都市郊外に「平屋」ブーム 1軒800万円台から買える…狭小建売住宅へのアンチテーゼか?

 建築費、人件費などが高騰する中、注目を集めているのが平屋の戸建て住宅だ。国土交通省の建築着工統計によると、2023年の平屋の着工棟数は5万7848棟と、この10年で1.5倍以上増加している。

 昨年11月、平屋住宅シリーズ「モク・ワン」「モク・ワン・エス」をリリースしたポラスグループによると、「階段の上り下りに苦労する高齢の方のほか、こうした親御さんのために購入を検討しているお子さん世代からの問い合わせが増えています。お子さんが巣立った後に、部屋数の少ない家でのんびり過ごしたいというニーズが非常に高い印象です」(広報担当)とのこと。建築面積11坪(36.3平方メートル)と単身者や夫婦だけの世帯向け“ワンルーム戸建て”のモク・ワン・エスは、820万円(税別)~という金額だ。

 平屋のメリットは同じ延べ床面積の2階、3階建てに比べて低コストな点だ。

「ワンフロアで完結するので当然建築コストが下げられます。平屋は構造もシンプルで階段部分も削減でき、足場も1階のみで建築可能です。よって外壁などのメンテナンスも安く済みます」と話す不動産アナリストの長谷川高氏は、日本の戸建て住宅の変化についてこう続ける。

昭和40、50年代の戸建ては1階にキッチンと居間、バストイレのほか意味もなく立派な応接間があり、2階に家族の個室、さらに上と下にそれぞれトイレが設けられていました。その後、都市部では狭小敷地に建てられた2、3階建ての縦長の建売住宅が増えていきましたが、昨今は少子化、核家族化で余計なものがそぎ落とされ、洗濯や掃除など生活動線もシンプルで居住快適性の高さから、平屋が支持され始めているように感じます」

 ただ、平屋は広い敷地を要するため、土地価格が比較的安いエリアでないと建築は難しいだろう。

「東京では土地面積30坪でも広いほうですが、建ぺい率50、60%だとせいぜい床面積で18坪(59.5平方メートル)程度の平屋しか建てられないため、スペース確保にはどうしても上に伸ばすことになります。近年はリモートワークが普及し、都心部ではファミリータイプのマンションが1億円を超える状況の中、郊外で広めの土地+平屋で生活するというライフスタイルも十分検討の余地があるように思います」(長谷川高氏)

 都市郊外の平屋でのんびりと暮らすのも悪くなさそうだ。

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