北海道沖で超巨大地震発生確率“40%”…地層に隠された痕跡を追え

北海道で超巨大地震発生確率「最大40%」

9月に起きた北海道胆振東部地震から2カ月以上が過ぎても、北海道内にはいまだ大きな爪痕が残されている。しかし、実は北海道にはこの地震を遥かに上回る、もう一つの巨大地震によるリスクが迫っている。

それは、千島海溝沿いで起きると想定されている超巨大地震とその津波被害。

千島海溝沿いで発生する“超巨大地震“の確率は「最大40%」とされている。 © 株式会社フジテレビジョン 千島海溝沿いで発生する“超巨大地震“の確率は「最大40%」とされている。

北海道東部沖で深く沈み込む千島海溝で、2つのプレートが激しくぶつかり合いひずみが蓄積。

東日本大震災クラスの超巨大地震が切迫している可能性が高いと言われている。

2017年、国はこの超巨大地震が今後30年間に起きる確率は「最大で40%」と発表。しかしこの地域は過去の地震の記録が少なく、詳しいことが分かっていないのが現状だ。

地層の痕跡が示す津波…専門家「次はそろそろ」

地層に残された過去の津波の痕跡を調べることで、今後発生する超巨大地震がどういう津波を起こすのか、研究を続ける北海道大学 地震火山研究観測センターの西村裕一准教授。

10月にも大樹町で調査活動を実施した。

北海道大学 西村裕一准教授:

津波堆積物は地震の長期予測に一番重要なものの1つ。1メートル掘れば、5000年分ぐらいの地層が見える。

地層の痕跡から、今後起こりうる津波を割り出そうとしている西村准教授 © 株式会社フジテレビジョン 地層の痕跡から、今後起こりうる津波を割り出そうとしている西村准教授

特殊な器具を地面に打ち込むことで、地層の形を壊さずきれいに採取することができるという。

北海道大学 西村裕一准教授:

一番目立つのは、この白とオレンジ色のところ。(白は)これが1663年に有珠山から降ってきた火山灰。(オレンジは)1667年に樽前山から降ってきた灰。薄いが砂の層がある、おそらくこれが津波。

地層には火山灰のほかに、津波の堆積物である砂の層がある。 © 株式会社フジテレビジョン 地層には火山灰のほかに、津波の堆積物である砂の層がある。

この砂を含んだうすく白い層が、津波の堆積物。地層を詳しく分析することで過去に、超巨大地震がどのくらいの頻度で発生していたか割り出す事が可能となる。

北海道大学 西村裕一准教授:

3000年ぐらい前から300年ぐらい前までの間に、少なくとも3回は津波が来ているかなと。ポン、ポン、ポンと来て、今度はこっちの上に砂の層が来ないと歴史としてはおかしい。この間隔だと次はそろそろかなと見える。

「次はそろそろ」西村准教授は、地層から津波を分析する。 © 株式会社フジテレビジョン 「次はそろそろ」西村准教授は、地層から津波を分析する。

地震が起きた年代や規模を正確に割り出すには広い範囲の地層データが必要である。千島海溝の地震の場合、北方領土周辺での地層採取がカギとなる。

西村准教授は今夏、国後島で地層を採取。 © 株式会社フジテレビジョン 西村准教授は今夏、国後島で地層を採取。

北海道大学 西村裕一准教授:

私たちができることは『事実』を調べること。津波は過去にどういう風に起きているのか、できるだけ明らかにする。

国は、千島海溝沿いの超巨大地震が切迫していると警告しているが、具体的な津波の規模などは明らかにしていない。このため各自治体とも戸惑いを見せるなか、行政の対応を待たず市民が中心となって対策を急ぐ例が増えている。

避難設備めぐり市との議論が平行線…住民危機感あらわ

太平洋に面し、海抜5メートルほどの低い土地に住宅が並ぶ釧路市大楽毛(おたのしけ)地区。北海道が6年前に出した予測では、高さ10メートル級の津波が来るとされ、ほぼ全域が浸水するとみられている。

