれた。少したった後、社長室からどなり声が聞こえてきた。どうやら犯人は森副部長のようであった。
  「飲みたかったら俺に言え!!!。なんで嘘をつくんだよ!!!!!!。」
 それから1時間ほど怒鳴り声は続いた。社長は真っ赤な顔をして社長室から出てきた。
  「お前らも飲みたかったら俺に言え!!!!。」
 と言い残してまた、経理部長のところへ向かった。
 それにしても森副部長は酒癖が悪いと聞いていたが、本当にすごい人である。噂によると過去にも数回やっているそうで、お金が無いなら飲みにいかなきやいいのに、本当に分からない人だ。