経済成長はもはや期待できない日本を襲う恐るべき人口減少の波
2023年の合計特殊出生率は1.20で、前年の1.26から低下し、過去最低を更新した。婚姻件数の減少が止まらない中では、少子化対策をいくらしても出生率が下がり続ける可能性は高い。この状況では、日本の総人口は100年後の2120年には3600万人となり(国立社会保障人口問題研究所 出生低位・死亡中位推計)、200年後の2220年には1000万人となる見通しだ。人口が100年後に今の約3割になり、200年後に1割を切りかねないような国にいながら、私たちは未来が今と同じように続くと考えてはいないだろうか。
自由民主党と立憲民主党の総裁・代表選挙において、候補者が掲げる政策に違和感を覚えるのは私だけだろうか。地方に行ったら、「地方に予算を持ってきて元気にする」とか、「復興なくして成長なし」とか、経済はこれまで以上に成長する前提での予算配分が語られる。しかし、日本の総人口はすでに2007年頃から減少している。経済が成長するためには、労働力人口×1人当たりの労働生産性で考えると、すでに成長することを前提にはできないはずだ。
2023年の出生人口は72万7277人で、前年より4万3482人減少し、過去最少を更新したのに対し、死亡人口は157万5936人で、前年より6886人増加し、過去最多を更新している。この結果、出生数と死亡数の差は84万8659人で、減少幅は過去最大となった。数年のうちに毎年100万人も人口が減少するのが、確実に起こる日本の未来である。
社会保障人口問題研究所は100年後までの人口予測を行っている。出生率で3つのシナリオがあり、中位は平均1.33、高位は1.58、低位は1.12となっている。現時点での実績は中位と低位の間となっているが、今後は低位を下回る可能性もあると考えている。それは、生涯未婚率の上昇、結婚件数に対する離婚件数の多さ、若者の恋愛事情などの統計がこれまでよりも悪くなる可能性を示唆しているからだ。
日本の人口は100年後に現在の3割へ減少、500年後はほぼ絶滅している?
そこで、出生率の低位推計の結果を見ると、100年後に総人口は3600万人となっている。これは100年後に人口が28%に減少することを意味する。そこから、もう100年経過した今から200年後は、3600万人×28%となり、約1000万人となっている。現在の人口の8%で、今の都区部の総人口とほぼ同じになる。ちなみに、300年後は300万人で、400年後は90万人(世田谷区とほぼ同じ)、500年後は30万人となり、その頃には日本人が絶滅している可能性だって否定できない。
これを人口が少なかった時代に時間を巻き戻して考えてみよう。100年後の3600万人は明治時代に逆戻りしているし、200年後の約1000万人は江戸時代以前の室町時代に遡っていることになる。そうなると、東海道を旅行するのも相当な時間とコストがかかるだろう。これまで発展してきた鉄道網は不採算路線から廃線になり、人口が今の4分の1なので運賃は数倍になり、新幹線の本数はかなり間引かれていて、リニアは無用の長物となっているかもしれず、日常の主な移動手段は自転車であるかもしれない。
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私たちは発展し続ける社会しか知らない。GDPの6割は個人消費なので、国内の経済は今後衰退することは避けられず、縮小する経済の中で、これまで当たり前にあったことさえ諦め始めなければならない。今までのように赤字国債でお金をバラまいていたら、国の財政は破綻し、貨幣価値が落ち、為替は超円安となり、1ドル1000円では済まないかもしれない。
国民は老若男女極貧生活を強いられ、真面目な性格から世界の下請け工場に位置づけられるかもしれない。国防ができる経済水準ではないので、侵略を受けることになったら、もっと疲弊することも考えられる。日本人・日本国の存続危機は、100年後にはかなり深刻な状態になっていることは間違いないだろう。
他方、世界に目も向けると、日本は少子化が先行しているだけなのかもしれないと思える。国連が世界人口推計を2024年に発表したが、中国の人口は21世紀末にかけて世界最大の落ち込みを予測している。一人っ子政策のつけがまわって来るのだ。
中国だけではない。この人口予測も3つのシナリオがある。2100年の出生率は、中位は平均1.84、高位は2.32、低位は1.36となっている。2.1以上ないと人口を維持することはできない。報道されるのは中位推計だけで、世界人口は2084年に約103億人でピークに達するとしているが、人口を維持するだけの子どもを産んでいるのは2039年までで、以降人口が増えるのは長寿命化の過程で起きることでしかない。つまり、世界の人口も急速に減少する可能性があることを国連も認識している。
日本はおろか世界で見ても人類は絶滅へ?今から食い止めることはできるのか
出生率の低位推計を400年後まで延ばすと、世界の人口は1億人を割っている。現在の世界の人口は80億人なので、200年後に日本がなくなっているだけでなく、人類も400年後にほぼ絶滅していることになる。恐竜と同じで、地球という星で人間という動物が闊歩していた時代はあったものの、種の保存ができなくなって絶滅したということになる。
残念ながら、もうこうした状況を回避することはできない。世界中で少子高齢化が進む中で、子どもに参政権を与えない民主主義では高齢者重視の政策に予算が重点的に配分されるからだ。これまで人類が文明を発展させてきたのは過去の知見を引き継いできたからだが、人口減少下ではそれはおぼつかない。
AIが人間の代わりを担っても、物事を発案して決めるのは結局人間であり、何の解決にもなっていない。人類の絶滅は仕方ないと考えたときに、自分が生きている間だけは納得が行く生き方をしたいと私は思っている。それは、自分がどれだけ崇高な思想の下で行動し続けているか、という自己満足だと知りながらである。
(スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)