安全性や倫理性が問題視され物議をかもしている「ChatGPT」ですが、昨年11月に公開されるや圧倒的な性能で瞬く間にグローバルに広がりました。
前編『年収4000万円以上も夢じゃなくなった 進化するChatGPTが生み出す「新しい仕事と副業」のヤバすぎる中身』で紹介したように、すでにエンジニアの世界では新しい「職種」まで誕生し、その年収は4000万円にも上っています。
さて、ChatGPTは社会や仕事の現場をどのように変えるのか、さらに詳しく紹介していきましょう。
ChatGPTをリリースしたOpenAIのサミュエル・アルトマンCEO Photo/gettyimages
翻訳で稼ぐ人が登場
シンガポールの周囲のビジネスパーソンの間でも、仕事にChatGPTを使っているという声はここ数ヵ月で急速に増えています。
特によく聞くのが翻訳作業においての利用です。多様な言語を話す様々な人種が多いシンガポールでは、翻訳作業へのニーズが多く、副業でこれに取り組む人も周囲に何人もいますが、この分野では生成AIの誕生前から作業の自動化が進んでいました。
特に人気の翻訳ソフトが、こちらもChatGPTと同じくディープラーニングを用いたDeepLで、これまでの翻訳ソフトが苦手とした日本語を介した翻訳作業もかなりの精度で行えます。
日本語独特の主語がなく複数の文章が続いた長文をなるべく少なくしながらDeepLを使えばこなれた英語になり、文法チェックソフトのGrammerlyを使って表現を修正すればネイティブが読んでも違和感のない英語となるようです。
試しに、いくつか私が過去に書いた日本語のコラムを上記のステップで英訳した所、3歳からシンガポールでインターに通って、今は英国のボーディングスクールに留学しているうちの家族で最も英語が得意である上の子が読んでも、ほぼ違和感のない英語のコラムとなりました。
ChatGPTで翻訳が効率化し、質も上がっているという Photo/gettyimages
そして、更にChatGPTを用いることでより高度な翻訳作業も可能になっています。
上記のステップで英訳した文章は確かにこなれた英語にはなっていますが、ビジネス用途としてはインパクトに欠けるため、英文をChatGPTで商品の営業用や、オンラインでのSEO対策としてカスタマイズしてほしいと伝えると、よりメリハリが効いた文章に出来ると知人が話していました。
SEO対策としてChatGPTを用いた文章を見せてもらうと、あまりに色々な用語が満載で少しくどいように私には感じましたが、ネイティブにチェックしてもらったところ全く問題ないとフィードバックがあったそうです。
このように翻訳に文法チェックのソフトを使い、さらにChatGPTを組み合わせれば十分なビジネス英語を多言語からスピーディに生成できるので、単価の高い翻訳作業を複数の大企業から請け負って、副業としてコンスタントに月30万円以上を稼ぐ知人も複数出てきています。
本業でも使えるChatGPT
一方、本業でガンガン活用するには、まだChatGPTであっても厳しいという印象です。
例えば、「ヘッジファンド業界の動向について教えてほしい」とChatGPTに英語で質問をしても、その返答は、まだ米国の株式が活況を呈していた21年以前の情報が中心で、投資戦略を尋ねても、「ロングショートがリターンを上げている」と返答するなど、昨年の不調の相場をほぼ無視した内容でした。
リアルタイムさを重視する金融業界ですから、これでは下調べ程度に活用するにしても、情報の乖離が激しく、使えないなと感じました。
また、「運用残高の多いヘッジファンドをランキングにまとめてほしい」というより具体的な作業内容についても、ヘッジファンドと呼ぶには違和感のある運用会社が入っていたり、残高についてもいつの時点のどのレポートが出所かわからないので、結局検索をするしかなかったりと改善の余地は大きくあります。
ただし、ケースを絞れば効率化できる点も多くあります。
会議でも力を発揮する…Photo/gettyimages
私は妻とシンガポールで資産運用を中心としたコンサルティングサービスを提供しています。Zoomなどでビジネスミーティングをすることが数多くあり、その際の言語はもちろん英語です。
日本語だと効率的にとれるメモも、英語では話すことに精一杯になりうまく取れません。そこで、CatGPTが力を発揮してくれます。
Otterなどの音声認識ソフトで文字起こしをしておき、ChatGPTを使ってサマリーを作ればかなりの精度で要旨をまとめてくれて重宝しています。
また、ネクストステップとして何をすればよいかについても、ミーティングのログから箇条書きにしてくれるので、作業の抜け漏れも効率的に防げます。
米国では各業界や職種別の応用機能をChatGPT上で開発するスタートアップも急増しており、早く本業でも使えるレベルのサービスが出てきてほしいと期待しています。
巨大化する「マイクロソフト」と「グーグル」
ChatGPTを開発したOpenAIには、マイクロソフトがこれまでに1兆円以上の資金を投じて、検索サイトのBingやOfficeといった自社製品に組み込もうとしています。
グーグルもこのままでは検索ニーズが急減しかねないので、自社で開発したチャットボットのBardを公開し、こちらも検索など自社サービスに組み込んでいくようです。
常に自然言語でやり取りするチャットボットは、毎回検索する際の数倍のデータ処理量を要求しますが、その過半はエヌビディアに代表されるGPU(グラフィック・プロセッサー・ユニット)で行われており、エヌビディアの株価は今年に入って80%以上も急騰しています。
チャットボットの領域で、絶好のビジネスポイションを取っているのは、マイクロソフトとグーグル Photo/gettyimages
上記のようにスタートアップはもちろん、大企業でも自社で保有しているデータを用いてChatGPT上で、様々な機能開発を行おうとしているのです。
こうした生成AIの学習には巨大なデータ処理能力が必要となり、多くの企業がマイクロソフトやグーグルのクラウドサービスを利用することになります。
パブリッククラウド最大手のアマゾンこそ生成AIで出遅れましたが、マイクロソフトやグーグルは自社で開発したチャットボットで、新規ビジネスを拡大するチャンスを得た上に、収益源のクラウドサービスの伸長も図れるという絶好のポジションにいます。
ChatGPTの登場により生成AIバブルが膨らみつつありますが、この恩恵の大半をマイクロソフトやグーグル、エヌビディアといった米国の一握りのメガテック企業が受けるという構図となりそうです。
さらに連載記事『米・ウォール街に「新帝王」が誕生!たった1年で「5000億円超」を稼いだ男の「ケタちがい」の買い物の「ハイエンド」すぎる中身』では、昨年の低迷した市場で大勝ちしたアメリカの大富豪を詳しく紹介している。