<鳴子温泉>「泊食分離」で地域活性化 地元手料理届けるケータリング事業続々

大崎市鳴子温泉で、温泉旅館などに手料理を届けるケータリングへの事業進出が相次いでいる。「地元ならではの料理」を旅行客に提供するのが狙いで、訪日外国人旅行者(インバウンド)や長期宿泊者の需要も見込む。鳴子の温泉街の新たなサービスとして注目を集めそうだ。

鳴子温泉の川渡地区公民館に2日、6種類約50個のおむすびを盛り付けた二つの大おけが届いた。ラオスから訪れた子どもたちと地元小学生の国際交流イベント会場に運ばれ、昼食に提供された。
イベントの準備を担当した旅館「みやま」の館主板垣幸寿さん(63)が注文した。みやまはケータリングを月2、3回利用。「コメは地元のゆきむすび、器は地元職人作のおけや木皿で話題が膨らむ。国、年代を問わず喜ばれる」と魅力を語る。
ケータリングは地元の飲食店「むすびや」が2017年5月ごろ始めた。これまでに4軒の温泉旅館、地元の観光イベントなどに提供した。料金は1人500円程度。
飲食店を運営する大崎市のNPO法人「鳴子の米プロジェクト」理事長の上野健夫さん(59)は「サービスが地域で認知されるようになった。さらに売り込みたい」と意気込む。
鳴子温泉では、地元農家らが地場産品の里山料理をケータリングする「農(のう)ドブル」も話題だ。18年7月にサービスを開始し月3回程度、20人以上の団体客に手料理を振る舞っている。料金は1人5000円。提供旅館は1軒だが今後、他の旅館にも売り込む考えだ。
かつて温泉旅館は豪華な夕食付きの1泊2食が定番だった。近年は個人・家族旅行、長期宿泊、インバウンドなど低価格帯の需要が増加しており、旅館業界では団体・宴会向けサービスからどう変革を図るかが課題となっている。
観光庁の有識者検討会が17年夏にまとめた観光産業振興に関する報告書は、宿泊サービスと料理提供を分ける「泊食分離」を旅館と飲食店などの連携による地域活性化策として提言している。

<観光地全体潤う/徳江順一郎東洋大准教授(観光学)の話>
泊食分離は宿泊客の回遊性が高まり、観光地全体が潤う。家族経営で人手の足りない旅館は宿泊に特化できる。ホテル業界では、テナントに飲食を委託する分業が進む。温泉街も泊食分離などによるサービスの多様化が求められるだろう。