「ワンセグ携帯所持は契約義務アリ」の判決が最高裁で確定。

地デジを見ることができるワンセグ携帯を持っているとNHKと受信料契約を結ぶ義務はあるのかが問われた裁判で、最高裁は3月12日、昨年下された二審の判決を支持し、「契約する義務はない」とした原告の主張を退けた■「ワンセグ使ってない」で、契約は拒めない

地上デジタル放送をスマホなどで視聴できるサービス「ワンセグ」。では、その機能がついたスマホを購入したら、NHKと受信契約を結ばなければならないのだろうか?

3月12日、NHKに対し「その義務はない」などと訴えを起こしていた4件の訴訟について、最高裁判所は原告の上告を棄却。つまり、司法は「ワンセグ携帯所持者はNHKと契約する義務がある」という、最終的な判断をしたのだ。

関口法律事務所の関口郷思(さとし)弁護士は次のように解説する。

「一連の裁判で争われたのは、放送法第64条第1項の『受信設備を設置した者は、協会(NHK)とその放送の受信についての契約をしなければならない』にある『設置』の文言が、ワンセグ携帯の所持にもあてはまるかどうかでした。

一審ではワンセグ携帯の所持は『設置』にあたらないとしてNHKの主張を退ける判決も出ましたが、二審は昨年、過去に携帯型ラジオの所持も『設置』にあたると解されていた経緯などを挙げ、『設置』に含まれるとする、原告敗訴の判決を下したのです。

今回の決定によりスマホ、ガラケーを問わず、ワンセグ対応の携帯電話利用者はNHKとの受信契約を行なう義務があることが明確になりました」

しかし近頃は、動画サイトを利用する人が増えていて、スマホでワンセグ放送を見る人なんてどれだけいるのか。まったく見ない人でも、契約しなくちゃダメなのか?

「はい。テレビと同様、スマホを購入した時点で『設置』と見なされますから、ワンセグ機能を使っていないという理由で契約を拒むことはできません」(関口氏)

マジかー。だったら、ワンセグのアプリを削除すればいいんじゃ? だがモバイル研究家で青森公立大学准教授の木暮祐一氏は次のように語る。

「プリインストール(出荷時にあらかじめインストールされている状態のこと)なので、一般的には削除はできません。『アプリを削除したからワンセグは視聴できない』と主張することはできないでしょう」

無理かあ……。そもそも、なんでスマホにワンセグ機能が搭載されることになったのか?

「初めて搭載された携帯電話は、2005年12月に発売されたauの『W33SA』です。この時期、キャリア各社は今で言うガラケーの多機能化を競っており、通信料収入に結びつかないワンセグ受信対応も、利用者への訴求ポイントでした。そしてその後、新機種にほぼ搭載されることになります。スマホのワンセグも、この流れを受けてのものです」(木暮氏)


カーナビもほぼすべてが地デジ視聴できる。NHKの規約に従えば受信契約の義務はある。今回の裁判は携帯電話に対するものだが、思わぬ余波もある?

ちなみに、同じく地デジ視聴が可能なクルマのカーナビも対象になるの?

「カーナビなど車載テレビについても同様です。NHKの規約でも対象となることが前提となっています」(関口氏)

ガーン! ひょっとしてクルマにナビ、スマホを複数台持っている人は、その分契約をしなくちゃいけない!?

「いえ、『受信契約は世帯ごとに行なう』と規約で定められているので、自宅のテレビでNHKと契約していれば、何台スマホを持っていても、カーナビ付きのクルマが何台あっても、新たに契約する必要はありません。今回、明確に契約の対象になったのは、自宅にテレビはないけれど、ワンセグ携帯は持っているという人です」■NHKはウハウハ!? iPhoneは販売増?

一方、関口弁護士が今回の最高裁判断で注目するのが、会社など事業者への影響だ。どういうことか?

「事業所など住居以外の場所にテレビを設置する場合、受信契約は設置場所ごとに行なわなければなりません。つまり、オフィスビルの複数の場所にテレビを設置している場合は、それぞれ契約が必要になるのです。従業員にワンセグ視聴可能なスマホを支給している会社は、その台数に応じて契約を結ぶ義務が生じます」(関口氏)

会社で複数契約する場合、2契約目以降は事業所割引が適用され半額になる。地上波で年払いの場合、月あたりの受信料は606円だ。例えば、従業員1000人にスマホを支給している会社なら、ひと月60万6000円、年間727万2000円になる!

「これは法的な義務ですから、企業はコンプライアンス上、避けて通ることはできないのではないでしょうか。社用車(のカーナビ)も含めれば、その負担はいっそう大きくなります」(関口氏)

ではNHKはウハウハ!? ただし、個人も含めて受信料の負担を避けたいなら、その方法は残されている。そう、「ワンセグ非搭載スマホ」を選べば払う義務はないのだ!

「キャリアから発売される国産Androidスマホはほとんどがワンセグ対応ですが、京セラやシャープなど一部の低価格モデルは非搭載です。サムスンのギャラクシーシリーズやLGも、多くがワンセグ機能付きですね。キャリアの人気モデルで非搭載のものを探すとしたら、やはりiPhone一択になるでしょう」(木暮氏)


昨年後半から今年にかけて、3キャリアとサブブランドが発売した主なワンセグ非搭載のスマホをピックアップした。数はそれほど多くないが、iPhone以外にも選択肢はある!

では、カーナビはどうなのか? カーAV評論家の会田 肇(あいだ・はじめ)氏はこう指摘する。

「現在、国内で販売されているカーナビは一部を除き、ほぼすべてにテレビの視聴機能があります。その機能だけを無効にすることは事実上不可能で、不要ならカーナビごと装着をあきらめるしかありません。また、新車に標準で装着されている場合は外すことは無理でしょう。今のところカーナビに受信契約を求められたという話は聞いたことがありませんが、これからどうなるか興味がありますね」

果たしてNHKは、これまでよりもスマホやカーナビの受信契約に前向きな態度で臨むのか?

「NHKがすぐに何か行動を起こすとは思いません。対象となるすべてのスマホやカーナビから徴収すれば、巨額の増収になるかもしれませんが、その分世論の反発も強くなると考えられるからです。NHKは世論の動向を見つつ、場合によってはスマホ向けの新たな割引を設けるといった、新たな契約プランづくりを進めるのではないでしょうか」(関口氏)

「今回の裁判は、NHKにしてみれば”売られたケンカ”だったという事情もありますが、スマホが対象となったのは実にばかばかしいことです。もしワンセグ対応モデルを購入しない利用者が増えたら、テレビ業界全体にとってもマイナスです。スマホ業界においても、国産メーカーには打撃となる一方で、iPhoneはもちろんSIMフリー端末を積極的に展開する海外メーカーには追い風になります」(木暮氏)

んー、iPhone独走は加速し、NHKは何もせずに受信料収入アップ……と、結局なーんもいいことない?

取材・文/植村祐介 写真/ピクスタ