政治、メディア、介護の現場でも 財務次官セクハラ1年で院内集会

テレビ局の女性記者が当時の財務事務次官にセクハラ被害を受けた問題から4月で1年。これを機に東京・永田町の衆院第1議員会館で15日、職場でのセクハラ問題を考える院内集会が開かれた。政治、メディア、介護、接客業などの各職場や働く前の学生に対するセクハラの実態が報告された。【中川聡子/統合デジタル取材センター】

ハラスメント法規制に尻込み

 1年前の前財務次官セクハラ発言問題を受けて、厚生労働省は今国会に、職場でのセクハラやパワハラなどの防止対策強化を企業に求める男女雇用機会均等法などの改正案を提出した。「セクハラ禁止」の文言は盛り込まれず、事業主が措置を講じるのは雇用関係がある労働者が対象となっている。

 6月には国際労働機関(ILO)総会で、職場でのセクハラを含むハラスメントや暴力を禁止する初の国際基準となる条約が採択される見込み。日本は条約制定に消極的で、批准するかは不透明だ。

 この日の院内集会は新聞労連などで作る「日本マスコミ文化情報労組会議」(MIC)が開いた。同会議長の南彰・新聞労連委員長は「1年間の反省を踏まえ、被害が実効性ある形で救済される法制度、ILOの条約批准への後押しとなるよう議論したい」とあいさつ。職場や就活での被害と職場の対応に関するウェブアンケートへの協力を求めた。

接客業や介護現場でセクハラ横行

 集会冒頭、労働現場でのセクハラ被害の実態が報告された。

 埼玉大の金井郁准教授は、接客業や営業職の被害に関する調査を引き、「企業が顧客重視を強調し、被害が放置されてきた。企業が顧客とどういう関係を築き、社員の安全配慮義務を果たすのか考えてほしい」と提言した。

 介護職員の寺田典子さんは「訪問介護でも施設でも悪質なセクハラがある。外国人の女性職員に卑わいな言葉を投げる利用者もいて、今後被害が深刻になるのではないか」と懸念を語った。

学校で教育実習生の性被害も

 川村学園女子大の内海崎(うちみざき)貴子教授は、教育実習生の被害を報告した。「教育実習生が性関係を迫られ、教員になるのを断念したケースもある。学校は教員と児童生徒に強力な権力関係があり、教員に加害者意識が乏しい。ジェンダー問題に関する人権教育が学校で必要だ」と強調した。

 ネットメディア「ビジネスインサイダー・ジャパン」の竹下郁子記者は、就活セクハラの取材経験から「就活生もハラスメント法規制で守る対象にすべきだ」と話した。

 性的少数者(LGBTなど)の当事者団体を束ねる「LGBT法連合会」の池田宏共同代表は「性的指向や性自認について嫌がらせを受けたり、採用を拒否されたり、解雇されたりというケースがある。こういった差別や、同意なく性的指向や性自認を暴露し差別を招く『アウティング』も法規制の対象にしてほしい」と訴えた。

司法修習時代に体を触られる

 政界や法曹界にも深刻な被害がある。

 東京都町田市の東友美市議は、選挙活動や当選後に街頭で抱きつかれたり、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で議員活動に関係ないセクハラや誹謗(ひぼう)中傷に遭ったりする実態を報告した。

 大阪弁護士会の橋本智子弁護士は、司法修習生時代に教官から体を触られるなどの被害を受けたことを告白。弁護士から女性依頼者や事務員へのセクハラも問題視されていると報告し、「性被害を『魂の殺人』と呼ぶのをやめよう。私たちの魂は死んでいない」と訴えた。

 メディアの現場からも、女性管理職比率の低さや「足もとの被害」を放置してきた現状を変えようという訴えが相次いだ。財務次官の問題をきっかけに結成された「メディアで働く女性ネットワーク」の林美子代表世話人は「女性がつながり、互いに気持ちを語り合う場が必要。被害者バッシングの現状は今もある。どんな人も守られる法整備を求める」と訴えた。