コロナ「空気感染が主因」説が波紋 「換気」「不織布マスク」研究者ら強調

新型コロナウイルスの感染は、「空気感染が主因」という研究者たちの緊急声明が波紋を広げている。

これまでコロナは飛沫感染や接触感染が主因とされ、政府の対策も「飛沫」「接触」防止を念頭に、「三密を避ける」「手を洗う」などが軸となっていた。しかし、緊急声明を出した研究者らは、むしろ「換気」「不織布マスク着用」を重視すべきだと訴えている。

「エアロゾル」吸い込むことで感染

声明を出したのは国内の大学教員や医師、研究者ら38人(代表者は本堂毅東北大大学院理学研究科准教授)。河北新報によると、2021年8月27日にオンラインで記者会見し、新型コロナウイルスは、最新の知見では空気感染が主因と考えられるとして、ウイルスの吸入・排出を抑える不織布マスク着用の制度化や、ウイルス粒子濃度を下げる空気清浄機などの活用を提案。「コロナ対策は種々の専門領域にまたがるが、十分には政策決定に生かされていない」と、医学偏重の対策からの転換を訴えたという。

朝日新聞はこの会見について、「『コロナは空気感染が主たる経路』 研究者らが対策提言」という見出しで報じている。

同紙によると、空気感染は、ウイルスを含む微細な粒子「エアロゾル」を吸い込むことで感染することを指すという。エアロゾルの大きさは5マイクロメートル(0.005ミリ)以下とされ、長い時間、空気中をただよう、と説明している。

同じ閉鎖空間にいた場合、距離が離れていても感染リスクがあることから、研究者らは、国や自治体に対して、ウレタン製や布製のものよりも隙間のない不織布マスクなどの着用徹底の周知▽換気装置や空気清浄機などを正しく活用するための情報の周知▽感染対策の効果を中立な組織によって検証することなどを求め、声明を、内閣官房、厚生労働省や文部科学省に送付したという。

WHOやCDCも明記

厚労省のウェブサイトには、「新型コロナウイルス感染症にはどのように感染しますか」という質問が出ている。「一般的には飛沫感染、接触感染で感染します。閉鎖した空間で、近距離で多くの人と会話するなどの環境では、咳やくしゃみなどの症状がなくても感染を拡大させるリスクがあるとされています」と回答。「近距離」が強調されている。「空気感染」については具体的には論及されていない。

朝日新聞によると、世界保健機関(WHO)や米疾病対策センター(CDC)はそれぞれ、ウイルスを含んだエアロゾルの吸入についても、感染経路だと明記しているという。

このため、研究者たちが緊急声明で「空気感染が主因」と主張したニュースがヤフーに掲載されると、短時間で5000以上のコメントがついた。

「政府として空気感染の可能性を国民に知らしめるべき」「これまで感染経路は飛沫と接触によると言われ、ソーシャルディスタンスなど求めてきたが、空気感染が原因ということになれば、これまでの考えを根本的に改めなければならない」「満員電車は、どうなるのでしょう。学校は?」など、我が意を得たりという意見が多かった。

粒子捕集性や通気性に優れる

特に声明が、「不織布マスク着用の制度化」を強調していることに対しては、「三密ばかり周知され、換気や不織布マスクまでは、まだまだ浸透されてないです」「ウレタンや布マスクは、前から気になっていました。不織布マスクにすることは、自分のためだけでなく、人様のためでもあることをわかってほしいです」など、強い賛同の声があった。

日本衛生材料工業連合会によると、「不織布」とは文字通り「織っていない布」のこと。繊維あるいは糸などを織ったりせず、熱的、機械的、化学的作用により繊維を接着またはからみ合わせた薄いシート状の布にしている。粒子捕集性や通気性に優れることからマスクのフィルタ部や、紙おむつや生理用品などに幅広く使われている。

マスクの素材は様々だが、各種の実験でコロナウイルスには不織布の効果が高く、ウレタン単体のマスクはほとんど役に立たないとされている。

ところが、8月末に群馬県片品村のキャンプ場で開催された音楽イベントでは、主催者が、「不織布マスクNG」といったルールを「ドレスコード」として設けていたことが発覚、インターネットで批判の声が噴出した。日刊スポーツによると、主催者は公式サイトで、「マスクも昨今はファッションの一部」「会場は野外であるため、換気が良く、イベントは長時間のため、この度のイベントに於いては不織布マスクではない方がいいと言うことに当てはまります」などと書いていた。

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