こんな人と付き合うのは人生のムダである…和田秀樹「50歳を過ぎたら関係を断ったほうがいい人のタイプ」

本当に付き合うべき相手はどのような人か。医師の和田秀樹さんは「50代になったら、『仕事ができる』『つき合いが長いから』といった基準だけでのつき合いはやめるべきだ。最も大切にしたい基準は『その人といて心地良いか否か』である。だからと言って『イエスマン』や『同調できる人間』だけとつき合うと本当に刺激がなくなる。自分の考えや気持ちを自由に安心して言い合える『心理的安全性』のある人間関係を、仕事でもプライベートでも持てるのが最高ではないか」という――。

※本稿は、和田秀樹『老後に楽しみをとっておくバカ』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

人間関係の悩みの9割は“決めつけ”でしかない

「すべての悩みは対人関係の悩みである」

そう論じたのはオーストリア出身の精神科医アルフレッド・アドラーです。

どういうことか、わかりますか?

この世界の中で、あなた一人しか存在していなかったら、劣等感や悲壮感や孤独感を味わうことなどない、ということです。

たとえば、あなたが容姿に悩んでいるとしたら、それは他の誰かと比べて、著しく太っていたり、背が低かったりするからです。自分しか存在しないのであれば、相対的に自分を評価して悔しい思いをすることなどありません。

「ネガティブ思考」であることや「誰とでも気軽に明るく接することができない」などに劣等感を抱いているとしても同様です。自分よりも友達が多い誰かや、部下や後輩から好かれている誰かがいるから自分を蔑(さげす)んでしまうのです。ライオンズ仙台五橋

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要するに、別の誰かが存在するから、私たちは相対的に自分を彼らと比べて、優劣をつけてしまう。

比べた結果、自分が劣っていたとき、ことさら自らを卑下して悩み、傷つくわけです。

もう一歩踏み込むならば、「人間関係の悩みは、ほとんどが“決めつけ”でしかない」とも言えます。

白か黒かをすぐに分割する「不適応思考」が根底にある

「Aさんと比べて自分は劣っている」

「Bさんがあんな態度をとったのは、きっと自分が嫌いだからに違いない」

そんなふうに他者と比べたり、他者の態度を過剰に意識して落ち込んだりしているのは、あなたが勝手にそう決めつけているからでしかないのです。

精神科医ベックが指摘した、白か黒かをすぐに分割して、勝手に判断して、相手の気持ちまで自ら決めつけてしまう自動思考、つまり「不適応思考」が根底にあるのです。

この不適応思考が、前頭葉バカになるとなおさら進行しがちになるのも、すでにお伝えしたとおりです。ただし、自分の思考に原因があるのだから、あなたが変われば対人関係で悩むことも基本的になくなるのもまた事実。

本稿では、そうした事実を踏まえて、自分を縛る人間関係をどう変えていったらいいのか、人との接し方の「常識」をどう捨てたらいいのかをお伝えしていきましょう。

50歳からは「不真面目」を心がける

前頭葉バカにならずに、ムダに気を病んだりせずに、50代以降の日々を過ごしたいならば、まず「不真面目」になることを強くおすすめします。

ブラック企業といわれる、従業員に対して上司や先輩による長時間労働やパワハラが横行する組織があります。

実は真面目な人ほど、このブラック企業の上司や先輩になる傾向が強いのをご存知でしょうか?

真面目な人は、自分が信じている対象に誠実です。宗教でも、常識でも、企業理念でも、その対象が何であれ、「私が信じているものは絶対だ!」と思ってしまう。

だからこそ、その信じる何かに従わない相手を、「不届き者だ」「異常者だ」と蔑み、拒絶し、修正しようとするのです。「なぜ、その程度の成績なんだ!」と自分が思うより成績が悪い部下を叱責(しっせき)し、重いノルマを負わせるのも真面目ゆえ。手数料率2.70%

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「がんばり方が足りないんだ!」と長時間労働を強いるのも、信心深いためなのです。

1970年代のカンボジアに、まさにこれと似た構造がありました。

当時のカンボジアを支配していたのは共産主義で独裁者だったポル・ポト政権。国の人口の4分の1に当たる170万~180万人もの人を虐殺してしまいます。

虐殺の裏には真面目な国民性があったといわれています。行きすぎた共産主義を崇拝し、社会の浄化を生真面目に成し遂げようとした結果、凄惨(せいさん)な悲劇につながったとも考えられています。

