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簡単には喜べない? 31年ぶりに再開の「商業捕鯨」が抱える問題

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今年7月から…31年ぶりに再開「商業捕鯨」

7月1日から日本で商業捕鯨が31年ぶりに再開した。

日本では31年の間、調査の名目として捕鯨を行い、わずかな鯨肉しか流通していなかった。商業捕鯨で鯨肉がより出回るようになるとも言われているが、果たして喜ばしいことだけなのだろうか。

【画像】刺身や竜田揚げで知られる鯨料理

古式捕鯨発祥の地として400年の歴史を誇る和歌山県・太地町。
出港の準備を進める一隻の捕鯨船。この船は7月から商業捕鯨を行う。

漁師:
商業捕鯨の再開で気合の入り方も違うし、鮮度のいい肉を全国のみんなに食べてもらえればどんどん鯨を食べてくれる人間も出てくるかなと。

商業捕鯨の再開は、町の31年ぶりの悲願だ。
昭和初期から日本は南極海に乗り出し、捕鯨が盛んになった。当時、牛肉や豚肉よりも安く手に入った鯨の肉は、学校給食に出るほど人々の間に広まった。

1951年日本がIWC国際捕鯨委員会に加盟した後、欧米諸国が「資源の保護」を掲げて反捕鯨の風が強まった。そして1988年、大型の鯨を捕る商業捕鯨は中止になったのだ。

現在日本は調査捕鯨として鯨を捕っている。調査のため肉質の良い大型の鯨ばかりを捕ることはできず、調査過程で余ったわずかな肉がスーパーなどで売られているのだ。

そして、去年12月26日、日本は大きな決断をした。

菅官房長官:
来年7月から商業捕鯨を再開することとし、国際捕鯨取締条約から脱退することを決定しました。

商業捕鯨の再開を訴え続けてきたが叶わず、鯨の数が一定数回復したとしてIWC脱退を決めたのだ。クジラ肉、食べる人は減っている

刺身や竜田揚げで知られる鯨料理。
商業捕鯨の再開で鯨の肉がより出回るようになると言われているが…

ーー鯨肉食べようとか?

女性・19歳:
ないです。

ーーなぜ?

女性・19歳:
焼き肉があるから。焼肉の方が食べたいなって。

男性・27歳:
(鯨肉は)なくなっても困らない。常にあるものじゃないので。

女性・87歳:
戦後良くたべたよ。お肉があんまりなくて鯨みんな食べた。

ーー食べなくなった理由は?

女性・87歳:
豚肉・牛肉が安く入るやん。

水産庁によると、最盛期は20万トンもあった鯨の消費量は、近年50分の1程度まで落ち込んでいる。価格も上がり、他の肉と比べても消費量の差は歴然としている。

再開で国からの補助金も無くなる?後継者不足も…

記者リポート:
国として悲願の商業捕鯨の再開、しかし、漁業関係者の間では手放しで喜べない状況があります。

30年営業する鯨肉販売業者は…


鯨肉販売業者:
不安やで不安。やってみなわからへん。今まで供給しただけの分が捕れるのか、価格問題、せっかく今安定しているのに。

調査捕鯨は南極海や北太平洋で500頭ほどの捕獲枠を決めた上で、国から年間約50億円の予算が出されていた。一方、商業捕鯨は領海内と排他的経済水域に限定され、捕獲頭数も制限したまま行うことに…
今後、国の補助もなくなるので、需要もなく鯨も取れなければ、商売として成り立たないことになる。

さらに、一族で最後の鯨捕りとなった漁野あつやさんは、後継者不足のため捕鯨が続けていけるのか心配している。

元南氷洋捕鯨の猟師・漁野あつやさん(79):
私は憧れで船に乗ったね、かっこいいと思った。船に乗る子供が少なくなったからね。続いてほしいけど、続いてくれる人がどれだけいるのか。私にしても捕鯨は大きな財産だったけれど、町も財産だったんじゃないか。この街がうるおったからね、伝統的なものだと思うね太地町の。捕鯨再開で…欧米からの非難も?

鯨とともに生きてきた太地町は、他にも大きな悩みを抱えている。

9年前、アメリカの自然保護団体が太地町のクジラ・イルカ漁を隠し撮りし、批判的に描いた映画「ザ・コーブ」。多くの反響を呼び、反捕鯨団体がこぞって町に現れるようになっているのだ。

元AP通信の記者で、この映画がきっかけで町を訪れたアメリカ人のジェイ・アラバスターさん(44)。
記者としてこの問題の取材をした後、捕鯨文化をさらに知りたいと思い、会社を辞めて太地町で暮らすようになった。

ジェイさん:
アメリカ、ヨーロッパの多くの人たちからみると(商業)捕鯨は古いありえない、あくまでも批判はあると思う。鯨は自然のシンボルとして残すべきだと一般の外国人は思っている。

ジェイさんは外国人留学生を招いて街を巡るツアーを開いてきた。
地元の人からの話を聞き、「ザ・コーブ」では映し出されていない文化を肌で感じてもらうためだ。

ジェイさん:
太地は世界で活動家が勝手に発信している。活動家が発信すると、人の顔とか町の綺麗さとか文化とか伝わらない。表現は自由ですけれど、別の太地があるよってことを伝えたい。

この日ジェイさんは、活動家の友人に「商業捕鯨の再開」について話を聞いていた。

ジェイさん:
商業捕鯨再開するけど、どう思う?

元反捕鯨団体女性:
私が思うに…日本が商業捕鯨をすることはしょうがないことだわ。日本の周りの海だけでやって、他の国の周りの海でやらないならいいんじゃないかしら。

彼女のように商業捕鯨に一定の理解を示す活動家もいる。しかし、多くの活動家は伝統や文化を知らないまま批判を展開しているのだ。


ジェイさんにとって特別な場所がある。

同行したその場所は、漁師たちが年に一度、鯨に感謝をささげる供養碑だ。

ーー太地町の供養文化はどう思う?

ジェイさん:
やっぱり尊敬しますね。いただいた命に感謝を表すのは立派だと思う。日本人にとっては供養は当たり前、外国人にとってはある程度説明しないと理解できない。

商業捕鯨の再開。食文化と伝統を守り続けることはできるのだろうか。