キャッシュレス化が開く「パンドラの箱」

あなたがどんな暮らしをしているのか。どこに行き、何を買ったのか、信用される人かどうか。こんな個人情報が丸裸にされる時代が、もう始まっている。

「東京の戸越銀座商店街にうかがい、キャッシュレス決済を体験しました。最初にコンビニでプリペイドカードを作ったんですが、店頭であっという間に出来上がり、近所の魚屋さんで刺身を買うのに使いました。本当に便利でした」

 こうツイッターでつぶやいたのは安倍晋三首相。2月2日に商店街を訪れ、電子マネーやQRコードによる決済をアピールしたのだ。政府は今年10月の消費増税への批判を避けようと、キャッシュレス決済をすれば、ポイント還元をする方針だ。

 小銭を持ち歩かなくてすみ、ポイントもたまるとなればいいことだらけのように見えるが、実は落とし穴がある。様々な個人情報が保存され、それをもとに個人の「信用度」が勝手に判断されてしまう。キャッシュレスは便利さと引き換えに、超監視社会という「パンドラの箱」を開く。

 消費生活評論家の岩田昭男さんはこう指摘する。

「これまでは買い物でポイントを与えることが中心でした。これからは信用スコアが社会の根幹になり、支払い能力などで個人を数値化し、格付けする時代になるのです。中国ではすでに進んでいます」

 いままでの信用スコアは、借りたお金をきちんと返済しているかどうかといった、狭い範囲で判断していた。キャッシュレス化によって、個人の生活を包括的に分析でき、スコアの精度は高まる。評価が低い人は、お金を借りられないだけでなく、就職や転職などで不利になる可能性もある。

 中国ではネット通販大手のアリババグループが、信用スコアのサービスを2015年に開始。数段階のゾーンに分類、高い人ほどいろいろな特典を受けられる。

 日本でも、ヤフーやLINE(ライン)、メルカリといったIT関連企業が信用スコア事業に力を入れる。いつ、どこで何を買ったのかなどの情報が蓄積され、個人の好みや性格まで分析できるようになる。

 最近、ポイントカード運営会社などが、利用者の個人情報を捜査当局に任意で提供していることが発覚。裁判所の令状がなくても、警察などは個人の生活を監視できるのだ。

 消費増税で、キャッシュレスが浸透するのは間違いない。超監視社会はすぐそこまで来ている。(本誌・浅井秀樹)