まずは常識を押し付ける「べき」思考を捨てること

ブラック上司は自分をブラックだと思っていなくて、真面目に会社のために尽くし、結果にこだわっている人間だと考えています。自分の信じている働き方、会社のやり方を最高だと思っている。それが「常識」だと思っている。信心深く信仰を貫いているだけなのです。

真面目はもうやめにしましょう。

50歳を超えたならなお、不真面目になるのです。

仕事はこうあるべき、このように仕事すべき。

まずはそんな「べき」思考を捨てるのです。

真面目な人は、なんでもすぐに「べき」を作り、それにそぐわない相手を許せなくなりがちです。

許さないより、緩くいきましょう。

結局、自分は変えられても、他人は変えられないのです。変えられないことに時間や労力を使うほど、ムダなことはありません。

自分の考えにそぐわない人がいたら、「許せない」とキレるのではなく、「そういう人もいるよね」と受け流しましょう。

そもそも、ブラック企業たりえるような会社に属しているならば、信じ込む前に「ちょっとおかしいかもね」「他とは違いすぎるよね」と感じ取り、さっさと離れます。

いくらでも、他の道があります。もとより、いい歳をして、会社組織なんていう小さな枠の中だけで物事を考えるのはバカげていることを自覚しましょう。

つき合う相手はコレで選ぶ

では、どのような相手と人間関係を築けばいいのでしょうか?

今いる会社の上司や同僚、部下や後輩、腐れ縁の友人、近所の顔見知り。いろんなつながりがあると思いますが、ある程度の年齢になったら、「仕事ができる」「つき合いが長いから」といった基準だけでつき合うのはやめるべきでしょう。

最も大切にしたい基準は「その人といて心地良いか否か」です。

ストレスを感じる相手ならば、たとえそれが同僚や同級生でも、場合によっては家族であっても遠ざけたほうがいい。

たとえば40代前半くらいまでなら、とにかく出世したい、世に名前を残したい、そんなモチベーションで何事も突っ走り、人づき合いも、自己実現におけるメリットにつながりそうな相手と嫌々ながらもつながっていたかもしれません。ライオンズ仙台五橋

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でも、50代になったら、もうやめにしていいのです。

人生100年時代になりましたが、時間が有限であることには変わりません。

ただでさえ前頭葉が萎縮して、考え方が頑固になり、「べき」に厳しくなっていきそうなときに、ストレッサー(ストレス要因)の近くに身を置く必要はまったくない。

人生のムダです。

人づき合いも、選択と集中を意識したいもの。

ただの仲良しグループでは真の「心理的安全性」は生まれない

ただし、だからと言って「イエスマン」や「同調できる人間」だけとつき合えという話ではありません。それでは本当に刺激がなくなる。

自分とは違う考えを持つ、発展的なアイデアをくれる、そんな相手とは積極的につき合ったほうが、前頭葉バカも防げ、いつまでも若々しい自分でいられます。

言い方を換えると、自分と考え方や信念が違うし、主張もし合う。けれども、互いの意見を尊重して、議論し合える。そんな発展的な心地良さを持った人間関係を、仕事でもプライベートでも持てるのが最高ではないでしょうか。

最近、「心理的安全性」という言葉が浸透してきました。

企業などの組織で、自分の考えや気持ちを自由に安心して言える状態のことを指します。

そんな心理的安全性があると、組織は活発な意見が飛び交い、優れたアイデアが出やすく、モチベーションも高まるので、成果をあげやすくなります。

まさにそんな関係性を築くことが大事です。

なあなあで、ただの仲良しグループのことを心理的安全性が高いとは言いません。

上に立つ人間の言うことなすことに唯々諾々(いいだくだく)と従わなければならない恐怖政治とも違います。

所属する誰もが自分たちの好きな意見を気持ちよく言い合えて切磋琢磨(せっさたくま)できる。

そんな関係性にこそ、心理的安全性は宿り、真に心地良い場所と言えるのだと思います。

———- 和田 秀樹(わだ・ひでき) 精神科医 1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」 ——-

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