大阪地検のトップである検事正を務めていた弁護士の男が酒に酔った当時の部下の女性に性的暴行を加えたとされる事件で、被害者である現役検事の女性が大阪市内で会見を開き、「被害を受けてから約6年間、本当にずっと苦しんできた。なぜもっと早く罪を認めてくれなかったのか」と涙ながらに語りました。 【映像】「6年間ずっと苦しんできた」性的暴行を受けた部下の女性検事が異例の会見「公にされたら死ぬと脅された」涙ながらに語る 元大阪地検トップは否認から一転、裁判で起訴内容認める 元大阪地検検事正で弁護士の北川健太郎被告(65)は、検事正在任中だった2018年9月、大阪市内にある官舎で、酒に酔って抵抗が難しい状態だった女性に対し性的暴行を加えたとして、準強制性交等の罪に問われています。
■北川被告は起訴内容を認め「被害者に深刻な被害を与え、深く反省、謝罪している」
25日午後2時すぎから大阪地裁で開かれた初公判で、白いシャツに黒のスーツ姿で法廷に現れた北川被告は、「公訴事実を認め、争うことはしません」と起訴内容を認め、「被害者に深刻な被害を与え、深く反省・謝罪している。所属する組織の人たちに多大なご迷惑をかけ、世間を騒がせたことを申し訳なく思っている」と謝罪しました。 被害に遭った女性は現役の検事で、夫や子供もいましたが、初公判後に大阪市内で弁護士とともに記者会見を開き、当時の生々しい状況や、苦しい胸の内を涙ながらに赤裸々に語りました。
■女性は「泥酔状態になり記憶が戻ってきたときには、被告が性行為に及んでいた」 北川被告は「これでお前も俺の女だ」と性的暴行続ける
事件当日、女性は北川被告や同僚らとともに参加した懇親会の後、北川被告にタクシーに押し込まれたといいます。当時は飲酒の影響による泥酔状態、記憶が戻ってきたときには、被告が性行為に及んでいたということです。 女性が「帰りたい」と懇願しても、北川被告は「これでお前も俺の女だ」と言って性的暴行を続けたといいます。 女性は泣きながら帰宅したといい、「夫はやさしい人で家のことも家族のことも手伝ってくれて、私は検事として働くことを応援してくれていた。3時間にわたって検察庁のトップにレイプされたなんて言えなかった」と明かしました。
■北川被告は「この被害を表沙汰にすれば死ぬほかない。大阪地検は組織として立ち行かない」
事件後、北川被告から「この被害を表沙汰にすれば死ぬほかないと思っている。組織は批判を受け、大阪地検は組織として立ち行かない。私の命に代えてやめてほしい。ご主人にも言わないように」と懇願されたといいます。さらに、「以前からあなたのことを好きだった 。性交したことは覚えていてあなたの同意があると思っていた」などと語ったということです。
■女性は「PTSDで休職を余儀なくされた。被害に苦しんでいる方に寄り添いたい」と涙ながらに語る
女性は性被害のことを公にせずに過ごしてきましたが、「被告は懲戒免職され、法曹資格失うべきだったのに、(定年前に退官という)円満退社し、多額の退職金を得て、(弁護士になった後も)大きな影響力をもっていた。実際の行動は、罪などなかったのような被害者を忘れたかのようなふるまいだ。検事正がこれほどに罪深く不道徳で非常識なことを気づかず、PTSDで休職を余儀なくされ、自分の生きがいの仕事まで奪われた」と訴えました。 会見を行った理由について、女性は「性犯罪やDVなどに苦しんでいる被害者の方がたくさんいる。私は被害にあって苦しんでいる人の力になりたいと思い検事に任官し、たくさんの被害者とともに戦ってきた。私の経験を語ることで、被害に苦しんでいる方に寄り添いたいと思い会見に臨んだ。加害者が『同意があった』などと主張することが多く、正しく事実認定しなければ、さらに被害者を傷つけることになる。性犯罪の本質を正しく理解して、被害の本質を知ってほしい」と訴えました。
■北川被告は「関西検察のエース」最高検の刑事部長や大阪地検検事正を歴任
北川被告は石川県出身で、1983年に金沢大学を卒業後、検事として主に関西地区の検察庁でキャリアを重ね、那覇地検検事正、大阪地検・高検の次席検事、最高検の刑事部長などを歴任。 2018~2019年には大阪地検の検事正を務め、「関西検察のエース」として知られていました。2019年、定年を前に退官し、弁護士として活動していました。