「財閥系タワマン」が維持費だけで月6万円…!買ったらずっと続く「地獄の搾取スキーム」と「抜け出す“秘策”」【マンション管理クライシス】

「特にタワマンを中心に、近年分譲されているマンションの維持費は物価上昇率以上に高額化しています。その要因は不要で割高な工事や、高すぎる管理会社の中間マージンなどです。

多くの住民はマンション関連の書類もチェックしていないし、管理組合の理事会もお金に無頓着になっているケースが少なくない。大規模修繕のキックバックなどの問題は比較的知られていますが、管理会社を通したマンションの小規模な工事や設備更新費や日常的な点検業務や清掃業務での支出でも同様で、監視が緩い分、より、はびこっているとも言えます。こうしたことは業界内では、なかば慣習化していて、本来は支払う必要のないお金が実はどんどん出て行ってしまっているのです」

こう話すのは別所マンション管理事務所の別所毅謙氏だ。(*記事内容は編集部が保証するものではありません。実際のマンションの状況に合わせて情報を参考にしてください)

SafeFrame Container
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マンション管理の“搾取構造”

管理会社が得るキックバックや過剰な中間マージンの問題については以前の連載でも詳述しているように、マンションの維持費高騰の原因にもなる。特に、都内のタワマンなら平均的な70平米で管理費で3万5000円、修繕積立金で2万5000円程度と6万円を超えることも今や珍しくない。年間予算がマンション全体で億単位になると、工事や日常の管理項目も、中間マージンの上乗せで、それだけ巨額になっている可能性が高い。

「こうした状況を見直さずにいるのは、それだけで損を垂れ流しているようなものです。例えば、タワマンだと大阪と東京の物価はそこまで違わないのに、管理費では同等仕様の物件でも2倍近い差がある場合もあります。

東京の500戸のタワマン管理費でも適正な金額に改訂できれば、3万円が2万円を切るくらいに見直せる余地は十分あります。仮に戸あたり1万円分を減額できれば、マンション全体では、10年で6億の削減が可能で、その分で、修繕積立金の値上げを抑えることもできます」(別所氏)

これらの高額な維持費の要因となっている、余分な管理会社へのマージン分を排除したいなら、日常的な管理項目や工事の見積や発注業務は面倒でも管理組合が独力でやるのが理想だ。例えば10万円以上のある程度高額になることが想定される工事や設備更新費を管理組合が独自に見積もりを取得すれば、安価で発注できる可能性が高い。

住宅ジャーナリストが言う。

管理組合が業者選定するためのヒント

「管理組合による直接の業者選定のメリットは、管理会社へのキックバック分を節約することと、キックバックを期待しただけの不要な工事自体も減らせることです。

また、マンションの修繕工事自体、リスクがあったり難度の高い工事は少ないので、業者選定にそこまで神経質になる必要はありません。また、工事品質に悪影響を与える可能性もあり、無理に安い業者を探したり値切る必要もありません。

ある程度の実績がHP等で確認できれば十分で、見積依頼の事務作業については、負担感はそこまでではないはずです。

また、毎回、新たに業者を探す必要はなく、ある程度、信頼性を感じる何社かの業者を確保できていれば、継続的にそれらの会社に見積もりを取ればいい。マンションでやる工事は種類も限られているので、業者の目途がついていれば、管理組合もそこまでの手間ではありません。

それでも、工事の都度発生する事務作業が手間なら、業者だけ管理組合で何社か目星をつけておき、信頼関係ができていれば、管理会社に事務作業を引き継いでも構いません。ただ、管理組合が感知しないところで、管理会社が業者にキックバックにあたる手数料を要求していたりして“手垢”が付いている場合もあります。不審な点があったり『最近は高額になった』と感じれば、また業者を変えればいいのです。

いずれにせよ、発注業務や業者選定はそれ自体が“利権”の側面があるということを忘れてはいけません」

問題はその業者選定を管理組合で誰がやるのか、だ。前出の住宅ジャーナリストが続ける。

「不正を疑われたり、大金が絡むことで、プレッシャーもかかるので、ある程度の手当を出す組合もあります。また、万一、施工不良などトラブルがあった場合も、選定者個人の責任は問わないことを議事録に残すなり、明文化しておくといいでしょう。そうしないと成り手が現れません。

また、工事業者選定の担当者は理事会からではなく、一般の組合員の中から有志を募るという方法がオススメです。理事に絞ると、成り手がいなかったり、万一、不正の疑いがあった場合は解任が難しくなるからです。

管理組合での業者選定がどうしても、難しければ、信頼できそうな第三者のマンションコンサルタントなどに依頼する方法もあります」

さらに工事費を安く上げるコツ

また、依頼する業者は塗装や補修など比較的軽めの内容なら、大規模修繕を手掛けるような大手に頼むとそれだけで、高くなるという。しかも現場の職人との間に何人も人が入るので、要望が伝えにくかったり、結局はその大手も“間”を抜くために安価な下請け任せだったりする可能性も考えられる。

