あなたの会社は大丈夫? 最大手の企業信用調査会社「帝国データバンク」による『倒産の前兆』は、彼らが目撃した「倒産劇のリアル」を一冊にまとめたものだ。本書によれば、倒産する会社にはいくつかの共通点があるという。では、会社を倒産させる経営者や、倒産する会社で働く社員の「共通点」とはどんなものだろうか。それぞれ挙げてもらった。
こんな社長、社員がいると危ない
たとえ黒字経営を続けていたり、銀行へのリスケ要請や取引先への支払いサイト変更要請がなくても、「倒産リスクあり」と見なしたほうがいい場合がある。
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それは社長と社員の様子を見ればわかる、といっても過言ではない。
帝国データバンクの集計によれば、次のような傾向が見られる企業は「倒産リスクが高い」と考えられる。
社長の傾向
・数字に弱い
・言動が派手で、大きい話が大好きである
・人情味に厚い
・明確な経営理念やポリシーがない
・リーダーシップ、指導力に欠ける
・業界動向に疎く、商品知識に欠けている
・私生活において、よからぬ噂がある
・社長以外の実権者が存在する
社員の傾向
・挨拶、応対ができず、言葉遣いが乱れている
・服装が乱れている、あるいは職場にふさわしくない
・担当者が頻繁に代わる
・従業員の増減が激しい、あるいは退職者の補充が追いついていない状況が続いている
・自社の悪口や愚痴を言う社員が多い
・会社の雰囲気が悪い
社長の傾向のうち、「人情味に厚い」というのは意外に思われるかもしれない。
これは一見いいことのように思えるが、経営者は、ときには不採算部署の整理や社員のリストラの必要性に迫られる。
人情味に厚いことが災いして経営改革への着手が遅れ、倒産に至ることもあるのだ。
幹部社員の退職は要注意
会社勤めをしている人は、自分の会社は大丈夫だろうか、あるいは自分が付き合っている主要取引先は大丈夫だろうか、と思っているかもしれない。
一社員でも、あるいは外側からでもつかめる「倒産のシグナル」とはどのようなものか。次のような点を押さえておくと、自社や取引先の見極めに役立つだろう。
まず挙げられるのは、専務や営業部長、経理部長といった幹部社員の退職だ。彼らは会社の経営状況がよく見える立場にある。その彼らが辞めるのは、何かしら経営を揺るがしかねない問題が起こっているシグナルといえる。
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また、幹部社員は社長と気脈を通じ、会社の創業期から苦楽をともにしてきている場合が多い。それが突然の退職という、社長からすれば裏切り行為に出るのは、よほどのことだと受け止めたほうがいい。
加えて、退職した幹部社員が自分の子飼いの有能な社員や大口の顧客を、ごっそり引き抜いて他社に移る可能性もあることを考えると、たったひとりでも、幹部社員の退職がおよぼす影響は存外に大きい。それが倒産の糸口になってもおかしくないのだ。
もし、自社の幹部社員が定年でもないのに退職したり、取引先の幹部社員が退職したという情報が入ってきたりしたら、気をつけたほうがいいかもしれない。
一社員が受け取れるシグナルとしては、もう1つ、「社外からの問い合わせ」がある。
たとえば、たまたま出た電話が銀行からの督促の電話だったとか、「入金されていない」という取引先からの電話だったといった話は、実際、倒産した企業の社員からよく聞く話だ。社長から居留守を使うよう命じられていたという社員も少なくない。これに給料の遅配が重なったら、いよいよ危ない。
ただし大企業になると、よほど気をつけていないと、こうした倒産のシグナルは察知できない。何の疑いもなく働いていたら、ある日、テレビで自社の倒産が報じられ、その日のうちに全社員が集められて説明を受けるというケースも、よく見られる。
不確実性の高い現代、企業の安泰性に絶対はない。一社員が自社の倒産を見越したり、外側から取引先の倒産を見抜いたりするのは難しいことではあるが、自社や取引先の突然の倒産で途方に暮れないためにも、常に企業の動向にアンテナを張っておく必要がある。そんな時代になっているということだろう。