東北6県で今年4~9月にあったツキノワグマの出没、目撃件数が6269件に達したことが分かった。既に2015年度1年間の約2.2倍となるハイペース。冬前まではクマによる被害が起きやすいとされ、関係機関は注意を呼び掛けている。
環境省によると、県別では岩手が2873件で最多となった。宮城1217件、秋田832件、山形528件、青森468件、福島351件。各県の月別推移グラフをみると、6月が計1759件で最も多く、7月が計1600件、8月が1238件だった。
岩手県は6月下旬、初のクマ出没警報を発令した。「もともとクマの出没が多かったことに加え、秋田県内で死亡事故があったこともあり、住民が敏感になって市町村への通報数が増えたのではないか」(自然保護課)とみる。
過去3年の東北の件数は13年度が3345件、14年度が4420件、15年度が2889件。本年度は6カ月だけで過去3年の1年分の件数を超えたことになり、各県とも過去最高のペースに警戒を強める。
人身被害(暫定値)は37件で、40人が被害を受けた。前年度比では8件、9人の増加。秋田県内の山林で5~6月、クマに襲われて死亡したとみられる男女4人の被害も含まれる。
東北農政局が10月末に開いた会合で、各県の担当者が対応策などを報告した。冬眠に入るまでは餌を求めるクマと、キノコ採りなどで山に入ることが多くなる人との接触機会が増えるため、住民への注意喚起を強化することを確認した。
環境省はクマを人里に寄せ付けない方策として生ごみや廃棄農作物の除去、耕作放棄地の整備、やぶの刈り払いなどを提唱。「冬眠が進むまでは油断できない。住民に十分な注意を促す必要がある」(野生生物課)と強調している。