迷惑度「急上昇」、満員電車の背負いリュック 9年で12位→3位、今や歩きスマホより問題に

電車の中はれっきとした公共空間。にもかかわらず、昼間の電車内では周囲の目を気にすることなく迷惑行為を堂々としている人を、時折、見掛ける。逆に、満員で身動きが取れない朝の通勤列車内では、通常なら気にもならない乗客の振る舞いに腹が立つこともあるだろう。

最近増えているのが、リュックサックやショルダーバッグをめぐるマナーの問題だ。従来、ビジネスマンが使うバッグといえば、手提げのブリーフケースが定番だった。しかし、クールビズの影響などでノーネクタイやジャケットスタイルといったカジュアル化が進むと、ショルダーバッグを肩に掛けたり、リュックサックを背負ったりして出勤する人が増えてきた。

最近では手提げ、肩掛け、背負いというあらゆるニーズに対応する「3WAYバッグ」や、ビジネスシーンにマッチする上品なデザインの「ビジネスリュック」が人気を集めている。これらのバッグは両手がフリーになるため、スマートフォンを使いやすいなどメリットが多い。

人気のリュックが迷惑行為に

しかし、満員電車の中で肩から掛けたり背負っていたりすると、自分では気づかないうちに周囲の乗客に迷惑になることがある。「扉付近の席に座っていると、立っている女性のトートバッグの角が顔にぶつかる」「前に立っていた男性のリュックに押される」といった声はよく聞かれる。

全国72社の私鉄が加盟する日本民営鉄道協会(民鉄協)では、毎年ホームページ上でアンケートを行い、その結果を「駅と電車内の迷惑行為ランキング」として発表している。現行のスタイルでアンケートを始めた2009年から昨年までの9年間の推移を見ると、「荷物の持ち方・置き方」が2009年の12位から2017年には3位に上昇していることがわかる。

このアンケートでは、それぞれの迷惑行為の内訳についても質問を行っている。「荷物の持ち方・置き方」の内訳は以下のとおりだ。

関西の鉄道事業者20社は共同で今年3月、リュックサックのマナーを呼びかけるポスターを掲示した(写真:関西鉄道協会)

この内訳を見ると、荷物の持ち方や置き方のうち、もっとも迷惑に感じるのはリュックサックやショルダーバックの持ち方だということがわかる。こうした状況を受け、関西では今年3月に20の鉄道事業者が共同で「車内でのリュックサックは、前に抱えるか網棚の上に置くなど、他の方のご迷惑にならないようお願いします」というポスターを掲出した。首都圏では各鉄道会社がポスターやステッカーの掲示に加え、アナウンスにより、マナー向上に取り組んでいる。

「スマホ通話」の順位は減少

荷物の持ち方は過去9年間のランキングで順位を上げた例だが、逆に順位を下げた迷惑行為もいくつかある。「ヘッドホンからの音漏れ」は2009年には2位だったが、2017年は6位に下がった。また、「携帯電話・スマホの着信音や通話」も2009年の4位から2017年には7位に下がった。「車内での化粧」も2009年の6位から2017年には11位に下がっている。

これらの行為の順位が下がった理由について、民鉄協・総務広報部次長の日高義文氏は、「周囲への迷惑になっていることが認知されるようになってきた結果ではないか」と分析する。たとえば、携帯電話については東北、関東、甲信越の37の鉄道事業者が「車内ではマナーモードに設定のうえ、通話はご遠慮ください」という共通の案内を行っている。こうした取り組みが実を結んだともいえるだろう。

また、背中のリュックが他人に迷惑をかけていることは自分では気づきにくいが、ヘッドホンの音漏れや車内の化粧は周囲の目が気になって自粛するということがあるのかもしれない。

2009年から2014年までは「混雑した車内へのベビーカーを伴った乗車」という項目があったが、2014年3月に国土交通省が電車内ではベビーカーを畳まなくてもよいというルールを定めたため迷惑行為とみなされなくなり、2015年以降はランキングから消えた。逆に2016年から「歩きながらの携帯電話・スマートフォンの操作」が項目に加わった。なお、痴漢や暴力は迷惑行為ではなく犯罪行為であるという理由からアンケートの項目には含まれていない。

9年間、不動の1位が「騒々しい会話・はしゃぎまわり等」である。これについては鉄道各社が有効な手だてを講じることができていないのが実情だ。「そもそも会話をしている当人同士は自分たちの声が周囲の迷惑になっていることに気づいていないことが多い」(日高氏)。実際、「騒々しい会話」のレベルは車内の混雑状態によって変わってくるため、電車の乗務員も注意しにくい部分もあるようだ。

「座席の座り方」は毎年2位または3位と迷惑行為の上位に位置する。これも内訳を見てみよう。

座席対策の取り組みは不十分?

このように、座席を詰めて座らないという指摘が圧倒的に多い。ただし、「騒々しい会話・はしゃぎまわり等」と異なり、座席については鉄道各社が対策を講じている。ロングシートの幅を少し長くして隣の乗客とぶつからないようにしたり、シートの色分け、仕切り、あるい座面にへこみを設けるバケットシート化など、区切りを設けたりするなどの例がある。

JR山手線の新型車両「E235系」のロングシートには座席分のへこみがある(撮影:尾形文繁)

最近では抜本的な改善策として、座ったときに足が前に出にくくなるシート形状を開発しているメーカーもある。ただ、古い車両からこうした車両への置き換えが進まないと、目に見えるような改善にはつながらないかもしれない。

民鉄協の2018年のアンケートは10月1日から11月30日までホームページ上で実施中。「アンケートを通じて何が迷惑行為なのかを認識し、自分が誰かに迷惑をかけていないかどうかを考えるきっかけになればありがたい」と日高氏は言う。アンケート結果は12月中旬に発表される予定だ。はたして「荷物の持ち方・置き方」の順位は現在よりも下がるだろうか。