【闇バイト】演技力不要で手っ取り早い…「特殊詐欺」でなく「強盗」のワケ

関東を中心に20件近く起きている”複数の男”による強盗や窃盗事件。警察庁は少なくとも去年10月から8都県で起きた強盗殺人など14の事件は、一連の犯行グループによる事件と疑われるとみている。なぜここに来て強盗事件が相次いでいるのか。 ある捜査関係者はこう話す。 「いま起きていることの構図は特殊詐欺と全く同じだから」

■特殊詐欺の構図と酷似する“強盗”

一連の強盗・窃盗事件と多くの特殊詐欺事件に共通するのが、SNSで募集した”闇バイト”によって実行役が集められている点だ。ほとんどは高額報酬という文言に釣られて実行役に応募してくるケースが多いという。 また、指示役から実際の犯行の指示には秘匿性の高い通話アプリ「テレグラム」などが使用されることも共通している。強盗や窃盗事件における犯行グループの募集や連絡が「特殊詐欺」と同じスキームで行われているというのだ。 なぜここに来て、特殊詐欺の構図と似た強盗が増えているのか?

■演技力不要?タンス預金は”だまし取る”から”奪い取る”

主な相違点

捜査関係者によれば、前提として社会全体での特殊詐欺への警戒心が近年強まっている。警察や金融機関の連携や、被害防止を呼びかける草の根の運動も行われている。 特殊詐欺は「劇場型」で、息子役や銀行員役、警察官役、弁護士役など現金をだまし取るためのニセの登場人物が多いのが特徴だ。さらには、ウソの電話をかける拠点も用意したうえで、電話口でだます時や実際に対面で現金やキャッシュカードを受け取る時には、それなりの”演技力”も必要となってくる。また、だまされたふりをされて現金を手に入れる前に検挙されるリスクもある。 一方で強盗は、大金を持っている家という情報さえあれば、下見をして犯行に及ぶだけで、狙った相手との細かいやり取りは発生しない。演技する必要もない。押し入ってそこに人が居たら縛る、脅してカネのありかを聞き出す。ある意味、特殊詐欺より「手間がかからない」のだ。 事前に用意する人員も少なく、拠点や演技指導の必要もない。こうした背景事情から「手っ取り早く」確実に現金を得られる強盗に手を染めるグループが出てきた可能性があるという。

■「金持ちリストが出回った」 強盗が増えるワケ

「金持ち名簿リストが出回っている可能性がある」 増える強盗事件に捜査関係者はこうも指摘した。 こうした名簿の存在により犯行グループは、特殊詐欺よりも確実に多額の現金を入手出来る可能性が高まったのではないかというのだ。 一方で、金庫のありかや解錠方法を聞き出すために家人が在宅中に押し入るケースが増え、今月19日には東京・狛江市で、押し入った男らにより、90歳の女性が殺害される事件も起きてしまった。

■なぜ?闇バイト応募の実行役が逃げられないカラクリ

どうして実行役は捕まった際のリスクが高くても指示されるがままに犯行に及ぶのか。そこにはこうしたカラクリがあるという。 まず、SNSで実行役を募集した犯行グループは、応募者に免許証などの身分証と自分の顔を自撮りしたものを送らせるという。さらに、住所が実在のものか確認したり、家族構成や職場まで言葉巧みに聞き出したりして逃げられないようにしていく。 一連の強盗事件で逮捕された容疑者は、こう取り調べに話したという。 「家族や職場に危害が及ぶと思ってやめられなくなる」 「連絡がとれなくなった時に、実際に家に不審な人物が訪ねてきたこともあった」 「日当100万」などの言葉に飛びつくと、犯罪グループに弱みを握られるだけではない。安易に犯罪に加担した際の罪も強盗事件は非常に重くなる。強盗殺人罪ともなれば死刑もあり得る。

■実行役が逮捕されても「トカゲのしっぽ切り」

別の捜査関係者はこうも話す。 「実行役は安易に手を染めるが、トカゲのしっぽ切り。結局は痕跡を残さない『指示役』さらに『上役』を検挙しなければ意味がない」 一連の強盗事件について、警察庁は各県警と情報共有をはかり、「指示役」や「首謀者」を検挙していくとしている。

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