「できれば小回りが利き、HPなどで自社施工を謳っていて、料金表示ができるだけ明朗な小~中規模の専門業者へ直接依頼する方がいいでしょう。現場の写真や型番をメールで伝えておけば、現場に来なくても、概算くらいはすぐ出してくれるものです。また、工事業者のマッチングアプリを使えば、口コミもあって、そこまでハズレはない。

細かいテクニックでは、例えば設備更新なら製品だけ通販で購入し、取り付けを町の電気工事士に頼めば安くなります。例えば、防犯カメラの更新などは、通販で高性能な4Kカメラ8台で録画機器やモニタ、コードなど一式で10万円程度で売られています。商品だけ購入し、設置だけ町の電気工事士に依頼すれば、管理会社が紹介する専門業者の1/5以下の費用で済みます。

いずれにせよ、管理組合が直接発注することで格段に管理組合の組合会計は良くなるはずです。管理会社の“発注利権”がなくなれば、不要な工事自体が減る期待もあるからです」(前・同)

問われる「マンション管理会社」の存在意義

とはいえ、そこまで管理組合が管理を主導できれば、管理会社の仕事は、もはや理事会や総会の開催などの行事の運営だけになってしまう。

住宅ジャーナリストが続ける。

「日常のマンション管理業務は管理人でほぼ、事足ります。というのも分譲時には管理体制が構築されているので、管理会社の主な仕事は、理事会に出席して工事の営業をすることと、書類の作成くらい。

だからこそ、管理会社のフロント社員は1人で10棟以上の担当物件を持てるほどで、その程度しか経営リソースは割いてもらっていないのです。酷い言い方になりますが、キックバック込みの工事の営業を受けるために管理会社に委託費を払っているようなものだと言えなくもない」

旧来の「自主管理マンション」が今でも管理会社に委託しない理由

実際、管理会社の手を借りない自主管理物件は、一般的な管理会社の委託管理の物件に比べ、半額程度の管理費で済んでいる物件も少なくないし、修繕積立金も安い。

「自主管理については、清掃員や管理人の間に、管理会社が介在するかしないかの方式の違いです。自主管理物件は、住民が直接、ゴミ出しや清掃、業者の手配をやらなければいけない、など誤った情報がありますが、これは大間違いです。

管理会社が顧客マンションの管理人を雇用するように、自主管理物件では、管理組合が直接、管理人を探して管理業務を委託することができます。ある程度の事務経験があって良心的な人物に、管理人と管理会社の業務を委託できれば、仮に1.5倍の報酬を支払ったとしてもコストパフォーマンスは断然に良いはずです」(前出の住宅ジャーナリスト)

自動車を組み立てるのは素人では無理だが、マンション管理はコンサルなどの知
恵を借りつつ、少々の知識があれば、日常の管理体制の構築は難しくない。1980年代
半ばから、管理で安定的に儲けられることを知った不動産会社は自主管理物件を分譲
しなくなったが、それ以前に分譲された自主管理物件は今でも多くが自主管理を
続けている。

「自主管理は、管理会社との契約自体が不要なことを知っているのでしょう」(同)

「自主管理マンション」のリスクと管理会社の価値

ただ、一方で、こうした指摘もある。

「自主管理マンションでは、外部の目がないため、理事会業務やお金の管理が杜撰になりやすかったり、理事役員が”暴走”して私益に走りやすくなる環境であったり、理事会メンバーの属人的な能力への依存度が大きくなりすぎたりデメリットもある。

このような状況から、管理状態に難ありと見え、銀行ローンも通りにくく、資産性の評価が低いのも難点と言えます。そういう意味では、理事会や総会の運営、及びその書類の作成を適切にリードしてくれる管理会社の存在価値は高いとは言えます」(同)

ただ、管理会社の工事営業を避け、理事会支援業務にだけ限定すれば、管理会社がほとんど儲からなくなり、「撤退」と言う事態もあり、悩ましいとことではある。

シビアに管理会社に要求しすぎるのは良くないが…

前出の別所氏もこう補足する。

「あまりにシビアすぎるのも考えものです。近年は管理会社も撤退する時代であり、地方の小規模物件だけではなく、最近は高級物件だろうが何だろうが、理不尽な要求が多かったり、お金にシビアすぎる組合に対しては、撤退するようになっています。

現実的には少額細かい部分には目を瞑るという大人の対応も必要です。カスタマーハラスメントと受け取られかねないような行動も良くない。バランス感覚が重要なのです。

SafeFrame Container
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ただ、明らかに相場より高すぎる工事や、不要な工事ばかり提案する管理会社と無理に付き合いを続けても良いことはないと思います。主要都市なら、次の管理会社が見つからないということはないので、選択肢は用意しておくべきで、依存状態はやはり良くありません。管理会社と健全に付き合うためには、管理組合も緊張感を持っておくべきです」

なんとも悩ましい問題だ。

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