地熱、風力…。北欧諸国に学べ! 震災復興のカギはグリーンエネルギー?

【杉浦美香のさくらんぼ白書】
 ノルウェー、アイスランド、スウェーデン…。ノルディック(北欧)といわれる国々が、東日本大震災で被害を受けた日本にオファーしているのが持続可能なグリーンなエネルギーだ。日本は福島第1原発事故で、原子力に依存する社会からの脱却を目指す方向に向かっている。吉村美栄子山形県知事は「卒原発」と「エネルギーの自給自足」を打ち出し、17日にはエネルギー戦略の中間とりまとめが出されるが実現できるか…。
■グリーンシンポジウム
 「福島第1原発事故を経て、原子力発電が不可欠とされていた日本は変わった。エネルギーの需要を満たすための新しい解決方法があり、それをノルディック諸国として提案したい」 東京・台場にある東京科学未来館で2日間にわたって開かれた「ノルディック・グリーン・シンポジウム」で、アイスランドのステファン・ラウルス・ステファンソン駐日大使が冒頭、こうあいさつした。
 アイスランドは1960~70年代に国をあげて地熱発電の開発を進め、全発電量の3割を地熱がまかなう。水力発電とあわせると、再生可能エネルギーは全エネルギーの8割以上を占める。
 同国は厳しい寒さをしのがなければならないため一人あたりのエネルギー消費量は多いが、暖房に化石燃料を一切使わない。地熱を利用しており、温室効果ガスの排出量は必然的に低いことになる。
 「火山国の日本は2万メガワット以上の地熱発電の可能性があるが、540メガワットしか利用していない」と大使。
 計算すると、日本が使用している地熱は能力の約3%にすぎないことになる。
■失われた10年
 「日本はエネルギーの自給につとめようとしているが、ふんだんに地熱という資源があるのに活用していない。なぜか」
 地熱のコンサルタント会社「ベルキス」のガナー・ガナルソン取締役会長は首をかしげる。
 日本はインドネシア、米国に続く第3位の地熱資源国だが、平成11年に東京・八丈島で地熱発電所が運転開始して以来、新規の地熱発電所の建設はストップしている。国のエネルギー施策は原子力発電へと大シフトしたのだ。
 しかし、そこで起きたのが東日本大震災による福島第1原発事故だ。原発10基が稼働を停止し、原発全体の約2割にあたる860万キロワットの出力が一気に失われてしまった。電力需要が供給を上回るとして今年の夏は東京電力や東北電力管内で節電の大号令がかけられた。今冬の需給見通しも、東北電力管内だけで12月に最大71万キロワット、1月には48万キロワット、2月に6万キロワットの供給不足が起きると予想されている。
 国は現在、2030年までに14原子力発電所の新設を前提にしていた昨年のエネルギー基本計画の見直しを進められ、地熱も太陽光、風力とともに再生可能エネルギーの柱になったが、ここ10年はまさに「失われた10年」だった。
■地熱ルネサンス
 「原発ありきで地熱発電はかえりみない、という方針を政府はとった」
 こう振り返るのは東北大学の土屋範芳教授だ。
 民主党が進めた「仕分け」で昨年、経済産業省のボーリング調査など地熱関連の予算は「抜本的見直し」となった。新規の地熱発電所の建設は必要ない、という方針を当時はとったのだ。
 民主党は温暖化対策として2020年の目標として温室効果ガス25%削減という野心的な目標を掲げたが、その達成のために重視したのは原子力発電と太陽光発電だった。
 しかし、震災は大きく従来の方針を変えることになった。
 資源エネルギー庁が来年度地熱の開発促進調査のための概算要求額は総額約102億円。事業者が開発に調査で資金調達の際の債務保証を合わせると、約180億円になる。
 地熱発電建設には規模にもよるが数百億円という資金がかかるが、マグニチュード(M)9の東日本大震災でも、既存の東北の地熱発電所は問題が起きなかった。そのうえ、地熱は風力や太陽光発電のように、天候に左右されるのではなく、昼夜関係なくコンスタントに発電することが可能という安定性にも優れている。
 住谷安史・資源エネルギー庁資源燃料部政策企画室長は「安定的な地熱資源の活用について、国は本気に考えているといってよい。一つで120万キロワットという原発のような規模である必要はない。数万キロワットという小規模な発電所で積み重ねていけばよいのでないか」と提案する。
 同室長によると、太陽光や風力の設備利用率は20~30%だが、地熱は70%と高いという。
 土屋教授は一変した地熱開発熱の高まりを「『地熱ルネサンス』と表現したい」と話す。
■東北の地熱発電熱
 74万キロワット。事業者で作る日本地熱開発企業協議会が試算した、東北6県における新規の地熱発電能力だ。
 日本初の商業地熱発電所である松川(八幡平市)や、葛根田(雫石町)がある岩手県では、地熱発電で盛りあがっている。安比地域などで開発可能性が検討されている。
 ただ、高額な開発コストとともに障害になるとみられるのが温泉地への影響と、多くの開発可能な場所が国立や国定公園内にあることだ。
■温泉大国、山形は?
 日本地熱開発協議会が示した山形県の地熱開発可能とされたのは、蔵王と磐梯地域のたった2カ所だった。
 しかし、蔵王は「データなし」となっているうえ、国定公園内。もう一つの磐梯地域といっても大部分は福島県内だ。
 東日本大震災で大江町では湯がでなくなり、新たに掘削を進めるといえ、温泉地と開発との競合は懸念材料の一つにもなっている。
 知事が「卒原発」を打ち出しているとはいえ、山形県内での地熱開発熱は東北の中で高いとはいえない。
 山形県だけではなく、日本全体でいえるが、地熱利用のような深部ではなく、5~200メートルの低温度を利用する「地中熱」利用も遅れている。
 ガナルソン氏が「大地は電池だ」といった言葉が印象的だった。アイスランドなど北欧諸国との共通点は多い。寒さが厳しい東北で、地震国を逆手にとったエネルギー、そして熱利用を真剣に考える必要性を感じた。
 (山形支局長 杉浦美香)