7グループ、30タイプで読み解く現代のメディアライフスタイル

スマートフォンの普及、各種SNS利用の拡大やネット動画視聴の広がりなど、メディアの多様化と視聴行動の分散化がかつてないスピードで進み、現代人のメディア接触のスタイルの全体像が見えにくくなっています。

メディア単位の接触率や接触時間のデータは、確かにあります。しかし、そのデータは個々の現代人の生活の、どこに位置づければよいのでしょうか? 今回、ビデオリサーチの生活・メディア行動データ「MCR/ex※」に記録された「起きて、外出して、帰宅して、メディアに接触し、寝る」など日々の行動の順序(シークエンス)に着目し、現代人の「メディアライフスタイル」を明らかにしました。

メディアライフスタイルとは、1日(朝昼晩)と1週間(7曜日)の生活行動の中で「いつどんなメディアに接触するか」という観点で見たとき、似通った人々が示す共通パターンのことと定義しています。

「ソーシャル・シークエンス分析」という新たな手法(後述します)を用いた結果、7グループ・30スタイルに分類されました。電通メディアイノベーションラボの美和晃が詳しく解説していきます。

※MCR/ex:調査協力者の24時間の生活行動とメディア接触行動を1週間(7日間)にわたり15分刻みの日記式で記録したデータベースで、ビデオリサーチが1997年から実施している。

 

7グループ、30タイプのメディアライフスタイルを抽出

今回実施した分析の結果、図表1に示すように、関東居住者(12~69歳)は7グループへと大別され、①テレビ中心族(17.7%)、②メディア以外中心族(16.1%)、③月~金外出族(29.1%)、④早寝早起き族(11.2%)、⑤深夜メディア族(15.7%)、⑥外泊・徹夜族(5.3%)、⑦リズム不規則族(4.8%)に分けられました。

それぞれのメディアライフスタイルは、生活リズムの違いにより大きく影響を受けています。日中の在宅率が高いグループ(①・②)、日中の外出率が高いグループ(③・④・⑤)、生活が不規則なグループ(⑥・⑦)の3大グループに分かれます。

7グループをさらに30まで統計分類してみると、1週間×24時間の各時点における新・旧メディアとの関わり方のパターンを反映した、多様なメディアライフスタイルが抽出され、それぞれの構成比が分かってきました。

メディアライフスタイルを描き出すのに適したデータとは

さて、多様なメディアライフスタイルを、どんなデータを使えば導き出せるのでしょうか?

テレビだけでなくパソコンやスマートフォン、タブレットなどのデジタル機器については、調査協力者を得て時々刻々の利用ログデータを取得し、集計分析を行い、実態を把握できます(例えば、「ログデータが明らかにする性年代別アプリの利用実態」参照)。

しかし、新聞も読むしスマートフォンでのニュース閲読にも余念がないシニアへの理解を深めようと思えばどうでしょうか。旧来のメディアも含めて行動を捉える必要があります。また、若いスマートフォン世代にとっても車社会で暮らす上でラジオ(radikoのようなアプリを含め)は引き続き手放せないメディアでしょう。

そこで、今回はビデオリサーチとの共同作業により、同社の調査データベースであるMCR/exを利用して課題に取り組むことにしました。

MCR/exの中には、自宅内・外それぞれ約50ずつの生活・メディア行動の項目があり、調査協力者は15分単位でその時点で何をしていたのかを1週間にわたり詳細に選択していきます。今回は、2017年の東京地区(東京駅から50キロ圏)に居住する男女12~69歳の4971人分の調査データを使用して分析を実施しました。

例えば図表2は、このMCR/exの個人全員の行動を合算し、調査初日(月曜日)の朝5時から次の日の早朝までそれぞれの時点で、自宅内・外のどちらにいて何をしているのかを、積み上げて100%で表したものです。

朝の起床とともに在宅でのテレビ接触行動が立ち上がり、昼12時頃には自宅外でのモバイル利用行動が盛んになっています。夜になると19時頃からは自宅内で、テレビと並びモバイル・PCなどさまざまなメディアの利用が、22時頃までにかけて一斉にピークを記録することが分かります。

同じように、1週間(月曜~日曜)の行動を個人全体で見ると、月曜から金曜までは規則的なメディア接触行動が繰り返し現れます。土曜・日曜は日中の在宅率が高まり、宅内でのメディア接触行動全般が1日を通じて活発に行われていることが分かります。

しかし、これはあくまですべての個人全体について積み上げただけです。この中に、どのようなメディアライフスタイルを持つ人がどのくらいいるのかを、実際の行動データに基づいて見えるようにすることをプロジェクトの目標としました。

メディアライフスタイルを抽出できる(かもしれない)統計手法への体当たり

そこで課題となるのが、この規模の大きい調査データから「メディアライフスタイル」が似通った人々をどのように抽出するか、です。調査協力者1人につき7日×24時間×4(1時間を15分刻みで4区分)=672時点の生活行動やメディア行動のデータから4971人がそれぞれお互いにどの程度似通っているのかを計算したり統計的にグループ分けしたりする手法が必要となります。

そこで、いろいろ探してたどり着いたものが「ソーシャル・シークエンス分析」と呼ばれる手法です。ソーシャルは「社会」、シークエンスは「順序」を示します(これを直訳しても何のことか分かりませんね)。元々は1980年代に生命科学の遺伝子解析のゲノム分野でDNA配列を分析するための「シークエンス分析」というものがありました。それを社会の人々の出来事や状態の変化の順序の分析に応用した手法で、「ソーシャル・シークエンス分析」といわれるようになりました。

ただ、世界中を見渡してみてもソーシャル・シークエンス分析を使って672時点規模のメディア行動の分析を実施した例は見当たりませんでした。日本国内でもこの手法が使われている例が見当たりありません。どんな結果が出てくるのかはやってみなければ分かりませんでした。「もともとDNA関連の分析に使われた手法なのだから4971人×672時点ぐらいのデータだったら扱えるに違いない」という期待を込め“体当たり”のつもりで分析を実施してみることにしました。

次回からは、プロジェクトから見えてきた7グループ30スタイルの特徴的なメディアライフスタイルを毎回取り上げて、ご紹介していきます。

「自分はどのグループやスタイルに一番近いのか」「自分に似たスタイルの人はどのくらいいるのか」という素朴な視点で読んでいただくことで、現代のメディア社会のイメージの全貌が浮かび上がってくることを期待しています。