インフルエンザの患者が突然、走り出してマンションから転落したり暴れたりする異常行動が8年間に400件余り起きていたことが厚生労働省の調査でわかりました。厚生労働省は、患者を極力1人にせず、高層階に住んでいる場合は窓や玄関を施錠するなどの注意点をまとめ、全国の自治体に通知しました。
厚生労働省によりますと、インフルエンザの患者が突然、走り出したり暴れたりする異常行動は、昨シーズン54件報告され、平成21年以降のおよそ8年間では少なくとも404件に上っています。中でも未成年の異常行動が目立ち、317件と全体の78%を占めています。
また死亡した人は、ことし2月に東京・品川区で治療薬を服用後にマンションの4階から転落した男子中学生など、8年間で合わせて8人に上っています。
厚生労働省は、インフルエンザが流行期に入るのを前に、患者の事故を防ぐための注意点をまとめ、27日、全国の自治体に通知しました。この中では、インフルエンザと診断されてから少なくとも2日間は極力1人にしないよう注意するほか、マンションやアパートの場合は窓や玄関を施錠し、ベランダに面していない部屋で寝かせるよう呼びかけています。また、戸建て住宅の場合、できるだけ1階の部屋で療養してほしいと呼びかけています。
厚生労働省によりますと、インフルエンザの患者が「タミフル」や「リレンザ」などの治療薬を服用したあとに異常行動を起こすケースが相次いで報告されていますが、薬との因果関係はわかっておらず、服用していなくても異常行動が起きたケースもあるということです。このため厚生労働省は、薬の服用のあるなしにかかわらず注意が必要だとしています。
息子を亡くした母親は
母親の竜子さんによりますと、皓平さんは高熱が出てインフルエンザと診断され、病院から帰ってきたあと、抗ウイルス薬の「タミフル」を服用し1人で自分の部屋で休んでいました。
母親の竜子さんは別の部屋にいて、玄関のドアが開く音がしたため皓平さんの部屋を見に行きましたが姿はなく、外に出て初めて転落したことに気づいたということです。
皓平さんは、はだしで玄関を出て行き、10メートルほど通路を進んだあとに、高さ1メートル20センチの手すりを乗り越えて転落したと見られています。
皓平さんは中学校で野球部に所属し、明るい性格で友達も多く、母親の竜子さんは自分の意思で飛び降りたとは絶対に考えられないとしています。
竜子さんは当時、インフルエンザの患者が異常行動を起こすことがあることを全く知りませんでした。竜子さんは「異常行動のことを知っていればひとりぼっちにさせなかったと思います。息子の大切な命が犠牲になったのにもかかわらず、毎年、同じような被害が出ていることはとてもつらい」と話しています。
専門家「誰にでも起きうる」
ワクチン行き届くまで時間かかる見通し
厚生労働省によりますと、ワクチンの製造量は当初、昨シーズンの使用量を100万本余り下回るおそれがありましたが、その後、各メーカーが製造量を増やし、昨シーズンとほぼ同じ量を供給できる見通しがたったということです。
ただ、一部の地域では、希望者にワクチンが行き届くまでに時間がかかるおそれもあり、厚生労働省は多くの人が早めにワクチンを接種できるよう、13歳以上の人は原則、1回だけの接種にしてほしいと呼びかけています。