登録有形文化財 東北から6件・文化審答申

文化審議会(宮田亮平会長)は13日、日本の代表的な建築家の故前川国男氏が設計した弘前市庁舎本館や、1935年建設の富山県庁舎本館など26府県の建 造物171件を登録有形文化財とするよう下村博文文部科学相に答申した。近く告示され、登録数は1万197件となる。弘前市庁舎本館は隣接する弘前城との 調和に配慮して、モダニズム建築に木造建築の要素を取り入れている。富山県庁舎本館は外壁がタイル張りで、知事室や特別室には建設当時の内装が残る。東北 から他に登録されるのは、カトリック十和田教会(十和田市)、松谷家住宅(大崎市)、旧丸中横仲商店(長井市)、山形鉄道フラワー長井線(長井市など)、 善導寺鐘楼(郡山市)。

◎弘前市庁舎本館(弘前市)/モダニズムの転換点

日本のモダニズム建築の旗手として知られる建 築家前川国男が設計し、1958年に建築された。鉄筋4階建てで、高さ約14メートル。水平線を強調してモダニズム建築の特徴を表現しながら、対面する弘 前城追手門と協調するように2層の軒を突き出したり、腰壁にれんがを用いたりして、装飾性も重視した。
機能性に重きを置いた従来のモダニズム建築の転換点を示す貴重な資料だ。

◎松谷家住宅(大崎市)/雨戸戸袋高度な意匠

大崎市役所の東側に立つ豪商の屋敷。道路拡張などのたび敷地が削られてきたが、今なお約2000平方メートルの広さがある。
書院座敷のある主屋は明治前期に建てられた。明治天皇の巡幸時には、随行する皇族の宿舎となった。玄関脇の雨戸戸袋にも高度な意匠が施されている。
屋敷内の明神社、米穀を収納した岩蔵、文庫蔵、砂糖蔵、大豆蔵、表門、御成門も併せて登録された。

◎山形鉄道フラワー長井線(長井市など)/窓枠は100年前のまま

旧国鉄長井線の木造駅舎。山形鉄道が経営を引き継いだ今も現役の無人駅として活躍する。西大塚駅(川西町)は開業前年の1913年(大正2年)建築。木製の窓枠、切符販売のカウンターなどは当時のままで、石造り谷積みのプラットホームも残る。
羽前成田駅(長井市)は長井-鮎貝間が開業した1922年(大正11年)に建築された。出札口など随所に幾何学模様の意匠が施された特徴的な建造物だ。

◎カトリック十和田教会(十和田市)/特徴的な切り妻屋根

ロマネスク様式を模した木造2階の教会で、1932年に建設された。設計者のスイス人建築家マックス・ヒンデルは、戦前に国内で学校や宗教施設を多く手掛けたことで知られる。
内部には両脇に回廊が設けられ、飾りの彫刻を施した列柱に連続アーチが架かる。鐘楼を頂く建物正面の切り妻屋根も特徴的だ。今も礼拝や結婚式などに活用され、市のランドマークになっている。

◎旧丸中横仲商店(長井市)/市街地に残る土蔵群

最上川舟運で栄えた長井市の市街地に残る江戸末期から昭和前期に建造された土蔵群。旧丸中横仲商店は小麦、砂糖、食品、酒などの卸売りや質屋を営んだ商家で、通りに面する店舗と奥の母屋、その奥に砂糖蔵、土蔵、質蔵、粉蔵、江戸蔵の5棟が3列に建つ。
全体的に装飾が少ないが、土蔵や質蔵には黒しっくいが使われ、細部の意匠が凝っている。砂糖蔵は桁行きが約12メートルに及ぶ大型の蔵だ。

◎善導寺鐘楼(郡山市)/外観は平等院を模す

1579年に建立された善導寺は戊辰戦争などで3度焼失。現在の本堂は1913年に落慶、鐘楼は1958年に再建された。鐘楼は梁(はり)と棟木の間に立てられる人字形割束やギリシャ古建築「エンタシス」付きの円柱など古代建築の意匠を取り入れた。
外観は宇治の平等院鳳凰堂を模して設計されたとされる。一般的な鐘楼とは違った長方形の姿が、洗練された雰囲気を醸し出す。

ニュース

Posted by takahashi