桜田五輪相「がっかり発言」で考える“切り取り報道”の罪 TV番組制作スタッフの本音

批判派と擁護派で大激論

 産経新聞が2月14日(電子版)に掲載した「『がっかり』だけではなかった 桜田五輪相発言全文」の記事が、大きな反響を呼んでいる。

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 現在、特にネット上では「がっかり」発言を巡り、批判派と擁護派がかまびすしい。堀江貴文氏(46)やウーマンラッシュアワーの村本大輔(38)が、マスコミ批判を行って話題になっている。

 だが、まずはこれまでの経緯を、改めて確認させていただこう。桜田義孝五輪相(69)がマスコミの“ぶら下がり”に応じたのだが、そこでの発言が問題視されたのだ。

 丁寧に報じたのがNHKだ。まず2月12日、「池江選手・白血病公表 五輪担当相 『金メダル期待の選手 元気な姿見たい』」と報じた。全文を引用させていただくが、批判的なトーンは感じられない記事だ。

桜田五輪相

《桜田オリンピック・パラリンピック担当大臣は、記者団に対し、「金メダル候補で、日本が本当に期待している選手なので、がっかりしている。早く治療に専念して頑張ってもらいたい。また、元気な姿を見たい。1人、リードする選手がいると、みんなつられて全体が盛り上がるので、その盛り上がりが若干、下火にならないか心配している」と述べました》

 これが翌13日になると、NHKは「池江選手・白血病で五輪相『がっかり』発言 国民代表『大臣のことばか 罷免を』」と報じる。

《競泳の池江璃花子選手が「白血病」と診断されたことを明らかにしたのを受けて、桜田オリンピック・パラリンピック担当大臣がきのう、「がっかりしている」などと述べたことに対し、国民民主党の玉木代表は「大臣がかけることばなのか」と批判し、桜田大臣を罷免するよう求めました》(註:原文にある池江璃花子選手のふりがなを削除)

 世論も非難囂々となり、桜田大臣は陳謝する。これをNHKは同じ13日、「池江選手・白血病 五輪相『がっかり』発言を陳謝し撤回 辞任は否定」と報じた。

《桜田大臣は、きょうの衆議院予算委員会で、「突然の話にショックを受け、率直に、残念である旨を発言をした。発言の中で、『がっかりしている』、『盛り上がりが若干、下火にならないか心配だ』という部分については配慮を欠いたと思い、お詫(わ)びをし、撤回したい」と陳謝し、撤回しました》

 ところが、冒頭で紹介した産経新聞の記事が14日に報じられると、「マスコミの編集が過剰だったのではないか」と指摘する動きも顕著になってきた。その筆頭格がホリエモンとウーマン村本というわけだ。

 それでは産経新聞の記事から、桜田大臣の発言部分をご紹介しよう。まずは「がっかり」の部分だ。

《本当に、そう、金メダル候補ですからねえ。日本が本当に期待している選手ですからねえ。本当にがっかりしております。やはり、早く治療に専念していただいて、頑張っていただきたい。また元気な姿を見たいですよ。そうですね》

テレビ局も「全文公開」を検討

 次は「下火」の部分だ。

《いやあ、日本が誇るべきスポーツの選手だと思いますよね。われわれがほんとに誇りとするものなので。最近水泳が非常に盛り上がっているときでもありますし、オリンピック担当大臣としては、オリンピックで水泳の部分をね、非常に期待している部分があるんですよね。一人リードする選手がいると、みんなその人につられてね、全体が盛り上がりますからね。そういった盛り上がりがね、若干下火にならないかなと思って、ちょっと心配していますよね。ですから、われわれも一生懸命頑張って、いろんな環境整備をやりますけど。とにかく治療に専念して、元気な姿を見せていただいて、また、スポーツ界の花形として、頑張っていただきたいというのが私の考えですね》

 全文を読んだ後、どのような感想を持たれただろうか。「やはりマスコミの編集はおかしい」と疑問視される方も、「全文を読んでも、『がっかり』と『下火』の表現は適切ではない」と判断される方も、同じくらいおられるのかもしれない。

 だが、民放キー局の制作スタッフは、「個人的な意見としては、特にテレビニュースは、問題のある編集だったと考えています」と明かす。

「乱暴で誤解を招く編集だった、と言われても仕方ないでしょう。なぜ、あんなことが起きたのかといえば、一番の理由は時間です。特に夕方のニュースは、非常に短い時間で、できる限り多くのニュースを報じる必要があります。『がっかり』の前後を伝える尺がなく、そこだけを切り取ったり、ナレーションで処理してしまったりするのです。民放はもちろん、NHKも例外ではありません」

 これが朝の情報ワイドショーの場合、大きなニュースは“1つのコーナー”として相当な時間が与えられる。こうした時は、夕方のニュースより長い引用が可能だという。

「にもかかわらず、ワイドショーが乱暴にコメントを切り取ることも珍しくありません。これは編集担当のセンスに問題があるからです。『ここはカットしていいだろう』という安易な判断が、ミスリードを招く。あってはならないことですが、テレビの現場では決して珍しいことではありません」(同・制作スタッフ)

 この制作スタッフは、「堀江さんや村本さんの批判は確かに一理あります」と打ち明ける。

「実際、全文を公開しても、『がっかり』や『下火』に違和感を覚える視聴者は、決して少なくなかったと思います。一方で『言葉の使い方を間違えただけで、全文を読めば、桜田大臣は池江さんを批判する意図はなかった』と擁護する人も多かったはずです。それが、発言の一部を切り取った編集で、批判派ばかりになってしまった。テレビ局は桜田大臣の発言を正確に報じ、視聴者の皆さんが考える契機にしてほしかった。が、荒っぽい編集が混乱を巻き起こしてしまったのです」

 テレビ局によるVTRの編集が問題視されることが増えてきた。キー局側も改善策を考えており、「全文紹介」の検討が始まっているという。

「最近、新聞記事やSNSの書き込みを報道番組やワイドショーが紹介する際、全文を映したり、読み上げたりすることが主流になってきました。これはミスリードを防ぐという意味で、とても価値ある取り組みだと思います。あおり運転や教師の体罰を撮影した動画などにも、類似の問題が起きることがあります。動画のノーカット配信も検討が始まっており、今後は“編集をできるだけしない”で放送するのが主流になっていくと思います」

 正直言って今回の問題は、桜田大臣がボキャブラリーの乏しい人物であることを露呈したということに尽きる。しっかりとした報道を期待したい。

週刊新潮WEB取材班