なぜユニクロのコラボは当たる? 「+J」が爆発的ヒット

ファッション業界でしばしば大ヒットを生み出してきたのは、有力デザイナーや人気キャラクターとのコラボレーション企画です。「ユニクロ(UNIQLO)」がファッションデザイナーのジル・サンダー氏と組んだコレクション「+J(プラスジェイ)」も11月13日の発売直後から、公式サイトがつながりにくい状態になるほど大ヒット。こうしたコラボ商品の狙いはどこにあるのでしょうか。過去のヒット例を参考に掘り下げてみました。

「長く着られる、上質な服をしっかり選びたい」ニーズにはまった

「+J」は復活企画です。最初は2009年秋冬シーズンからスタート。かなりのヒット商品に育ち、足かけ3年にわたるロングシリーズとなりました。惜しまれつついったん11年に終了を迎え、今回は約9年ぶりのカムバック。前回シリーズを覚えているファンが少なくないだけに、今回は復活を待ちわびた「+J」好きが発売当初から購入に動いたと思われます。

コロナ禍の下、外出機会が減ったのに伴って、服を買う意欲も鈍る傾向にあるようで、ファッション業界は苦戦が続いています。しかし、服を買いたいという気持ちが冷め切ったわけではなく、むしろ「長く着られる、上質な服をしっかり選びたい」というマインドが強まったところもあります。今回の「+J」のヒットは、こうした新たなニーズの表れとも映ります。

アートや漫画、アニメなどサブカルをLifeWearとして提案

過去にもユニクロはコラボ商品の爆発的ヒットを生み出してきました。たとえば、ニューヨークの現代アーティスト、KAWS(カウズ)とのコラボを実現した、ユニクロのTシャツブランド「UT」の商品は世界的な反響を呼びました。

映画版が歴史的な大入りを続けている漫画・アニメ『鬼滅の刃』とも「UT」でコラボ。売り切れが相次ぎました。漫画『ドラえもん』の誕生50周年を記念したコラボコレクション「ドラえもんUT」は原作やアニメのファンを喜ばせました。こういった漫画・アニメとのコラボは作品を身近に感じる体験を提供したとも言えます。ユニクロは「LifeWear」のメッセージを掲げています。

アーティストや漫画・アニメとのコラボでは「服を通して、文化を広める」「アートや作品と暮らす」という方向性が共感を呼んでいると見えます。海外の美術館では入館料を補助するアート支援の取り組みを続けていて、アートとファンを応援する企業として知られているのも、数々のコラボが実現した背景になっているかもしれません。

ユニクロ素材のよさを引き出すクリエーターの手腕

ユニクロのコラボ商品が相次いでヒットする主な理由として挙げられるのは、「優れたデザイナーと組んでいる」「世の中の関心が高いコラボ相手を選んでいる」「コラボから相乗効果が生まれる」などでしょう。今回の「+J」はこれら3つの要素を兼ね備えた企画と言えます。

コラボ企画は普段とは異なる客層の消費者を呼び込むうえで、効果的な手法です。ジル・サンダー氏が得意とするスタイリッシュさやミニマル感、クールエレガンスなどを好む人たちにも、今回のコラボ企画は魅力的に映ったはずです。

ベーシックなデザインを持ち味とするユニクロの商品に、新たなテイストや表情を添えるという、クリエーション面でのメリットもあるようです。サンダー氏のデザインセンスがあらためてユニクロ素材のよさを引き出したとも言えるでしょう。このような商品開発のプロセスから得られた取り組みはその後のユニクロ商品にも生かされていく可能性があります。

オーディエンス(消費者)の共感を引き出す仕掛け

革新的な素材使いと、「今」の空気を感じさせるデザインで知られるデザイナーのクリストフ・ルメール氏が手がける「Uniqlo U」。伝統的なブリティッシュスタイルとユニクロ流の服づくりが融け合う、ジョナサン・アンダーソン氏がデザインする「UNIQLO and JW ANDERSON」。どちらのコラボラインもユニクロの持ち味を引き立て、ファンを獲得しています。

こうしたクリエーターとのコラボによって、「あったらいいな」と消費者が無意識に期待していた商品を実現しているところが共感を呼ぶ理由でしょう。

機能性やベーシックを重んじる、自前のスタンスでは打ち出しにくいクリエーションやキャラクター性を押し出せる点で、ユニクロにとってコラボ企画は価値の大きい取り組みです。

消費者の潜在的なニーズを、コラボ企画の形ですくい上げ、刺激を受けたオーディエンスを巻き込むようなムーブメントに拡大していけることもコラボプロジェクトの効果として期待できます。

「コラボというブランド」を育てた、長年の積み重ね

これまで重ねてきたコラボの実績は消費者から信頼を得て、今や「ユニクロのコラボ商品」という一種のブランドにもなっているようですらあります。タイミングを見計らって店頭に投入されるコラボ商品は、リアル店舗への集客という点でも魅力的なプロジェクトに成長しました。「+J」のヒットは単に今回限りの出来事ではなく、「コラボをブランドに育てた」というユニクロの取り組みの結果だと感じられます。

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