かつて「サル痘」と呼ばれアフリカを中心に世界で感染が広がる「エムポックス」。多くの子どもの命が失われている感染の中心地を訪ねてみると、日本のワクチンへの期待の声が聞かれました。
アフリカのコンゴ民主共和国。首都キンシャサの病院にある「エムポックス」患者専用の病棟を訪ねました。
記者
「まず病棟の入り口で消毒を求められました」
ここでは28人が治療を受けています。
記者
「不織布の防護服を着て、両手にゴム手袋を着けました。指定されたマスクを着用しています。不用意に物を触らないようにと言っています」
エアコンのきかない小さな部屋には女性たちがベッドに横たわっていました。
記者
「エムポックスの特徴なんですが、体中に発疹ができています」
エムポックスとは、かつて「サル痘」と呼ばれた感染症で、おととし欧米を中心に流行。日本でも200人以上の感染が報告されました。
今年に入って、より重症化しやすいタイプのウイルスの感染がコンゴから急速に広がり、8月にWHO=世界保健機関が「緊急事態」を宣言。アメリカやイギリス、タイなどでも感染者が確認され、今年だけで世界で2万人以上の症例が報告されています。
そして、特に懸念されるのが…
記者
「こちらに小さな子どももいます」
子どもたちへのリスクです。
病棟で話を聞くことができたディヴィーヌさん(10)。1つ上の兄から感染し、体中に発疹が出ました。
ディヴィーヌさん
「(Q.何歳ですか?)10歳です。熱があるんです」
発熱が続き、発疹には強いかゆみもあったと言います。
ヴィジャナ病院 ジェリー医師
「この病院ではすでに3人の子どもを看取りました。2人が生後10日、もう1人は9か月未満の子どもでした」
コンゴでは今年1万4000件以上の感染例が報告されていて、5月までに確認された死者のうち、6割が5歳未満の子どもでした。
ユニセフ保健緊急事態対応担当 ダグラス・ノーブル氏
「当初から最も懸念していたことのひとつは子どもたちの死亡率です。子どもたちは遊ぶ時に皮膚と皮膚が接触するため、感染が広がりやすいのです」
こうした中、子どもたちを救うため注目されているのが日本のワクチンです。WHOは19日、日本のKMバイオロジクスのワクチンの緊急使用を承認したと発表しました。
コンゴですでに接種されているものとは異なり、子どもにも使用できるワクチンとして期待されています。
しかし、提供が遅れていて接種開始の見通しはまだ立っていません。
ディヴィーヌさんは治療を受け、幸い快方に向かっていますが、母親はワクチンの必要性を切実に訴えました。
ディヴィーヌさんの母親
「このウイルスによって子どもたちの命が奪われています。ワクチンを、ただワクチンをください」
子どもの命を奪うエムポックス。世界的な感染を食い止めるためにも、日本への期待が高まっています。