経営危機時に密約…日産にルノーが送る「西川追放」の刺客

カルロス・ゴーン容疑者(64)を会長職から解任した日産は、一気にルノー支配を断ち切るつもりだ。自主独立の経営体制を画策している西川広人社長は、ルノーとの資本関係を見直し、経営の自主性を高める方針だという。ゴーンの後任会長も自分たちで決めようとしている。しかし、本当にうまくいくのかどうか。ルノーやフランス政府は黙っていないからだ。

日産の取締役会は会長が招集することになっている。ゴーン逮捕で会長不在の日産は、現取締役の中から早期に決めたい意向だ。さらに、川口均専務執行役員が菅官房長官に日本政府のバックアップをお願いするなど、“脱ルノー”に向けた動きを加速させている。

しかし、43%の日産株を保有し議決権を持つルノーやマクロン大統領は、あくまで主導権を握り続けるつもりでいる。

フランス世論は、ゴーン逮捕を「まるでブルータス」「日本人は恩知らず」とカンカンだ。ルノーもゴーンのことを解任していない。フランスのルメール経済・財務相も25日、ルノーと日産の企業連合のトップは、ルノー出身者が望ましいとの考えを示した。

この先、日産はルノーの影響力を薄めるために、新株発行などあらゆる手段を講じるとみられている。しかし、日産が“ルノー支配”から脱するのはそう簡単じゃない。19年前の“密約”があるからだ。

「どうやら、日産の経営を担う会長などトップクラスの役員は、ルノーから迎えるとの取り決めがあるようなのです。19年前、経営危機の日産にルノーが出資して救済した際に締結されたようです」(自動車業界関係者)

経営危機の時、手を差し伸べた恩をないがしろにされないようルノーは手を打っていたのだ。何より、ルノーが日産株の43%を押さえる大株主なのは紛れもない事実だ。ルノーは日産に対し、ゴーン以上の強硬派を送り込んでくる可能性がある。果たしてどんな役員を送り込んでくるのか――。経済ジャーナリストの小宮和行氏が言う。

「ルノーやフランス政府にとって日産ほどおいしい提携先はありません。当然、日産との関係を強化することが“新役員”のミッションです。今は、ゴーン容疑者の司法の行方を注視していますが、もし、ゴーン容疑者の犯罪が悪質ならば、穏やかな統治型の役員を送ってくるでしょう。逆に、ゴーン容疑者が不当に扱われ、日産や日本の司法がけしからんということになれば、フランス世論も許さないでしょうから、強硬派の役員を送ってくることもあるでしょう」

これまで、ゴーンが日産・ルノーの“緩衝材”になっていた面もある。ゴーン追放で、日産は主導権を握るどころか、強硬派刺客の下、ルノーに完全支配されるかもしれない。