アマボク不正問題で連盟幹部が告発側へ和解協議申し入れと“隠蔽工作”

日本ボクシング連盟の幹部が、告発状を提出した日本ボクシングを再興する会へ和解協議の申し入れと同時に“隠蔽工作”を行っていることが1日、明らかになった。日本ボクシングを再興する会の関係者が明らかにしたもので、日大が、アメリカンフットボール部の悪質タックル問題で、揉み消しをはかろうとして危機管理に失敗した姿が重なる。

日本ボクシングを再興する会の333人(代表・鶴木良夫)が、JOC(日本オリンピック委員会)、内閣府、日本スポーツ協会、文部科学省及び文部科学大臣(林芳正)、スポーツ庁及びスポーツ庁長官(鈴木大地)、JSC(日本スポーツ復興センター)に、12項目に渡る告発状を提出、日本アマチュアボクシング界の“ドン”山根明会長の退陣を迫った問題が、連日、テレビのワイドショーを中心にしたメディアを騒がせている。リオ五輪代表の成松大介選手へのJSCからの助成金の不正流用問題から始まり、試合用グローブ等道具の不透明な独占販売、審判の組織的不正、“奈良判定”と呼ばれる明らかな不公平判定の横行など、その告発状の項目を順番になぞるように衝撃的な“山根独裁の悪行疑惑”が、次から次へと明らかになっている。

日本ボクシング連盟は、報道された告発内容のうち、公式ホームページ上で、成松選手の助成金の不正流用は認めたものの、不正審判問題などへの反論を掲載したが、それが作成途中のものだったため、すぐさま削除して一部内容を差し替えて再掲載するなどの“迷走”を続け、当の山根会長は「入院」という政治家のような手口を使って、岐阜で行われているインターハイ会場に現れずに雲隠れを決め込んでいる。

数々の不正の告発を受けながら、今なお、自らの言葉での説明責任を果たしていない。だが、その裏で、音声データなどの証拠を固められた告発の数々から、もう逃げ切れないとでも考えたのか、事態を収束させるために幹部を使い日本ボクシングを再興する会へ「話し合いを持ちたい」と互いの弁護士を交えての和解協議を申し入れてきたのだ。

そもそも再興する会は、話し合いにより、地方の助成金の不正な吸い上げや、不正会計、不正審判の改善を行っていきたいという考えがあり、実際、そのようなアクションを起こして、ここまで山根会長との面談まで行ってきた。しかし“弾圧姿勢”が強くなるだけで、不正審判の問題も含めた多くの問題を放置、改善の方向が見えないため最終手段として、今回の諸団体への告発に踏み切ったという経緯がある。

アトランタ五輪代表で新潟県連副理事長の仁多見史隆さんが、実名で「明らかな審判の判定の不正があり、僕たちが教えている選手、生徒たちになぜ負けたかを説明できないんです。もう今は選手たちも『奈良判定ですよね?』と口にするようになっています。ボクシングの技術の向上を目指し、強くなるために練習をしているのに、その努力が、山根会長による審判への圧力で無になるんです。そこで指導者が何を教えられますか? お金の不正など、大人の話もありますが、私たちが一番に訴え、改善してもらいたいのは、ここなんです。今、競技人口も減っています。喧嘩する気などないのですが、ボクシング界の将来のためには、今なんとかしなければ、大変なことになります。トップが辞めてもらうしか何も変わりません」と訴えるように、現場の指導者からは、切実な声が挙がっている。

フェアなジャッジのないリングで、勝つために、どんな努力をしろ、というのか。指導者も競技者も正しいモチベーションは保てない。「どうせ奈良には勝てない」。必然、競技への熱も冷め、競技者が増える環境が担保できなくなる。
アンダー世代では、昨年、プロ側が運営するジュニアの大会に参加した場合、高校進学後のインターハイなど、アマチュアのトップ大会への出場を禁ずるなどのルールをアマ側が作ったため、子供達がボクシングに飛び込む間口を狭め、ボクシングの底辺拡大も停滞、競技者登録人数は減少するばかりという現状がある。国体の開催についても2023年度から隔年実施競技への格下げになった。

「自分の利益しか考えない山根会長に任せていればこれからどうなるのか」

ボクシングを愛する人たちの危機感が、今回の告発に変わったのである。何もしない連盟の姿勢に業を煮やしたのだ。ただ、今回の告発で、山根会長の退陣を求めているが、審判問題も含め不正が蔓延している問題が改善されるのではあれば、話し合いで解決したい、という方針は継続している。

告発側は、弁護士と相談の上、そのアマ連盟幹部の和解協議の申し入れに応じて、そのテーブルに付き話を聞く考えを固めていたところ、とんでもない要求が出たという。

3日に発売される写真週刊誌に山根会長の醜聞記事が出るという情報を聞き込んだ、その幹部は、その発信元が、日本ボクシングを再興する会だと睨み「なんとか記事を出すのを止めてもらえないだろうか。それができたら、何でもそちらの要求を飲む」という倫理に反したような隠蔽工作まがいの交換条件をつきつけてきたのだ。だが、再興する会は、その写真週刊誌の一件にタッチしておらず話が噛み合わなかったという。

開かれた議論もせず、スキャンダルの隠蔽との交換条件で、再興する会の改善要求を飲むというのは、あまりに論理性、倫理性に欠け、ことの本質から離れている。機能不全に陥っている日本ボクシング連盟のガバナンスを表すような行動である。

今後は、告発状の提出先の6団体による、日本ボクシング連盟への事実関係の確認調査を待たねばならないが、ロンドン五輪の金メダリストで、WBA世界ミドル級王者の村田諒太(帝拳)が、フェイスブックで「そろそろ潔く辞めましょう。悪しき古き人間達、もうそういう時代じゃありません。新しき世代に交代して、これ以上自分たちの顔に泥を塗ることを避けるべきです」と発信したように、もう諸悪の根源である山根会長が自ら身を引くことでしか、現場の指導者、選手、関係者が抱えている問題の解決は無理なのだろう。

(文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)