仙台市出身のお笑いコンビ「サンドウィッチマン」の伊達みきおさんとゆかりのある山元町坂元地区の町指定文化財「大條(おおえだ)家茶室 此君(しくん)亭」が24日、一般公開される。2月に始まった修復工事で、柱などに創建時の古材を可能な限り使用し、江戸後期の書院風茶室が復活した。
[大條家と茶室]1832年、大條家15代当主の道直が仙台藩の跡継ぎ問題の解決に貢献した褒美として、12代藩主伊達斉邦から茶室を拝領。当初、仙台城下の大條屋敷に建てられていた。1932年に現在地へ移築。大條家の分家の内山家が2002年、山元町に寄付し、町指定文化財となった。
茶室は木造平屋約46平方メートル。3畳強と4畳半、10畳の3室で構成。大條家は江戸期に坂元地区を治めた仙台藩主伊達家の重臣で、伊達さんの先祖にあたる。居城とした坂元要害(蓑首(みのくび)城)三ノ丸跡に立つ。
茶室は東日本大震災直後、地震の揺れで基礎部分がゆがんで土壁が崩れ、ひさしが折れるなどした。さらに経年劣化や県内で最大震度6強を観測した2021、22年の福島県沖地震で被害が深刻化。建物は閉鎖状態だった。
復旧工事では、腐食が進んでいたスギ柱の根元部分を切断して新たな木材と交換する「根継ぎ」という工法を用いた。経費削減で解体した土壁は石こうボードで代用。薄い木板を敷いたこけらぶきだった屋根にはガルバリウム鋼板を採用した。
今後、新たに修復予算計上のめどが付いた場合、本来の部材での再修復を検討する方針。庭園整備を含めた総事業費は約1億1000万円。うち約1088万円はクラウドファンディング型のふるさと納税を活用した。
茶室は仙台藩上級武士の茶の湯文化を伝える唯一の現存する遺構。20日に報道関係者向けの内覧会があり、説明役を担当した町生涯学習課の山田隆博学芸員(44)は「地元の人には(茶室を)地域の宝として認識してもらい、歴史の重みを感じてほしい」と話した。