釧路市大楽毛地区。海抜5メートルほどの低地に住宅が並ぶ。 © 株式会社フジテレビジョン 釧路市大楽毛地区。海抜5メートルほどの低地に住宅が並ぶ。 高さ10メートル級の津波で全域が浸水するとみられている。 © 株式会社フジテレビジョン 高さ10メートル級の津波で全域が浸水するとみられている。

町内会の防災担当者も危機感をあらわにする。

大楽毛連合町内会 土岐政人さん(67):

逃げる場所をたくさん確保しておくというのが必要になる。

住民は従来の避難所のほか、高い建物に非常階段を作るよう釧路市に要請。新たに中学校の屋上を避難所として使えるようにした。しかし…

大楽毛連合町内会 土岐政人さん(67):

この距離ですから津波が来たら一気に…。

避難タワーをめぐり、市との議論は平行線のまま…。土岐さんの心配は募る。 © 株式会社フジテレビジョン 避難タワーをめぐり、市との議論は平行線のまま…。土岐さんの心配は募…

2000人ほどが暮らす沿岸部の南地区。津波到達までの30分間に歩いて避難する事ができない、いわゆる「避難困難地域」だ。

地元は、13メートル級の津波避難タワー3基の建設を要望。

しかし釧路市は「国による詳細な津波想定が出る前に億単位の費用をかけた整備は困難」として平行線が続いている。

大楽毛連合町内会 土岐政人さん(67):

ただ地震の方は待ってくれないのでね…。いつ来るかわからない。住民としては北海道が出している数値があれば、それに向けて動いてほしい。

“抜き打ち“避難訓練実施 …「自分の命は自分で守る」

独自の防災対策で命を守ろうという地域もある。

約130人が暮らす十勝の広尾町の音調津(おしらべつ)地区。北海道の予測では、地震の30分後に20メートルを超える津波が来るとされ、道路の寸断により「陸の孤島」になるとみられている。

広尾町音調津地区。約130人が暮らす。 © 株式会社フジテレビジョン 広尾町音調津地区。約130人が暮らす。 20メートルの津波がくると、「陸の孤島」となるとみられている。 © 株式会社フジテレビジョン 20メートルの津波がくると、「陸の孤島」となるとみられている。

もともと小学校のグラウンドだった場所は、今はヘリポートとして活用されている。孤立に備え住民自ら芝を植えて整備した。

さらに、発電機やポンプなどを搭載した災害救助用の高性能消防車も配備。

極めつけは避難訓練について、事前に日時を知らせず「抜き打ち」で行うという徹底ぶり。なぜここまでするのか。

事前に日時を知らせない“抜き打ち“訓練が行われる。 © 株式会社フジテレビジョン 事前に日時を知らせない“抜き打ち“訓練が行われる。

音調津 自主防災会 上野雅彦会長:

住民は避難する準備をして、(事前に告知すると)車に乗って待っているか、先に避難場所に行っている人もいる。避難訓練やっている意味がない。この地区から一人の犠牲者も出さないよ、自分の命は自分で守るんだよと。

「一人の犠牲者も出さない」。上野さんは力を込める。 © 株式会社フジテレビジョン 「一人の犠牲者も出さない」。上野さんは力を込める。

犠牲者を出さないため何ができるのか―。上野さんたちは高齢者や歩行困難な人の名簿を作成し避難を手助けする担当者を決めた。

さらに、1秒でも早く避難を呼びかけられるよう放送設備の電源は入れたままにしてあるという。

常に最悪の事態を想定することが命を救う秘訣だと上野さんは考えている。

音調津 自主防災会 上野雅彦会長:

なんぼやっても(防災対策は)キリがないのさ。住民の方は孤立という事を考えて行動してほしい。

北海道大学の西村准教授によると、津波防災のポイントは…

1.警報が出たらまず逃げる

2.持ち出すものを決めておく

3.家を出るまで早く

津波はとにかくどれだけ早く逃げることができるのかが大事だ。警報が出たら、まず逃げ始める。起きた瞬間から避難所までどれだけ短縮できるかを考えておく必要がある。