塚原夫妻、パワハラは断固否定“疑惑”の白旗…本心はどこに? “直接謝罪”で延命を図る思惑か

本心はどこにあるのか。体操の宮川紗江(18)のパワハラ告発を受け、「全部嘘」「黙ってないわ」というゴーマン姿勢から一転、「本当に申し訳ない」と謝罪モードになった日本協会の塚原千恵子女子強化本部長(71)と夫の塚原光男副会長(70)。世論の逆風が強まるなか、宮川への直接謝罪で延命を図る思惑もうかがえる。ただ、パワハラ疑惑そのものについては認めておらず、事態は収束しそうもない。

8月31日に発表した文書では「宮川選手を脅すための発言はしていません」として、高圧的な言動があったなどとした宮川の主張を否定した塚原夫妻だが、今回の声明では「(反論や反撃などの)意図は一切ございません」とし、「自分たちの名誉を少しでも回復したいという私たちの勝手な考えなどのため、さらに深く宮川選手を傷つけた」と平謝り。

宮川の主張を頭ごなしに否定した夫妻の当初の対応には、ニュースやワイドショーも、夫妻に近い一部のコメンテーターを除くと総じて批判的だった。「高圧的な発言ではない証拠」として千恵子氏と宮川の会話を録音した音声を公開しても、その反応は変わるどころか、かえって計画性をにじませる結果となった。

こうした世論を意識してか、謝罪文書でも、テレビ番組の司会者やコメンテーターの意見について「全て真摯(しんし)に受け止めております」とし、千恵子氏が「黙ってないわ」、光男氏が「(宮川の発言は)全部嘘」などと言ったことも、「私たちの感情に任せた自分勝手な発言」だったとした。

逆風が強まるなか、日本協会は3日にスポーツ庁に事情説明。今後、協会のガバナンス(組織の統治)問題にも発展する可能性が出てきた。

ガバナンスの第一人者である久保利英明弁護士は、塚原夫妻がそろって協会内で重要な地位にいたことを問題視する。

「一緒に組織運営することで、健全な牽制(けんせい)が利くのか問題がある。塚原副会長が言うことは、夫が妻を守る発言ととらえられてしまい、信用してもらえない」

久保利氏は協会の対応についても「『塚原対宮川・コーチ』の遺恨試合のようになっているのは、体操に携わる大勢の中高生や大学生らにとって非常に迷惑な話だ。日大(アメリカンフットボール部の悪質タックル)の問題で理事長が出てこないためにオール日大が被害をこうむっているのと似た構図だ」と強調する。

5日には速見佑斗コーチ(34)が記者会見を開く予定だ。塚原夫妻は、宮川だけでなく速見コーチも朝日生命体操クラブに誘っていたとの報道も出ている。

次々と証言が出てくる様子は、女子レスリングで栄和人氏(58)がパワハラ疑惑で強化本部長辞任に追い込まれたケースとも重なってみえる。

こうしたなか、塚原夫妻が謝罪文でこだわりを見せているのが宮川への直接謝罪だ。

「今回の一連の件につきまして、宮川紗江選手に対して直接謝罪をさせて頂きたいと考えております」「もし、私たちに、直接謝罪をお伝えできる機会を頂けるのであれば、宮川紗江選手に対して直接謝罪をさせて頂ければと思っております」など、くどいほど「直接謝罪」という言葉を繰り返している。

その一方で、パワハラ疑惑そのものについては認めたわけではなく、日本協会が設置した第三者委員会の「判断を待ちたい」とするにとどまっている。

評論家の玉木正之氏は「謝らなければ立場が危うくなることが分かったのだろう。スポンサー筋への配慮もあったのではないか。ただ、これで事態が収束することはありえない」と指摘する。今後、夫妻の進退問題に発展しても「一度身を引き復活したこともある人だから、また復帰できると考えているかもしれず、なるべく早く謝罪しておいた方がいいということかもしれない」。

千恵子氏が協会のナショナル強化部長、光男氏が女子競技委員長を務めていた1991年11月の全日本選手権では、千恵子氏が務めていた主任審判の採点に不満を抱いた55人の選手らが集団ボイコットし、夫妻は辞意を表明したが、のちに撤回する騒動もあった。

70代にして、謝罪文で「私たちが未熟であった」と言ってのける大胆さをみせた塚原夫妻。未熟さよりも、したたかさばかりが浮かび上がる。