宮城県利府町の「ひとめぼれスタジアム宮城」で行われたアイドルグループ「嵐」の復興支援コンサートに関する一つのツイートが注目されている。
「嵐」ファンのマナーが素晴らしく、コンサート会場周辺にはゴミ一つ落ちていなかった、というのだ。「アラシック」と呼ばれる「嵐」の熱狂的 ファンはコンサートや、CMのロケ先などでこれまで何かと物議を醸す行動を取りがちだったが、今回はいったい何が起きたのだろうか。
「分別の指示をしてくださった賜物です」
「嵐」の復興支援コンサート「ARASHI BLAST in Miyagi」は2015年9月19日に幕を開け、23日までで20万8000人を動員する大成功を収めた。翌日の24日、こんなツイートがネット上で話題になった。
「あれだけの多くの人々が集まり、飲食ブースもあったにもかかわらず、なんて会場内とその周辺が綺麗なんでしょう。嵐のファンの皆様のマナーの良さは素晴らしいですね」
ツイートしたのは蒲鉾店を出店している人で、こんな事も綴っている。
「ほら、この通り!ゴミ一つ落ちていないでしょ!広大な会場や周辺の公園内で、特に清掃する方を見かけた記憶もないのですが!やはり、素晴らしい!」
すると、こんなリプライが寄せられた。
「ありがとうございます! 嵐なんて来なければ良かった!」と言われたらどうしよう…と、ヒヤヒヤしていました」
「宮城の皆さんのおもてなしが暖かかったからだと思います。本当にお世話になりました」
「会場にはボランティアさんがエコステーションを複数箇所設置してくださり、分別の指示をしてくださった賜物ですよ。本当に気持ちよく過ごさせていただきました」
「嵐」の一部のファンは「アラシック」などと呼ばれマナーが悪いとネット上では評判だった。ゴミを散らかしたり盗撮をしたり、路上で「嵐」メ ンバーのウチワを広げて土下座したり、といった具合だ。13年8月にはCM撮影に使った北海道の「5本の木」にファンが殺到し、ゴミのポイ捨てや違法駐 車、私有地に立ち入ったり、木そのものまで傷つけたりした、とちょっとした騒動になった。
「嵐」ファンが20万人以上集まる今回のコンサートでどんなトラブルが発生するのか、戦々恐々とするファンや関係者もいたようだ。
ところが結果的に「嵐ファンは素晴らしい!」ということになった。きっかけは15年9月17日に地元紙・河北新報に掲載された利府町役場職員たちの取り組みだった。
「町の人に迷惑を掛けないように」などといった呼び掛けが
「縁あって利府を訪れるファンの皆さんに、よい思い出を持ち帰ってほしい」
そうした思いから、来町者が快適に通行できるように9月16日に、職員親睦会の約200人が町役場周辺を清掃した。コンサート開催中は徒歩で会場に 向かうファンの誘導案内と、苦情や問い合わせに対応した。駅からスタジアムに向かう途中にある町役場はトイレや休憩所として開放し、荷物預かり所も設け る、などといったものだ。
この新聞記事の写真がツイッターにアップされ、一気に「嵐」ファンの知ることとなり、「マナーをしっかり」「ゴミは持ち帰る。見つけたら拾 う」「町の人に迷惑を掛けないように」などといった呼び掛けが行われた。利府町政策課の担当者に話を聞くと、嵐ファンから「私たちのためにありがとう」 「感動した!」などといったメールが大量に届くことになった。コンサートが終了した翌日の24日にもお礼のメールが届いているという。
「スタジアムでは様々なコンサートや試合が行われますが、利府駅を降りてくるファンを見ると、マナーを心がける意識がにじみ出ていました。過去に5万人規模のコンサートを何度か開催しましたが、嵐ファンのマナーはかなり上という感じがしました」
と担当者は語った。コンサートが終わった夜に見回りをしてもトラブルはなく、スタジアム周辺のゴミ拾いをする必要もなかったという。