イオンリテール(千葉市)が手掛けるセルフレジ「レジゴー」が、順調に導入店舗数を伸ばしている。2020年3月に本格展開を開始し、2021年に100店舗、2022年に178店舗、2023年に268店舗、そして2024年6月には300店舗を突破した。 【画像】「イオンのレジゴー」人気の秘密 レジゴーは“レジ待ち”時間をなくし、顧客自らがバーコードでスキャンしながら買い物ができるものだが、「客単価が通常レジと比較して1.3倍高くなる」といった予想外の効果も生まれているという。 なぜ、順調に導入店舗数を伸ばせたのか。また、客単価が上昇した理由とは。導入に向けて工夫した点や導入店舗での利用率、今後の展開なども含めて同社オペレーション改革本部 ITシステム部 チェックアウト改革グループの平野伶奈氏に話を聞いた。
あえて“リアル”店舗での買い物を重視する人に向けて開発
レジゴーはアプリがインストールされた専用端末および自身のスマートフォンを使ってバーコードでスキャンしながら商品を選び、精算機で支払いを済ませるだけで買い物ができるというもの。 オンラインで買い物をする人が増える中、同社は「自分で商品を見たり、触ったりしながら買い物をしたい」「献立は店舗に行ってから考えたい」など、リアル店舗での買い物を重視する人の満足度を上げる方法を模索していた。そこで取り組んだのが、セルフレジやセミセルフレジの導入によりレジの選択肢を広げ、利便性を高めることだ。 「レジゴーについてはコロナ禍で導入した影響もあり、人と接触せずにお会計を済ませたい顧客ニーズに一致したことや、買い物をしながら自身でセルフレジを使う新しい体験が評価を得たと感じています。レジゴーの利用が増えるとレジ全体の待ち時間も削減されるとともに、従業員のレジ打ち負担も軽減され、どちらにも喜ばれています」
防犯対策はどうしている?
セルフレジの導入で気になるのが防犯面だが、どのような対策をしているのだろうか。故意にではなくても、顧客がスキャンを忘れたり、精算が漏れたりといったリスクが考えられる。 同社では防犯上、具体的な施策は公表していないが、システム開発やオペレーションの変更などによりセキュリティを高めることで、導入店舗を増やしていったという。 例えば現在、レジゴー専用の精算レーンにはゲートが付いており、ゲートを通る際にはカゴに入れた商品の点数が専用端末やスマートフォンの画面に表示される。それを従業員が確認し、精算機へ案内している。
課題は従業員の温度差
導入後に見えた課題としては、店舗ごとに利用率の差が出ている点が挙げられる。レジゴーの利用率は全国平均で20%を超えているが、地域別で見ると北関東、東海、中四国が高く、エリアごとにバラツキがあるのだ。 「原因は地域性というよりは、導入時の店舗従業員の取り組み姿勢により格差が発生していると考えています。どうやって従業員の意識を高め、顧客へのアプローチを継続的に実施するかは、現在も課題として取り組んでいます」 例えばレジゴーの利用率が全国で最も高い島根県の「イオン大田店」では、導入時にレジ担当者だけでなく全従業員に使い方を説明し、誰もが顧客にレジゴーをおすすめできるようにしている。導入後は定期的に顧客向けのレジゴー体験会を開催し、また従業員自身も買い物をする際にレジゴーを使用することで、顧客への販促活動につながっているという。 「店長や課長、レジ責任者が主体となって全館を挙げての取り組み体制が利用率向上に直結すると考えています」
予想外の効果「客単価の上昇」はなぜ起きた?
そんな中、予想外の効果として生まれたのが客単価の上昇だ。通常レジに比べて、レジゴーの客単価は1.3倍高くなっている。 レジゴーでの買い物は、アプリがインストールされた専用端末または自身のスマートフォンで顧客自身が商品名と合計金額を把握しながら買い物ができる点が特徴となる。そのため導入前は、顧客が買い過ぎ防止を意識して客単価が下がることを懸念していたという。 ところが実際導入すると、買い忘れの防止や、まとめ買いでもレジ待ちせずに会計できること、家族みんなで楽しみながら買い物できることなどが評価され、結果として同社では客単価の上昇につながったと分析している。
さらなる利用率向上、利便性向上に向けて
導入店舗数の増加や利用率、レジゴーの認知度が上がる中、エリアによっては新規導入の際に「レジゴー自体を知らない」「デジタルの操作に抵抗がある」といった人がまだまだ多いのも事実だという。 「特に機械操作やデジタルツールに苦手意識を持たれている方、レジゴーのメリットを認識されていない方は、まだ利用していない状況にあります。一方でレジゴーは小さなお子さまから年配の方まで幅広い年齢層が利用しており、一度利用してメリットを体感してもらえれば、年代関係なくリピート率も高くなっています」 同社ではよりスムーズな買い物体験を実現するため、直近では9月以降にイオングループのトータルアプリ「iAEON」と連携し、同アプリ内でレジゴーが利用できるように開発を進めている。
クーポンの自動連携も検討
今後は「iAEON」「イオンお買物アプリ」「イオンウォレット」など、複数のアプリで配布しているクーポンが自動でレジゴーの買い物内容に連動できる仕組みやレジゴーアプリ内で「AEON Pay」を使ったワンアクションでの決済を可能にするなど、さらなる利便性向上に向けた機能改善も検討している。 2024年度については、導入店舗数のさらなる増加およびレジゴーの利用率30%を目標に掲げている。 利用率については、貸し出し専用端末および顧客の個人端末の利用を合わせて全国平均20%を超える一方、個人端末での利用は2%ほどにとどまる。専用端末では今後実装を予定する各種アプリとの自動連携ができず、同社の目指すシームレスな買物体験につながらないことから、今の段階から個人端末での利用率も上げていきたい考えだ。 iAEON内でのレジゴー利用やクーポンの自動適用など、新たな買い物体験の実現により利用率や顧客単価の上昇にどのような効果が出るのか。今後の展開が気になるところだ。 (熊谷ショーコ)