新型コロナウイルス感染者の「全数把握簡略化」が26日から全国一律で行われる。2日に先行運用を始めた宮城県では、医療関係者などが「業務が軽減された」と評価する半面、今冬予想される感染「第8波」やインフルエンザとの同時流行には「今の体制では対応できない」と警戒する声もある。(報道部・相沢みづき、武田俊郎)
「全数」に比べ8割減
「発生届の書き込み(入力)が大幅に減った」。あんどうクリニック(仙台市若林区)の安藤健二郎院長は簡略化の効果をこう説明する。第7波下の7月は連日深夜まで入力作業に追われた。
簡略化に先立ち、県は8月、仙台市と共に医療機関を経由せずに検査キットを配送して陽性者を登録する窓口を開設。「簡略化との相乗効果で発熱外来の混雑が緩和されている」(安藤院長)という。
仙台市を除く宮城県内では、簡略化後の3~20日、計1万840人の新規感染が発表された。うち医療機関から保健所に発生届が提出されたのは2163人分で、「全数把握」に比べ8割減った形だ。
仙台市も同期間の新規感染1万1243人のうち、発生届提出は2049人(18・2%)と同様の傾向を示す。市保健所の白岩靖文参事は「現場の負担軽減は顕著だ」と話す。
リスクが低い人を対象に県と市が2日に開設し、市保健所などが応対を担う電話窓口には19日までに9489件の相談があった。このうち体調悪化で詳細な聞き取りが必要なケースは1230件(13・0%)にとどまり、当初懸念された負担増にはつながらなかった。
第8波、インフルに懸念も
簡略化はこれまでのところ順調と言えるが、今冬は第8波に加え、インフルエンザとの同時流行の可能性も指摘される。医療体制のさらなる見直しを求める声が出ている。
第7波下で県内の1日当たり新規感染のピークは4784人(8月20日)で、第6波ピーク(2月9日、934人)の約5倍だった。
このため、医療現場などには「第8波の新規感染も第7波を数倍上回る」との見方がある。白岩参事は「仮に第7波の3倍程度の陽性者が出たら、簡略化による負担軽減分では吸収し切れない」と言い切る。
安藤院長も「思い切った対策をあらかじめ立てないと医療機能は再びまひする」と懸念。「医療機関の自発的努力には限界があ