「幸福度が低い」と言われることが多い日本。幸せになるために必要な要素は何なのか。
損害保険大手SOMPOグループが主導し、2024年春から始まった幸福度研究会が、日本人7500人超を対象に実施した幸福度に関するアンケート調査の結果をまとめた。
調査では、氷河期世代を含む30〜50代で顕著に幸福度が落ち込む「U字型」の特徴がみられることや、自身が幸福のために必要だと考えている要素と、潜在的に幸福感に影響を与える要素に「ズレ」があることなどが分かってきた。
どうすれば私たちはより幸せになれるのか。調査結果から見えてきた幸せの条件とは。
日本人の幸福の要素
30〜50代にかけて、幸福度は低下している。女性よりも男性の方が幸福度は低くなる傾向にある。
幸福度研究会はウェルビーイング研究の第一人者である慶應義塾大学大学の前野隆司教授が座長を務め、年代やバックグラウンドが異なる委員、合計8名から構成される。
SOMPOインスティチュート・プラスの濱野展幸統括上席研究員は、研究会を主催した背景として「日本が幸福度が低い」と指摘される事がある一方で、「日本は本当に幸福度が低いのかという疑問があった」と話す。
研究会では先行研究や有識者の意見を参考に、所得・富、仕事、健康、住環境・自然環境、子育て・介護の環境、生きがい・未来への希望、自己決定、交友関係・人間関係、自己肯定・他者との比較、コミュニティとのつながり・社会貢献、安心安全、政治参画という12項目を幸福度の要素と仮定した。
「どの要素が自分の幸せに影響するか」というアンケートによって主観的に幸福にとって重要だと思う要素を抽出するとともに、各項目の満足度と幸福度を分析することで、潜在的に幸福度に影響を与える要素を見出していった。
幸福度について主観的に重視する分野と実際(潜在的)に重視している分野の違い。
主観的な結果では、健康、安心・安全、自己決定といった要素が重視されている一方で、幸福度に対して実際(潜在的)に相関が大きかった要素は「生きがい」だった。さらに影響の度合いを分析したところ、所得や交友関係といった要素の影響も大きかった。
幸福度と満足度との関係。生きがいや所得、交友関係に満足している人は、幸福度が高かった。
氷河期世代の「孤独」をどう救う
氷河期世代である40代前後の幸福度が低い年代では、 「職場・学校」や「地域・隣人」から「頼りにされている」と感じる割合が低かった。また、逆に「頼りにできる人」の数も50代が最も低く、40〜50代は人間関係面で孤独感が高まりやすい状況にあることがうかがえた。
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濱野氏は、
「日本では、氷河期世代の所得の影響も否定できないと思いますが、40代、50代の幸福度が落ち込む状況は国際的にも見られています。例えば、いろんな人とコミュニケーションを取ったり、何かに挑戦したりといった新しい一歩を踏み出すことが(幸福度を高める)1つの道なのかなと」
と話す。
実際、調査の中では幸福度が低い中年世代であっても、挑戦心が高い人は生きがいの満足度が高かった。濱野氏も、こういった社会的な要素をどう高められるかがポイントになるのではないかと指摘する。